主人を殺された傀儡は地の女王と復讐の旅に出る

タカヒラ 桜楽

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第37話

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ラインズとレイラの交戦の少し前のことである。

ゼンたち一行は、ようやくラスイーガの街に訪れていた。

「ねえ、ゼン。私ずっと言いたかったのだけど、あなた空間跳躍ワープが出来るのにどうして歩いてここまで来ているのよ。せっかく空間跳躍ワープがあるんだから、使えばすぐに追いかけてこれたんじゃないの?」

センサーザールは街並みを見回しながらゼンにそう問う。

空間跳躍ワープは使用者が記憶している場所しか行き来出来ないんだよ。ノウト様の記憶は所々見れなくなっていてな、ラスイーガは何故か行けなかったんだよ」

ゼンもそう言いながら辺りを見渡す。ゼンの場合は人探しといった様子であるが、その視線は鋭いものであった。

「へえー、そうなのね・・。」

ゼンの言葉にセンサザールは含みのある相槌を打つ。
どこか引っかかるところがあるのだろうが、あえてゼンに言わないのは優しさなのだろう。

「見て下さい!ゼンさんあの大きな焼き菓子、食べてみたいです!ああ、あの串焼きのお肉も!こんなに凄いところ初めて来たです!」

二人の会話を気にも止めず、はしゃぐ天翼族のリーネ。
リーネは背中についた大きな翼を擬態魔法で隠しているので、側からみれば田舎の少女がはしゃいでいるようにか見えないだろう。
そんな彼女を見てセンサーザールは深く息を吸うと、リーネとゼンの手を取って露店へと向かう。

「せ、センサザールさん!?」

「・・おい・・。」

「ほら、せっかく街に来たんだから美味しい物でも食べましょう!リーネが食べたこともない物がいっぱいあるのよ」

センサザールは、二人に向かって笑顔を向けてそう言う。
新しく旅を共にするリーネの前で話すようなことじゃないと感じたのだろう。
それを汲み取ってか、ため息を吐いたゼンが懐から貨幣の入った麻袋を取り出す。

「食いたい物を食ったらすぐに勇者たちを探すぞ・・。」

「あら、優しいじゃない。じゃあお言葉に甘えてご馳走になろうかしら」

センサザールはそう言いリーネにウィンクをする。
自分のことを気遣ってくれてたことを理解したリーネの顔が綻ぶ。
そんなリーネの喜ぶ顔を見てセンサザールも口元が緩むが、リーネの口元に手を置いて注意換気をする。

「それとリーネ、私は一応人間の間では悪い方で有名なの・・。だからあまり本名で言わないでくれる?」

「わ、わかりました!それじゃあ・・セーサさんでいいです?」

モジモジと身体をくねらせてそう確認してくるリーネを見て母性をくすぐられたセンサザールはリーネに年甲斐もなく抱きつく。

「それでいいわ、大歓迎よ!」

「ち、ちょっと離すです!」

「何をしている、早く行くぞ」

いつの間にか、目の先まで歩いていたゼンにそう言われ、慌てて駆けて行った二人であったが、ふとリーネの足が止まる。

「・・・・?」

「どうしたのリーネ?」

「あっちの方で嫌な予感がするです・・。」

訝しげにリーネを見るセンサザールに北西の方角を指差しながら、リーネは顔を強張らせる。

「嫌な予感って・・。」

「あの辺りが膨大な魔力で囲まれているです。まるで、誰かを囲んでいるような・・そんな感じがするです」

リーネの瞳が金色に光っており、魔眼で魔力の流れを見ているのだろう。
センサザールはリーネの言葉から何が行われているのか推測すると、

「ゼン!きっと結界魔術が張られているんだわ・・ッ!?」

と、ゼンに説明する。
ゼンは二人の元に走って来ると、すぐさまリーネを抱き抱える。

「リーネ場所を教えてくれ・・。」

人が行き交う街に結界魔術・・。魔族が侵入したのだろうか、考える暇もなく三人は北西へと向かって行くのであった。


ーーーーー

「何で貴方がここにいるんだ?」

「話は後だ、退いてろ・・。」

ラインズを押し除けて、目の前のレイラと対峙するゼン。
ラインズはゼンに、いやノウトに向けてかける言葉が思いつかず俯く。

「少し見ないうちに、怖い顔になっちゃって・・。でもそんな顔も私は好きだよ」

レイラは闘争心を剥き出して襲い掛かるセンサザールの攻撃を飄々と躱しながらゼンに向かって笑顔で話しかける。

「あれが本当に勇者です?」

そんなレイラの不気味さを感じとったのかリーネがゼンのローブを摘みながら、怯えた口調でゼンに問いかける。

「誰だい?その女は・・ッ!?」

「私を無視してんじゃないわよッ!」

対峙していたセンサザールを無視した発言に苛立ちを露わにしたセンサザールがレイラに向かって吠える。
センサザールは人型の腕から翼竜である自身の頑強な爪を持つ凹凸の激しい岩肌のような腕に変えてレイラに向かって振り下ろす。
獰猛さと殺傷能力を高めたセンサザールの攻撃はレイラの顔に命中する軌道にあったのだが・・。

「お前には用はないんだよッ!!」

紙一重でその攻撃を避けたレイラは、センサザールの顎を目掛けて拳を穿つ。
骨がぶつかる鈍い不快音が響き終わる頃には、センサザールが膝から崩れ落ちて地面に平伏せる。

「センサザールさんッ!?」

「この前からずっと感じていたのだけれど本当に弱いわね・・。近接が得意じゃないのに無闇に接近戦を仕掛けるなんて馬鹿じゃないかしら」

手をパンパンと鳴らし、センサザールを見下ろしながらそう言うと、ゼンたちの方向にゆっくりとやってくる。
その足取りは余裕の表れなのか、殺気の一切ない優雅なものであった。

「レイラ・・。」

レイラは怪訝な表情のゼンの目の前まで来ると不敵に笑ってみせる。

「主人になった気分はどうかしら木偶人形さん?」

その言葉にゼンは目を見開き驚きを隠せずにいるのであった。

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