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第11話
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俺の名は、ラインズ・ベルグラント。
勇者パーティーの重戦士を担う冒険者である。
俺の家系は代々、帝国騎士を輩出している名家なのだが、俺はその家から飛び出し冒険者を始めたのである。
あそこにいても俺は日の目を見れずに朽ちていたであろう。
末っ子だからと色眼鏡で見る人間も俺の実力を認めようとしない兄弟たちもすぐに俺を見限った父も全員が嫌いだった。
だから俺は勇者パーティーに選別されたとき内心飛び跳ねるほど嬉しかった。
魔王を討伐できればヤツらは泣いて自慢するだろう。
『私たちの家族が!』
『私が仕えていた子供が!』
国を救った英雄になったと・・。
自分たちが否定した人間が、自分たちよりも上の存在に行く・・想像しただけで笑みが溢れた。俺の今までの鬱憤が晴らされる、そう思っていたのだがーー。
現実はどうだ?俺よりも優れた人材がいて、俺はただの体勢を整えるための時間稼ぎ要員でしかなかった。
きっと魔王を討伐したときに民衆からこう言われるのだ、
『勇者と傀儡師が世界を救ってくれた』
と、俺はその一行にいただけの有象無象と変わらないだろう。
勇者の次に注目されるのは俺のはずなんだ!
だからこそノウト・サルヴァンスが邪魔だった・・。
だからこそ、悪魔の囁きに抗えなかった・・。
ーーーーー
朝日がカーテンの隙間から差し込み、その日差しで俺は覚醒する。
昨晩のことが頭を過ったためなのか、目覚めの悪い朝である。
カーテンを無理矢理開き、朝日を身体に取り込むようにして起き上がる。
しばらくして、身支度を行い護身用の担当を取り部屋を出る。
宿の食事スペースを利用しようと、木製造りの階段を降りる。
パーティーの決まりで、食事は全員で行うこと日課になっているためである。まあ、このルールを作った本人はもういないが・・。
階段を降り終わると俺は手で顔を覆いたくなってしまう。
「これはどういう状況だ?」
俺は呆れて先にいた勇者、レイラに訊ねる。
「リナンとの約束がまだだったからねメンバーが一人欠けたんだ。どうせなら、補充も兼ねてリナンの男も見つけようかと・・。」
レイラはくつろぎながら珈琲に口をつける。
そのレイラの横にいる聖職者のリナンの周りを取り囲むように多くの男性冒険者が集まっていた。
「ふふふ、どなたにするか迷いますわ」
リナンは落ち着いた声で、男性たちの身体をまぐわしていた。
ラインズは、リナンに気に入られたい一心で、醜いアピールを繰り広げる男たちから視線外しレイラを叱責する。
「レイラ、いくらなんでもこれはダメだろう。お前とリナンの約束ごとかもしれないが、勇者パーティーは選び抜かれた精鋭揃いだ、一般冒険者じゃ追てくるのも容易じゃないんだぞ!」
「そんなに鼻息荒く来ないでよ。優雅な朝が台無しじゃない・・。」
やれやれと肩をすくめるレイラ。
「レイラ!こんなことが国中に知れてみろ、俺らを支援している帝国がッ!?」
レイラが俺口に人差し指を押し当てる。
俺は、レイラの分厚い氷のような底の見えない作り笑いに押し黙ってしまう。
「私一人でも倒せる魔王に用心したって無駄なだけよ・・。四天王も大したことなかったし・・」
レイラは、人差し指をズラし俺の胸の部分を指してそう言う。
「うん、決めたわ!私貴方にするわ♡」
俺
たちの会話を遮るように大声を上げたのはリナンである。
リナンはプリーストとは思えない鼻息荒く男の腕に抱きつく。
「あ、ありがとうございます!」
リナンに選ばれた男は、嬉しそうに目を輝かして返事をする。
身軽そうな革製の防具と短剣、腰に巻き付けた数個の麻袋。風貌からして、斥候や盗賊の類だろう。
レイラは喜ぶリナンに拍手を送り祝福する。
「決まって良かったじゃないかリナン。せっかく集まって貰って悪いが、メンバーも決まったしお開きとさせていただこうかな」
不満を洩らす男たちを宥めながらレイラは彼らを外に出す。
リナンはそんなことに目も暮れず、その男に夢中であった。
「貴方盗賊でしょう?一目でわかっちゃったわ♡だって私の心をすぐに盗んでしまったもの・・」
甘ったるい声音で男を誘惑するリナン。その姿に嫌気がさし俺は舌打ちをし、朝食も取らずに寝室の部屋に戻る。
結局、ミールナの奴は朝食の場に顔を出さなかった・・。
いつからこんなバラバラなパーティーになってしまったのか、いや考える必要もないか・・。
後になってつくづく自分がとった行動の誤ちに気づく。
「・・・クソッ・・。」
俺はベッドに大の字に寝そべり悪態を吐くのであった。
勇者パーティーの重戦士を担う冒険者である。
俺の家系は代々、帝国騎士を輩出している名家なのだが、俺はその家から飛び出し冒険者を始めたのである。
あそこにいても俺は日の目を見れずに朽ちていたであろう。
末っ子だからと色眼鏡で見る人間も俺の実力を認めようとしない兄弟たちもすぐに俺を見限った父も全員が嫌いだった。
だから俺は勇者パーティーに選別されたとき内心飛び跳ねるほど嬉しかった。
魔王を討伐できればヤツらは泣いて自慢するだろう。
『私たちの家族が!』
『私が仕えていた子供が!』
国を救った英雄になったと・・。
自分たちが否定した人間が、自分たちよりも上の存在に行く・・想像しただけで笑みが溢れた。俺の今までの鬱憤が晴らされる、そう思っていたのだがーー。
現実はどうだ?俺よりも優れた人材がいて、俺はただの体勢を整えるための時間稼ぎ要員でしかなかった。
きっと魔王を討伐したときに民衆からこう言われるのだ、
『勇者と傀儡師が世界を救ってくれた』
と、俺はその一行にいただけの有象無象と変わらないだろう。
勇者の次に注目されるのは俺のはずなんだ!
だからこそノウト・サルヴァンスが邪魔だった・・。
だからこそ、悪魔の囁きに抗えなかった・・。
ーーーーー
朝日がカーテンの隙間から差し込み、その日差しで俺は覚醒する。
昨晩のことが頭を過ったためなのか、目覚めの悪い朝である。
カーテンを無理矢理開き、朝日を身体に取り込むようにして起き上がる。
しばらくして、身支度を行い護身用の担当を取り部屋を出る。
宿の食事スペースを利用しようと、木製造りの階段を降りる。
パーティーの決まりで、食事は全員で行うこと日課になっているためである。まあ、このルールを作った本人はもういないが・・。
階段を降り終わると俺は手で顔を覆いたくなってしまう。
「これはどういう状況だ?」
俺は呆れて先にいた勇者、レイラに訊ねる。
「リナンとの約束がまだだったからねメンバーが一人欠けたんだ。どうせなら、補充も兼ねてリナンの男も見つけようかと・・。」
レイラはくつろぎながら珈琲に口をつける。
そのレイラの横にいる聖職者のリナンの周りを取り囲むように多くの男性冒険者が集まっていた。
「ふふふ、どなたにするか迷いますわ」
リナンは落ち着いた声で、男性たちの身体をまぐわしていた。
ラインズは、リナンに気に入られたい一心で、醜いアピールを繰り広げる男たちから視線外しレイラを叱責する。
「レイラ、いくらなんでもこれはダメだろう。お前とリナンの約束ごとかもしれないが、勇者パーティーは選び抜かれた精鋭揃いだ、一般冒険者じゃ追てくるのも容易じゃないんだぞ!」
「そんなに鼻息荒く来ないでよ。優雅な朝が台無しじゃない・・。」
やれやれと肩をすくめるレイラ。
「レイラ!こんなことが国中に知れてみろ、俺らを支援している帝国がッ!?」
レイラが俺口に人差し指を押し当てる。
俺は、レイラの分厚い氷のような底の見えない作り笑いに押し黙ってしまう。
「私一人でも倒せる魔王に用心したって無駄なだけよ・・。四天王も大したことなかったし・・」
レイラは、人差し指をズラし俺の胸の部分を指してそう言う。
「うん、決めたわ!私貴方にするわ♡」
俺
たちの会話を遮るように大声を上げたのはリナンである。
リナンはプリーストとは思えない鼻息荒く男の腕に抱きつく。
「あ、ありがとうございます!」
リナンに選ばれた男は、嬉しそうに目を輝かして返事をする。
身軽そうな革製の防具と短剣、腰に巻き付けた数個の麻袋。風貌からして、斥候や盗賊の類だろう。
レイラは喜ぶリナンに拍手を送り祝福する。
「決まって良かったじゃないかリナン。せっかく集まって貰って悪いが、メンバーも決まったしお開きとさせていただこうかな」
不満を洩らす男たちを宥めながらレイラは彼らを外に出す。
リナンはそんなことに目も暮れず、その男に夢中であった。
「貴方盗賊でしょう?一目でわかっちゃったわ♡だって私の心をすぐに盗んでしまったもの・・」
甘ったるい声音で男を誘惑するリナン。その姿に嫌気がさし俺は舌打ちをし、朝食も取らずに寝室の部屋に戻る。
結局、ミールナの奴は朝食の場に顔を出さなかった・・。
いつからこんなバラバラなパーティーになってしまったのか、いや考える必要もないか・・。
後になってつくづく自分がとった行動の誤ちに気づく。
「・・・クソッ・・。」
俺はベッドに大の字に寝そべり悪態を吐くのであった。
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