異世界でもうちの娘が最強カワイイ!

皇 雪火

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第7章:エルフ王国 救出編

第223話 『その日、目を覚ました』

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「……ん、ぁ」

 ぼんやりと意識が浮上し、視界に明かりが入り込む。この優しい光は、見覚えがあった。
 私が作った、マジックテントの明かりだ。

「お嬢様? お嬢様……! お加減はいかがですか? どこか痛むところはありませんか?」
「……アリ、シア?」
「はい、アリシアでございます! ああ、お嬢様。良かった……」

 アリシアが私の手を握って涙を流す。
 そんな光景にも関わらず、私の思考には靄が掛かっていて、思考がまとまらない。

「……」
「お嬢様……?」
「私、どうなったの……?」
「お嬢様は、熱を出されて倒れてしまわれたのです」
「熱……?」

 頭はまだぼんやりしているけど、言われてみれば、この気怠さは熱を出した時の感じかも……。

「私、どれくらい寝てたの」
「丸2日ほどです。恐らく、連続レベルアップの弊害かと」
「まる、2日……?」

 私は今、初めての経験に唖然とした気持ちでいる。
 だって、戦場での魔法行使から今に至るまでの間に、小雪との会話をした記憶が、一切無かったのだから。

 小雪とのお喋りした記憶が飛んだ? いや、そんな筈はない。小雪とのお喋りほど大事な物などないもの。それを失うはずが無い。
 となれば、意識を失うほどのショック……。気絶を介した場合は小雪とは出会えない、と言う事なのだろうか。
 それを思うと、憔悴して疲れ切った頭に追い打ちをかけるかのように憂鬱さが増した。

 なぜなら、1日の締めくくりには小雪とのお喋りがあるからこそ、大変ことがあったとしても頑張ってこれた。今までどれだけ働いても、倒れる事なく夜にはきちんと、睡眠という形で眠りについていたけれど……。今後もし、疲労が祟って睡眠ではなく気絶という形で1日を終える事になった場合、小雪とはお話できない可能性が浮上して来た。
 それを思うと……。

「辛い……」
「お嬢様、どうか今は、ゆっくりとお休みください」
「うん……」

 もう一度目を閉じると、微睡に呑まれていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇


「マスター」
「……小雪?」
「目を開けないで。今のマスターはとっても疲れているの。それはこの世界の中でも変わらないわ。私はそばにいるから、ゆっくりしていなさい」
「うん……」

 目を閉じていても、側には小雪がいる。
 この世界でさえ思考がクリアにならなくても、その感覚だけはハッキリと分かった。それが、何より安心できた。

「小雪、私どうなってたの?」
「そうね……。簡単に言えば、アリシアが言ってた通りよ。連続レベルアップの衝撃に、体が耐えられそうになかったから、意識が強制終了してしまったの」
「ええー、信じられない。連続レベルアップなんて、今まで何度か経験して来たのに……」
「そうだけど、あの時と今回とでは色々と状況が異なるわ」

 ゆっくりと目を開けると、すぐ隣に小雪が横たわっていた。
 小雪はとても心配そうな顔をしていて、そんな顔をさせてしまった事に申し訳なさを感じてしまう。

「マスター、今の自分のレベル、わかる?」
「えっと……23だっけ?」
「いいえ、24よ。マスターの使用した魔法は、1発放てば「はいおわり」って魔法じゃ無いでしょ。むしろ、副次災害的な効果を発揮する魔法だわ。込められた魔力を使い尽くすまでね。だから、マスターが倒れた後も魔法は発動し続けて、運悪く生き残った人工魔兵を全滅させたの。その結果、23に上がって、気を失った後に24へとレベルが上がってしまったわ」
「そうなんだ……」

 レベル22の段階でもキツかったもの。
 なのに23で意識を保てなかったのに、24とか死体蹴りもいいとこね。そりゃ2日経っても身体が怠い訳だわ。

「マスターも察してると思うけど、私はマスターが眠っている間でも、周囲の状況が読めるわ。だから、何が起きたのか大体把握している」
「うん」
「眠るマスターの近くでミーシャが言ってたんだけど、今回の戦いで発見された人工魔兵の亡骸は150体以上。レヴナントも複数体巻き込んで、更には魔人2体の亡骸が確認されたそうよ。No.20代前後の、ハイクラスの連中みたいね」
「それは大きいわね」

 魔人は実力に応じて01から番号が割り振られている。エルドマキア王国で暗躍していた奴は雑魚の魔人だったから知らないけど、森で討伐した奴でさえ、実力から鑑みて30前後と言ったところね。
 それすら上回る20前後が2体も食えるなんて、だいぶ魔族側の戦力を削れたんじゃないかしら。その分警戒されてるかもしれないけど、魔王復活がこれでかなり遠のいたはずよ。

「それと、生き残った王侯貴族への事情聴取も行われたところ、『十冠クラウンズ』らしき姿も見かけたようね。マスターは恐らく、そいつの仮初の命アバターライフも奪った可能性があるわ」
「わぁお」

 『十冠クラウンズ』といえば、No.01から始まる10人の公爵級の魔人を冠する称号だ。その実力は魔王に次ぐ実力者ばかりで、どの魔人もボス級の強さと知能、そして怪物的な設定から来る特殊技能を持ち合わせている。
 ゲームではその全てと戦えるわけでは無かったけど、知ってる連中は全員『命のストック』があった。残機とも呼べるその命のおかげで、連中は死んでも復活し、その度経験値やアイテムをドロップしていた。
 22が24に上がった理由の8割はコイツが理由でしょうね。最上位魔人のソロ討伐経験値なんて、絶対尋常じゃないボーナスがついてるでしょ。それが例えストックによる仮初の物だったとしても。

 これからはストック持ちの『十冠クラウンズ』狩りをしたらレベル上げが捗りそうね……ふふ。

「マスター。思いを馳せてるところ悪いけど、それはお勧めできないわ」
「えー、なんでー?」
「言ったでしょ、今回のレベルアップで身体が負担を感じて倒れたって。それはこれ以降ずっと続く物だと覚悟した方がいいわ」
「……なんで?」

 小雪の言葉に耳を疑った。
 小雪がこんな冗談を言う訳がないけれど、それでもレベルアップは小雪を手にする為必須事項なのだ。それを理解しているはずの小雪が、止めようとするなんて……。

「マスター、最強クラスである『レジェンド』の『勇者』。それのレベル100の基礎的な総戦闘力は幾つ?」

 勇者の基礎値250と、成長値0.9だから……(250+250×0.9×100)
 
「えっと……22750」
「それじゃ、そこに全職業カンストした場合の2.03倍を合わせたら?」
「小数点繰上げで、46183」
「そこに装備補正とかが加わる訳だけど、少なくともそれが生身の人間の限界値なの。マスター、今のステータスを見てごらんなさい。ちなみに、先に20時点の物を見せるわ」

*********
総戦闘力:32448(7000 +3504)

STR:3537(+407)
DEX:3537(+407)
VIT:4667(+1000 +537)
AGI:3537(+407)
INT:3537(+407)
MND:5914(+3000 +669)
CHR:5919(+3000 +670)

称号:求道者+、悪食を屠りし者
装備:『夜桜』

*********

「『ステータスチェック』」

*********
総戦闘力:39062(8400 +4498)

STR:4219(+486)
DEX:4219(+486)
VIT:5575(+1200 +642)
AGI:4219(+486)
INT:4219(+486)
MND:8297(+3600 +955)
CHR:8314(+3600 +957)

称号:求道者+、悪食を屠りし者、壊神を従えし者
装備:『夜桜』

*********

「どうかしら」
「どうって……基礎100の『勇者』ならまだしも、全補正『勇者』にはまだまだだなぁと」
「そうだけど、そうじゃないわ。いーい、マスター。貴女は今、人間が耐えうる能力の限界値へと近付きつつあるの。今回は限界を超えつつある中で急激なレベルアップを重ねたせいで倒れてしまったけれど、この先きっと、レベルアップの度に倒れる可能性が出てくるわ」
「ええー!? それは困る!」

 小雪は仕方なさそうにため息を吐いた。

「止めるつもりは無さそうね」
「だって。小雪に会いたいんだもん」
「……もう、馬鹿なマスター」

 小雪がそっと抱きしめてくれる。
 温もりは感じないが、その微かな存在は感じられる。

「良いわ。……マスターの身体は強靭だから、レベルアップの反動で死んじゃう事は無いと思うわ。けど、連続レベルアップは今後も危惧するべき事項よ。倒れそうなときは、事前に周囲の安全を取る事。いいわね?」
「うん……。わかった」
「アリシアとミーシャにはレベルアップの弊害で今後も倒れる可能性を伝えておきなさい」
「軽減する方法ないのかな……」
「人間である以上は、どうしても起きうるものよ……。ああ、いっそのこと人間辞めちゃう?」
「えっ?」

 小雪から冗談のような言葉が口にされた。

「『求道者+』の説明にもあったけど、神様のように崇められて現人神にでもなれば、耐性がつくんじゃない?」
「それってつまり、もっと光るってこと!?」
「かもね。でも、普段は指輪で抑えて、レベルアップの時には外しておけば大丈夫よ。たぶん、今回も『求道者+』の効果を指輪で押さえつけていたから、ダメージを受けた可能性も考えられるわ」
「うぅー……。ゲームではそんなこと無かったのに……」
「それは所詮、ゲームだったからって事よ。ゲーム内でそんな総戦闘力を持つNPCなんていなかったでしょ? 負担が大きすぎたからじゃないかしら」
「そっか……。でも小雪に会うためだし、頑張るね」
「倒れ過ぎないようにね?」
「私だって、小雪とお喋りできないのはつらいもん。ほどほどにする……」
「ふふ、約束よ」

 そうして、この世界に来て初めて、なるべく無茶をしないようにしようと考えたのだった。
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