12 / 43
第12話
しおりを挟む
宴の席から一夜明けて、ゼンとセンサザールテーグ村の人々から見送りを受けていたのだが・・。
「セーサちゃんとゼン君本当に行っちゃうの?」
「もうちょっとこの村で遊んでよっ!」
センサザールたちを引き止めよう村の子供のハミーとライナがセンサザールの服を離そうとせず、なかなかこの村から離れられずにいた。
この二人は人一倍懐っこく、朝からずっとセンサザールにひっついているのである。
「ハミー、ライナそんなことグズっていたら二人が気持ちよくこの村を出発できないだろ?」
ハミーとライナのわがままにベイクが優しく宥める。
「だって、だって~セーサちゃんとゼン君がいなくなるのはざびじぃぃ~!」
「今日だけ、今日までここに居てもいいじゃん!?」
ハミーとライナがより一層泣き喚く。
ゼンも若干だが、二人に申し訳なさそうな顔をしていた。
ゴオズを倒した時の原動力もこの二人と、村の温かさを知ったからなのか、センサザールは初めて戸惑ったゼンを見たのである。
センサザールはその様子を見てため息を洩らし、ゼンのどうしようもなさに呆れる。
「二人ともよく聞いて。私たちがいなくなっても、思い出は無くなったりしないでしょ?私たちはあなたたちの思いの中にずっといるの。だから目には見えなくても心の中に私たちはずっといるの・・。だから、そんなに悲しまないでちょうだい。」
センサザールは少女たちと目線を合わせるため、膝をつき微笑みながらそう言う。
「意味わかんない、そんなのただの綺麗事だよ~!」
「良いこと言おうとしてるのが見え見えで心にこないよ~!うわーん!」
「なっ!?」
センサザールの言葉を跳ね返し喚くハミーとライナ。
的を射られたのか、センサザールは赤面したじろぐ。
その周りの大人たちも少女たちに何と言っていいのかわからず、いよいよ収拾がつかなくなったその時であった。
「俺の目的が終わったらまたここに戻ってくる。ハミーとライナには、いろいろと世話になったからな、また会いに来るから、それじゃダメか?」
ゼンがセンサザール同様目線を合わせるように屈みそう宥める。
その言葉を聞いてハミーとライナの顔をが笑顔に戻る。
少女二人は笑顔のままゼンに抱きつく。
「うん、それでいい!絶対にまたこの村に帰ってきてね!」
「うんうん!楽しみに待っているね!」
センサザールは、コロコロと表情が変わる子供を見て微笑ましく思うが、ゼンに子供たちの人気を取られたように感じ頬を膨らませ苛立ちを露わにする。
結局、ゼンの言葉で丸く収まりテーグ村の人々に笑顔で見送られ、テーグ村を旅立ったのである。
ーーーーー
「納得いかないわ、まさか私の言葉が貴方の言葉に負けるなんて・・。」
村を旅立った数分後にセンサザールは不満を洩らす。ゼンに向かって口を尖らせてそう言うセンサザールに目もくれず歩みを進めるゼン。
「どこかで聞いたことのあるようなありきたりな言葉だったからじゃないか?それに相手は子供だ、シンプルな言葉で伝えた方が良いんだよ」
と、ゼンが冷静に振り返る。 センサザールは不貞腐れながら
「ご丁寧に説明してくれて嬉しいわ」
と、嫌味混じりにそう言うとゼンの横に小走りで近づき背中を叩く。
「でも、あんた本当にあの村にまた戻ってくるの?ただのその場凌ぎの言葉じゃないでしょうね?」
センサザールは訝しげな眼差しでゼンを見据える。
「本心だよ。たった一日の付き合いだが、別れるのは辛いみたいだ」
ゼンはそう言い、そっと胸を抑える。
「フフッ、貴方も少しは人間味が出てきたようね。喋り方とかも様になっているし、良いんじゃないの?」
「そうか?」
センサザールの言葉にイマイチピンとこないゼンは眉をひそめる。
「まあ、さっさと勇者たちと会ってボコボコにしてやりましょう!」
センサザールは空中で拳を打つフリをしながらそう言う。
「仲間みたいな言い方をするな。あくまでアイツらをどうするかを決めるのは俺だ。お前とは利害関係が一致しているから連れてきているだけだ」
素っ気なく答えるゼンにセンサザールは唖然としてしまう。
「利害関係って・・、貴方が一方的に私を連れて来たんじゃない!」
センサザールはゼンの言葉に憤慨する。
だが当の本人は飄々とその言葉を受け流し、
「俺はお前に常識を教えて貰っていて、お前は勇者メンバーの監視ができて、魔王からも遠ざけることが出来る。あわよくば、勇者ともども皆殺しにできるかもな・・。」
本人に感情がないからなのか、抑揚のない淡々とした声で言うゼンの言葉にセンサザールは内心ギクリとする。
無表情で何を考えているかよくわからないこの傀儡は存外頭が回るらしい。
センサザールがゴオズ戦で抱いた感情はいち早くこの男を始末しなければいけないということであった。
隠しても無駄だと感じたセンサザールはため息混じりにもう一発ゼンの背中を叩く。
「じゃあ、貴方が死ぬのをこの目で見るまで一緒にいてやるわよ・・。」
センサザールの一言にゼンは、「好きにしろ」と、無愛想に答えるのであった。
その様子を見て、センサザールはジト目をゼンに向ける。
「あとね、私のことはセンサザールってちゃんと名前で呼んでくれる?お前って見下されてるみたいで嫌なの」
「善処する・・。」
「素直でよろしい」
ゼンの言葉にご機嫌になったセンサザールの歩みは軽やかになっていた。
「ほら早く行くわよゼン!」
「名前で呼ぶな・・。」
恥ずかしくなったのか、ゼンはローブについたフードを深く被り目的地を急ぐのであった・・。
「セーサちゃんとゼン君本当に行っちゃうの?」
「もうちょっとこの村で遊んでよっ!」
センサザールたちを引き止めよう村の子供のハミーとライナがセンサザールの服を離そうとせず、なかなかこの村から離れられずにいた。
この二人は人一倍懐っこく、朝からずっとセンサザールにひっついているのである。
「ハミー、ライナそんなことグズっていたら二人が気持ちよくこの村を出発できないだろ?」
ハミーとライナのわがままにベイクが優しく宥める。
「だって、だって~セーサちゃんとゼン君がいなくなるのはざびじぃぃ~!」
「今日だけ、今日までここに居てもいいじゃん!?」
ハミーとライナがより一層泣き喚く。
ゼンも若干だが、二人に申し訳なさそうな顔をしていた。
ゴオズを倒した時の原動力もこの二人と、村の温かさを知ったからなのか、センサザールは初めて戸惑ったゼンを見たのである。
センサザールはその様子を見てため息を洩らし、ゼンのどうしようもなさに呆れる。
「二人ともよく聞いて。私たちがいなくなっても、思い出は無くなったりしないでしょ?私たちはあなたたちの思いの中にずっといるの。だから目には見えなくても心の中に私たちはずっといるの・・。だから、そんなに悲しまないでちょうだい。」
センサザールは少女たちと目線を合わせるため、膝をつき微笑みながらそう言う。
「意味わかんない、そんなのただの綺麗事だよ~!」
「良いこと言おうとしてるのが見え見えで心にこないよ~!うわーん!」
「なっ!?」
センサザールの言葉を跳ね返し喚くハミーとライナ。
的を射られたのか、センサザールは赤面したじろぐ。
その周りの大人たちも少女たちに何と言っていいのかわからず、いよいよ収拾がつかなくなったその時であった。
「俺の目的が終わったらまたここに戻ってくる。ハミーとライナには、いろいろと世話になったからな、また会いに来るから、それじゃダメか?」
ゼンがセンサザール同様目線を合わせるように屈みそう宥める。
その言葉を聞いてハミーとライナの顔をが笑顔に戻る。
少女二人は笑顔のままゼンに抱きつく。
「うん、それでいい!絶対にまたこの村に帰ってきてね!」
「うんうん!楽しみに待っているね!」
センサザールは、コロコロと表情が変わる子供を見て微笑ましく思うが、ゼンに子供たちの人気を取られたように感じ頬を膨らませ苛立ちを露わにする。
結局、ゼンの言葉で丸く収まりテーグ村の人々に笑顔で見送られ、テーグ村を旅立ったのである。
ーーーーー
「納得いかないわ、まさか私の言葉が貴方の言葉に負けるなんて・・。」
村を旅立った数分後にセンサザールは不満を洩らす。ゼンに向かって口を尖らせてそう言うセンサザールに目もくれず歩みを進めるゼン。
「どこかで聞いたことのあるようなありきたりな言葉だったからじゃないか?それに相手は子供だ、シンプルな言葉で伝えた方が良いんだよ」
と、ゼンが冷静に振り返る。 センサザールは不貞腐れながら
「ご丁寧に説明してくれて嬉しいわ」
と、嫌味混じりにそう言うとゼンの横に小走りで近づき背中を叩く。
「でも、あんた本当にあの村にまた戻ってくるの?ただのその場凌ぎの言葉じゃないでしょうね?」
センサザールは訝しげな眼差しでゼンを見据える。
「本心だよ。たった一日の付き合いだが、別れるのは辛いみたいだ」
ゼンはそう言い、そっと胸を抑える。
「フフッ、貴方も少しは人間味が出てきたようね。喋り方とかも様になっているし、良いんじゃないの?」
「そうか?」
センサザールの言葉にイマイチピンとこないゼンは眉をひそめる。
「まあ、さっさと勇者たちと会ってボコボコにしてやりましょう!」
センサザールは空中で拳を打つフリをしながらそう言う。
「仲間みたいな言い方をするな。あくまでアイツらをどうするかを決めるのは俺だ。お前とは利害関係が一致しているから連れてきているだけだ」
素っ気なく答えるゼンにセンサザールは唖然としてしまう。
「利害関係って・・、貴方が一方的に私を連れて来たんじゃない!」
センサザールはゼンの言葉に憤慨する。
だが当の本人は飄々とその言葉を受け流し、
「俺はお前に常識を教えて貰っていて、お前は勇者メンバーの監視ができて、魔王からも遠ざけることが出来る。あわよくば、勇者ともども皆殺しにできるかもな・・。」
本人に感情がないからなのか、抑揚のない淡々とした声で言うゼンの言葉にセンサザールは内心ギクリとする。
無表情で何を考えているかよくわからないこの傀儡は存外頭が回るらしい。
センサザールがゴオズ戦で抱いた感情はいち早くこの男を始末しなければいけないということであった。
隠しても無駄だと感じたセンサザールはため息混じりにもう一発ゼンの背中を叩く。
「じゃあ、貴方が死ぬのをこの目で見るまで一緒にいてやるわよ・・。」
センサザールの一言にゼンは、「好きにしろ」と、無愛想に答えるのであった。
その様子を見て、センサザールはジト目をゼンに向ける。
「あとね、私のことはセンサザールってちゃんと名前で呼んでくれる?お前って見下されてるみたいで嫌なの」
「善処する・・。」
「素直でよろしい」
ゼンの言葉にご機嫌になったセンサザールの歩みは軽やかになっていた。
「ほら早く行くわよゼン!」
「名前で呼ぶな・・。」
恥ずかしくなったのか、ゼンはローブについたフードを深く被り目的地を急ぐのであった・・。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる