主人を殺された傀儡は地の女王と復讐の旅に出る

タカヒラ 桜楽

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第34話

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新たにメンバーを加え、新始動した勇者パーティー一行は、ラスイーガから少し離れた場所で出現報告された魔物の巣窟の討伐とパーティーの連携の確認を兼ねて、その場所に赴いたのだが・・。

「貴方たち鈍っているんじゃない?普段から私と木偶人形に頼りっぱなしだからこうなるのよ」

勇者であるレイラがため息混じりにパーティーメンバーを非難する。
レイラの周りを囲むように、瀕死の魔族や魔物が転がっている。本来魔族や魔物は死後魔石へと変化するのだが、変化させずに無力化出来るレイラの力量が伺える。

「・・・・これが勇者・・。」

先日勇者パーティーに加わった盗賊シーフの青年、タマルが聖職者プリーストのリナンに治癒魔術を掛けて貰いながら唖然とした表情をレイラに向ける。

圧倒的な強さと時節見せる残忍さが、青年の思い描く勇者像からかけ離れているように思えた。

レイラは、蟻を親指で潰すように一体ずつ聖剣を突き立てて止めを刺す。

「四天王一人倒しただけで調子に乗るなよ・・。」

レイラが時間をかけて魔族たちに止めを刺していると、一人の魔族が恨めしそうにレイラを睨みながらそんなことを言う。
地面に這いつくばり、振り絞るように発せられた魔族は見るからにそう永くはないだろう。

「お前らの強さはわかったが、この程度ではダルガニオ様には勝てん・・。お前らの無様な姿、地獄から眺めているぞ・・。」

魔族は不敵な笑みをレイラに向ける。
だが、その笑みもレイラの歪な笑顔に気圧され、徐々に怯えた表情に変化していく。

「ダルガニオ・・ね。覚えておくわ、そんな強者と出会ったことがないから楽しみだな・・。」

レイラはそう言うと、聖剣を天高く掲げる。
聖剣はレイラの感情に呼応するように赤黒く色づいていくのであった。
ドス黒い怒りの感情を体現した聖剣から耳をつんざくような高音が発せられる。

「皆んな伏せろッ!!」

レイラの動作と聖剣の状態を見て、瞬時にレイラの意図を汲み取った重戦士タンクのラインズが仲間に向かって叫ぶと同時に、仲間の前に立ちはだかり大盾を構える。

瞬間、轟く爆音・・。

ラインズの固有スキル鉄の孤城アイアン・グローリーと呼ばれる、防御系統のスキルでさえ、全ての衝撃を殺せずに後方の仲間たちにも竜巻のような突風が襲いかかるのであった。

「キャアアアア!」

たまらず、悲鳴をあげる射手アーチャーのミールナ。タマルとリナンも吹き荒れる突風にたまらず目を瞑る。

「ぬおおおおおっ!」

雄叫びを上げ、衝撃を一身に受けるラインズは盾にその身を預けるように上体を前に置く。
やがて、轟音が止むと晴れやかな表情で立ち尽くすレイラの姿が露わになる。

「レイラ!自分が何をしたのか理解しているのかっ!仲間が近くにいる状態で赤の死劇レッド・ポートリーを放つなんてどうかしているぞ!危うく全員死ぬところだったんだぞ!」

怯える三人を他所にラインズはレイラの胸ぐらを掴み怒鳴り散らす。
レイラの放った技は聖剣を持つレイラにだけ許された秘技赤の死劇レッド・ポートリー、その技は魔力を炎属性に変化させ、空気を焼くもとい爆発させるほどまで急激に温度を上昇させる危険な技である。
彼女の技に死劇とつけられた理由はその技の恐ろしさが由縁だと語られている。

実際に見たことがあるのは、ラインズと今はパーティーにいない傀儡師のノウトだけであったため、リナンとミールナは息を飲み、新参者のタマルはそのありえない光景に女のようなか弱い悲鳴をあげそうになる。

魔族が持っていた鉄製の武器は熱風でひしゃげ、木々は高音で熱せられたためなのか、根本から幹まであらゆる方向に螺旋を描き歪な形に変わり果てており、魔族たちは跡形もなくなってしまっていた。
魔族が黒い粉に変わり果てたその姿が火山灰のように辺りに霧散する。

その光景は焼き払われた村々のように死の苦しさを自然その物が表現したかのような劇の一幕のような凄惨たるものであった・・。



ーーーーー

「今回の及第点はラインズだけのようね・・。」

レイラは軽蔑の眼差しを地べたに座らせたパーティーメンバーに向ける。
ラインズのみ、最後の捨て身の防御が評価されて、レイラの隣にいることが出来たが、他三人は意気消沈といった様子でレイラに言われるがままの状態であった。

「この力はあって当然よね?だって私たちは勇者パーティー、この国で屈指の力を誇る者のみが集まったのだから・・だけど今回のこの有様はなに?リナンの支援魔術は優先度の低い近接補助と敵の撹乱が目的のタマルにばかり使用して、そのタマルは大して敵の視線を集められていなかった、それに・・。」

レイラはそう言いながらミールナを見つめる。
虚な目のミールナは蛇に睨まれた蛙のようにレイラの言葉を待つ。

「ミールナ、一番パーティーの輪を乱していたのは貴方よ。弓の精度も低かったし、なによりも数発味方に当たりそうな危険なモノもあったわ、気をつけなさい」

「ご、ごめんなさい・・。」

怯えきったミールナは草食動物のソレであった。ガタガタと身体を震わせレイラの一言一句に過敏に反応していた。
ミールナの反応に釣られてパーティーメンバーの表情も強張る。
特にラインズとリナンは先日の彼女たちのやりとりを間近で見ていたのもあり、余計に肩に力が入ってしまう。

そんな様子を酷だと思ったのか、レイラはミールナに近づき、優しく抱き寄せる。

「そう怯えないでミールナ。この前、感情を表に出して貴方に怒りをぶつけてしまったことを私はとても後悔しているわ。あの時、ちゃんと話し合うべきだったんだわ、ノウトが今後のパーティーについてね・・。」

「わ、私も仲間だった人を侮辱するようなことを言ってごめんなさい・・。」

二人は自分の非を認め両者を許そうと向かい合っていた・・のだが、ラインズはその光景をきみ悪がった目で見ていた。

(ノウトさんがいなくなった?仲間だった?違うだろ・・。俺たちが殺したんだろ・・、何故仕方がなかったような言い回しをコイツらはしているんだ?)

ラインズは背けたくなる現状に途方に暮れていると、ふとリナンに視線を吸い寄せられる。

リナンは二人の会話に顔を蒼白にして、眺めていたのであった。
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