主人を殺された傀儡は地の女王と復讐の旅に出る

タカヒラ 桜楽

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第12話

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宴の席から一夜明けて、ゼンとセンサザールテーグ村の人々から見送りを受けていたのだが・・。

「セーサちゃんとゼン君本当に行っちゃうの?」

「もうちょっとこの村で遊んでよっ!」

センサザールたちを引き止めよう村の子供のハミーとライナがセンサザールの服を離そうとせず、なかなかこの村から離れられずにいた。
この二人は人一倍懐っこく、朝からずっとセンサザールにひっついているのである。

「ハミー、ライナそんなことグズっていたら二人が気持ちよくこの村を出発できないだろ?」

ハミーとライナのわがままにベイクが優しく宥める。

「だって、だって~セーサちゃんとゼン君がいなくなるのはざびじぃぃ~!」

「今日だけ、今日までここに居てもいいじゃん!?」

ハミーとライナがより一層泣き喚く。
ゼンも若干だが、二人に申し訳なさそうな顔をしていた。
ゴオズを倒した時の原動力もこの二人と、村の温かさを知ったからなのか、センサザールは初めて戸惑ったゼンを見たのである。
センサザールはその様子を見てため息を洩らし、ゼンのどうしようもなさに呆れる。

「二人ともよく聞いて。私たちがいなくなっても、思い出は無くなったりしないでしょ?私たちはあなたたちの思いの中にずっといるの。だから目には見えなくても心の中に私たちはずっといるの・・。だから、そんなに悲しまないでちょうだい。」

センサザールは少女たちと目線を合わせるため、膝をつき微笑みながらそう言う。

「意味わかんない、そんなのただの綺麗事だよ~!」

「良いこと言おうとしてるのが見え見えで心にこないよ~!うわーん!」

「なっ!?」

センサザールの言葉を跳ね返し喚くハミーとライナ。
的を射られたのか、センサザールは赤面したじろぐ。
その周りの大人たちも少女たちに何と言っていいのかわからず、いよいよ収拾がつかなくなったその時であった。

「俺の目的が終わったらまたここに戻ってくる。ハミーとライナには、いろいろと世話になったからな、また会いに来るから、それじゃダメか?」

ゼンがセンサザール同様目線を合わせるように屈みそう宥める。
その言葉を聞いてハミーとライナの顔をが笑顔に戻る。
少女二人は笑顔のままゼンに抱きつく。

「うん、それでいい!絶対にまたこの村に帰ってきてね!」

「うんうん!楽しみに待っているね!」

センサザールは、コロコロと表情が変わる子供を見て微笑ましく思うが、ゼンに子供たちの人気を取られたように感じ頬を膨らませ苛立ちを露わにする。

結局、ゼンの言葉で丸く収まりテーグ村の人々に笑顔で見送られ、テーグ村を旅立ったのである。


ーーーーー

「納得いかないわ、まさか私の言葉が貴方の言葉に負けるなんて・・。」

村を旅立った数分後にセンサザールは不満を洩らす。ゼンに向かって口を尖らせてそう言うセンサザールに目もくれず歩みを進めるゼン。

「どこかで聞いたことのあるようなありきたりな言葉だったからじゃないか?それに相手は子供だ、シンプルな言葉で伝えた方が良いんだよ」

と、ゼンが冷静に振り返る。 センサザールは不貞腐れながら

「ご丁寧に説明してくれて嬉しいわ」

と、嫌味混じりにそう言うとゼンの横に小走りで近づき背中を叩く。

「でも、あんた本当にあの村にまた戻ってくるの?ただのその場凌ぎの言葉じゃないでしょうね?」

センサザールは訝しげな眼差しでゼンを見据える。

「本心だよ。たった一日の付き合いだが、別れるのは辛いみたいだ」

ゼンはそう言い、そっと胸を抑える。

「フフッ、貴方も少しは人間味が出てきたようね。喋り方とかも様になっているし、良いんじゃないの?」

「そうか?」

センサザールの言葉にイマイチピンとこないゼンは眉をひそめる。

「まあ、さっさと勇者たちと会ってボコボコにしてやりましょう!」

センサザールは空中で拳を打つフリをしながらそう言う。

「仲間みたいな言い方をするな。あくまでアイツらをどうするかを決めるのは俺だ。お前とは利害関係が一致しているから連れてきているだけだ」

素っ気なく答えるゼンにセンサザールは唖然としてしまう。

「利害関係って・・、貴方が一方的に私を連れて来たんじゃない!」

センサザールはゼンの言葉に憤慨する。
だが当の本人は飄々とその言葉を受け流し、

「俺はお前に常識を教えて貰っていて、お前は勇者メンバーの監視ができて、魔王からも遠ざけることが出来る。あわよくば、勇者ともども皆殺しにできるかもな・・。」

本人に感情がないからなのか、抑揚のない淡々とした声で言うゼンの言葉にセンサザールは内心ギクリとする。
無表情で何を考えているかよくわからないこの傀儡は存外頭が回るらしい。
センサザールがゴオズ戦で抱いた感情はいち早くこの男ゼンを始末しなければいけないということであった。

隠しても無駄だと感じたセンサザールはため息混じりにもう一発ゼンの背中を叩く。

「じゃあ、貴方が死ぬのをこの目で見るまで一緒にいてやるわよ・・。」

センサザールの一言にゼンは、「好きにしろ」と、無愛想に答えるのであった。
その様子を見て、センサザールはジト目をゼンに向ける。

「あとね、私のことはセンサザールってちゃんと名前で呼んでくれる?お前って見下されてるみたいで嫌なの」

「善処する・・。」

「素直でよろしい」

ゼンの言葉にご機嫌になったセンサザールの歩みは軽やかになっていた。

「ほら早く行くわよゼン!」

「名前で呼ぶな・・。」

恥ずかしくなったのか、ゼンはローブについたフードを深く被り目的地を急ぐのであった・・。


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