異世界でもうちの娘が最強カワイイ!

皇 雪火

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第1章:港町ポルト編

第028話 『その日、魔法講義をした②』

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「それじゃあリリちゃんはこれから、サンダーボールの扱いを完璧にしてもらうわ。魔法を覚えたことで安定性は上がっているけれど、その分威力も増えているの。そのため、失敗してしまった時のリスクも増しているわ」

 リリちゃんとひざを突き合わせて講義をしている。魔法の威力が、昨日までと違っていることは先ほどその目で見たはずだ。
 リリちゃんも真剣に聞いてくれている。茶化さず最後まで教えよう。

「もしも失敗した場合、まず貴女は大けがを負うわ。それもレベルが上がれば上がるほど威力が増す。もちろんその分抵抗値も上がるし体力も増えるわ。けれど雷の魔法は他とは一線を画すの。同じとは思わない方がいい」

 リリちゃんはこくりと頷いた。

「そして貴女の近くに誰かいれば、その人も同じようにケガをするわ。最悪死んでしまうかも知れない。それが貴女の知らない人か、お友達か、ママかもしれないわ。だから、魔法の扱いは誰にも負けないと胸を張って言えるくらい、練習しなさい。自信を持って雷魔法で味方に危害を与えないと言えるようになりなさい。良いわね?」
「はい! 先生!」
「よろしい。ならまずは魔法使いのレベルを上げることではなく、スキルを上げなさい。魔法使いレベル1の最高スキルは5よ。5になるまで、魔物や魔獣が出てきても撃ってはダメ。まずは手の上で維持し、ゆっくりと自分の体の周りを動かしてごらんなさい。絶対に大丈夫だと思えたらスピードを上げていいわ。スキルが5になるまで続ける事。さぁ、はじめ!」

 リリちゃんは少し離れた場所で練習を始める。あれなら少し放っておいても大丈夫ね。

「さて、今のうちに2人に魔法のレクチャーをするわね」
「よろしくお願いします」
「えっ、え? 私もですか?」
「ええ。魔法を使えた方がリリちゃんにとっても、リーリエさんにとっても良い事だと思います。それに、狩りの時に魔法が上手く使えたら、と思うことはあったでしょう?」
「それは、まぁ……確かに」

 リリママの職業は狩人だ。であれば、森の中で獲物を狩ったとき、炎や水、風や氷の魔法があれば、野営に飲み水、解体や保存など、いろいろと用途がある。
 どれか1つでも覚えていれば違うものだ。

「じゃあそういうことで。リーリエさんの適性は何かしら?」
「水です。ただ、狩人ですので、大して威力は出せません」
「水かぁ。なら次に便利な炎を使えるようにしましょうか」
「ええっ!? 炎ですか?」

 驚かれるのは慣れたのでスルーだ。

「じゃあアリシアは? もしかしなくても土と水と風?」
「そ、そうですが……なぜわかるのですか?」
「カンよ」
「カン……ですか」

 というより、ゲームの時にアリシアが使っていたのがこの3属性だったからだが。アリシアはこの属性の物しか使わなかった。今思えば、それ以外が使えなかったのだろう。
 炎や氷、雷は種族的に使いにくいのかなぁとか、別のことを考えていたが。……案外、それも間違いではないのかもしれない。
 確か他のエルフのNPCもこの3属性を使うのがほとんどだった記憶がある。

「今なんとなくで言ったけれど、エルフってもしかして、この3属性しか使用できなかったりしない?」
「いえ、炎や氷を扱えるものもいますが……稀ですね。確かにほとんどの者が先ほどの3属性に限られます。ただ、成人の儀で属性を発露しない者はほとんどいない点は、人族とは異なりますね。」

 ……まぁそれは、生まれ持っている魔力の量が、人族よりも圧倒的に高いからね。それに魔力に関する操作の歴史が深いのだろう。最悪、ヘタクソでも魔力の高さで無理やり発動させているのかもしれないが。
 人族は獣人ほど魔力が低いわけではないが、それでもエルフよりは確実に少ない。その上、貴族の隠蔽体質も尾を引いている可能性がある。人族の人口は多いが、魔法を扱っているのは数少ない貴族が主体。なら、成人の儀がほぼ意味をなしていない。ただの貴族の発表会だ。

「やっぱり種族による属性の偏りって、あるのね」
「はい。獣人族は逆に風や土、水に加え、炎を扱えるものが多いですね。雷の術者も獣人が多いと聞きます。ただ、魔法を使えるもの自体が稀ではありますが」
「なるほどね。アリシアはエルフだから、炎や雷、氷の魔法を、使うことが出来ないのね?」

 属性に偏りがあるのは、それぞれの種族の生活環境の違いだろう。
 エルフは基本的に春の日差しのような年中暖かい森の中で暮らす。森の中は水、土、風の3種であふれており、他の3種は中々出番がない。
 逆に獣人は、基本荒野や岩場、草原に住居を構えることが多い。そのため水や土、風は基本となり、炎や雷を経験しやすいのだろう。氷は一部の地域に限定されるため一番関りが低いかも。

 それを言えば氷の世界に囲まれた地域の人は炎がほとんど出せないだろう。なぜならば、外で火を出せばたちまち消えてしまうような、弱い炎しか知らないためだ。
 吹き荒れる吹雪の中、ゴウゴウと燃え続ける炎など、そんな環境で育ったものに想像が出来るだろうか。魔法はイメージだ。イメージが出来なければ、何も作れない。

「……はい、そうですね。先ほどまでは信じておりました」
「あら、今は違うのかしら」
「リリ様……今まで魔法が使えなかった子供が、1日で雷魔法を教えただけで扱えるようになったとお伺いした際に、違和感を覚えていました。そして今、リーリエ様に適性外の炎を教えられるとお嬢様は仰いました。そこで確信しました。適性属性なんて存在しないのだと。そうですよね?」

 確認するように問いかけてくる。うん、少しの情報で答えを導き出せる。それに今までの自分の価値観に固執しすぎず、柔軟に視点を変えることが出来る。
 私が説明しなくても、いつか自力で辿り着けていたかもしれないわね。
 リリママは驚いたのか固まっている。

「そうよ。よくわかったわね」

 アリシアの頭をなで、説明を続ける。

「魔法はイメージで作り出せる。これはアリシアも知っているわね?」
「はい。頭でどのような形の物を作るか、考えてからでないと大きな魔法は作り出せません」
「であれば、魔法に必要なものもわかるわよね?」
「魔力と、イメージ……あとは魔法名と呪文詠唱でしょうか」

 詠唱……あったわねそんな厨2ワード。

「魔法名は確かに必要よ。でも、詠唱はイメージの後押しに使うんだと思うわ。私は……カワイイ呪文が思いつかないから使わないわ。つまり要らないということよ。リリちゃんもさっき、呪文詠唱なんてしなかったでしょう?」
「確かに……!」

 人によっては心動かされる中二全開の詠唱が出来るのかもしれないけれど、私には難し過ぎるわ。あと、たぶんシラユキに合わないと思う。いえ、度が過ぎた詠唱ならワンチャンあるかも知れないけれど……うーん。浮かばないわね!

「魔力とイメージさえあれば魔法はほとんど組み上がるわ。そして種族によって魔法が出しにくい属性があるのは、ただその属性に縁がないだけよ。森に住んでて氷や雷なんて、滅多にお目にかかれないでしょうし、炎なんてむしろ忌避する存在でしょう? 森を大事にするエルフは、炎なんてイメージしたくないんじゃないかしら」
「確かにその通りです!」
「なら、あとは簡単ね。2人とも、ちゃんとした炎を見て、ちゃんと理解すれば、あとは出来るわ」

 アリシアはなるほどと頷いている。そこにリリママが挙手をした。

「シラユキさんが言いたいこと、何となくわかりました。仰っていたように、見たことがなければそもそも使えませんし、深く関わってないと自分の中でもイメージ出来ません。そして適性ではない……出せないと思えば出すことなど出来ないということも。しかし、それを思うと不思議なんです。あの子は、いったいどこで雷なんて見たのでしょう……?」

 ……うっ!

 そこを突かれると本当に申し訳なくなってくる。
 あの時は自分の強さがまだハッキリとわからず、暴れたい欲もあったし、ちょっと暴走してたところは否めない。巻き込むことはなかったけれど気絶はさせちゃったから……。

 ちゃんと謝らなきゃ……。

「あー……えっと、その……、オークの集落を吹き飛ばすとき、炎と風と雷の属性魔法を一気に破裂させたんです。それで集落は吹き飛んだんですが……、リリちゃんは燃えた大地を見て、雷の魔法を炎魔法と勘違いしちゃって……。リリちゃんとシェリーに魔法を教えた際に、ファイアーボールの代わりにサンダーボールが出てきちゃったんです。それでそのままファイアーボールに軌道修正も考えたんですが、きちんと覚えさせないと危ないと思って……ごめんなさい。危険な魔法を教えることになってしまって」

 おずおずと謝るとリリママは最初驚いたような顔をしていたが、微笑みかけてくれた。カワイイ。まるで天使。

「なるほど、そういうことでしたか。気にしないでください、シラユキさんでなければ、あの子に魔法を教えてあげることは出来なかったでしょう。それにあの子は、魔法が使えることが何より楽しいみたいです。辛いことがあって笑えるのは、あの子の生来の明るさもあるのでしょうが、それ以上にシラユキさん。貴女のおかげで、今あの子は笑顔なんです。お礼を言わせてください。あの子の心も助けてくれて、ありがとうございます」

 リリママ優しい……好き!
 その後リリママとアリシアに、『魔力溜まり』から説明を始めた。私の魔力を流し込み、2人にきちんと魔力を理解してもらう。

 アリシアは今まで攻撃魔法を使えていた分、理解はしているのだと思ったが……。どうやらエルフの教育では誰しもが『魔力溜まり』はお腹の少し下……丹田にあるとされているらしい。
 実際のアリシアの『魔力溜まり』の位置は少しズレていた。それがわかると、アリシアの魔力操作は格段に改善された。今なら威力も発動速度も、今までの2倍に出来るらしい。頼もしい限りだ。

 リリママも元々水属性は操れていたため経験はある。シェリーと同じようにレクチャーすることですぐに理解を深めた。30分もしない内に2人は凸凹の『ファイアーボール』を出すことが出来た。
 魔力は安定しているが、凸凹なのは仕方がない。スキルが0なのだから。

「2人ともおめでとう、今の流れを模倣することで他の属性も操ることが出来るわ。ただ、魔法をきちんと覚えきる前に他にも手を出してしまうと良くて器用貧乏。悪くてイメージが出来なくなって魔法が使えなくなるわ。まずはスキルが3になるまで練習しましょう」
「「はい、先生!」」

 その後、魔法の維持をしたり、のワイルドラビット君にも手伝ってもらい1時間も経てば2人共スキルが3になった。

 その頃にはリリちゃんもレベル1のスキルキャップである5に上昇し、安定して『サンダーボール』を操作を出来るようになってきた。まだ完璧には程遠いが、スキル5ならこれが限界だろう。
 なので彼女は今、私のヒザの上でゴロゴロと休憩している。カワイイ。猫か!

「2人ともおめでとう、最後に2人にも私からプレゼントよ。受け取ってね」

 『ファイアーボール』の魔法書を2人に渡す。書じゃないけど、もう書でいいや。
 シェリーに渡したため在庫は1つになっていたが、途中暇だったので追加で作った。

 さすがに草原で平らな地面を探すのは無理なので、土魔法で平らな岩を作りその上で作り上げた。
 スキルレベルも暇つぶしで上げる事にし、炎以外の5種もスキルレベルが80にまで上昇した。威力・魔力共に最大まで詰め込まれ、神秘的なまでのバランスで球体を維持した各種ボール魔法を見て、アリシアは感動を超え涙を流していた。そこまで!?

 ちなみに残り2つの神聖と暗黒に関してだが、これらは自主練が出来ないスキルだ。どうしても掛け続ける対象が必要になり、1人ぼっちでは練習が出来ない。まぁ、相手は友達である必要はなく、敵性対象で良いのだが……。
 現在の神聖スキルは58。暗黒スキルはまるで使っていないため0だ。これはまぁ、暗黒スキルはほとんどが特殊な弱体魔法だ。あれば便利だが、今の私にはなくても問題はない。

「ありがたく頂戴致します。お嬢様」
「何から何まで、本当にありがとうございます。使わせていただきますね」

 2人ともすぐに魔法を覚え、魔法書は燃え尽きた。

「本当に全てが『魔法言語』とは……まるでダンジョンドロップのようです。初めて読みましたが、本当に一瞬で理解することが出来ますね」
「これが完全な魔法書……私、最初のウォーターボールを読み切るのに5時間はかかったのに」

 リリママは当初の苦労を思い出しているようだ。確かに、『魔法言語』0%の魔法書なら、80ページに減らされた辞書のようなものだしね。

「そろそろ休憩にしましょうか。アリシア、食事の用意をお願い」
「かしこまりました」

 アリシアは自前の調理器具を取り出し、草原にあった野草、無事だったワイルドラビットの肉、街で買ってきた串焼きなどを使って簡単な料理を作り始めた。
 聞いたところによると、王宮メイドの必須技能に『主人には、野営でも完璧な食事を』という項目があるらしい。王宮メイド、意識高い系の人じゃないと務まらないわね。
 早速アリシアは覚えたてのファイアーボールを活用し、焚き木に火をつけていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 完成した料理を皆で美味しく頂き、雑談に花を咲かせる。食後のデザートには、初日に採取した『ルミラムネの実』を出した。1人1房を出してもまだまだある。……採りすぎたかな?

「ところで、ダンジョンドロップの魔法書って、どれくらい高いのかしら?」
「そうですね……一般の10倍くらい、かしら。使いやすさもあると思いますが、どちらかといえば希少性ですね。ダンジョンの宝箱までたどり着くのは大変ですから」

 まぁ、魔法がまともに使えない魔法使いを連れてダンジョンなんて、死ねるわ。
 逆にエルフは魔法がある程度は使えるし供給量は高そうね。いえ、『紡ぎ手』次第なところもあるから、どんぐりの背比べかしら。

「じゃあさっきリリちゃんが使った雷の魔法書は、金貨600枚ね」
「金貨600枚……ギルドの受付嬢が生涯働いても届かない金額ですね」

 笑顔を深くしたアリシアがリリちゃんに教えてあげた。悪乗りに付き合ってくれるなんて、アリシアは本当に出来たメイドね。

「え……ええ!? そ、そうなの? リリ、そんなにお金、払えないよ……?」

 リリちゃんは戦々恐々としている。もう、カワイイわね!!
 リリママは、もう冗談だとわかっているのか、苦笑している。

「冗談よリリちゃん。お金なんて求めてないわ。プレゼントなんだから気にしないで」
「もう! リリびっくりしたよう!」
「うふふ、ごめんなさいね」

 そんな中、リリママは意を決したように口を開いた。

「シラユキさん、お話があります」

『アリシアのイタズラ顔もカワイイわね』
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