ぐだぐだで転生記〜1日を無駄に長く過ごす男の話

infinitey009

文字の大きさ
3 / 5
異世界転生の初日

街道は馬糞だらけであった

しおりを挟む
 休憩を終わらせて先に進む前に、するべき事がある。

 道の両側面の確認だ。

 昔の街道は人の流れが多い為に山賊が多く、良く襲われていたと私の記憶が言っている。

 独り身の自分などは見つかったらすぐに殺される事、間違い無しである。

 新しく増えたスキル危険察知と索敵は切らさないよう進んでいきたい。

 後は、逃走経路も一応考えておこう。

 備えあれば憂いなしだ。

 先程よりは前を杖で確認せずにいける為速くはなったが、それでも私を通り過ぎて行く馬車などにはついていけない。

 新しいこの体は、前の体よりは性能は良さそうだが、その程度である。

 周りを確認しながらの進行は、かなり気を使う。それにしても、街道の端や道中に馬糞が大量にあるのは頂けない。

 臭いもそうだが、蝿などの虫が湧いている場所もある。

 どうやらこの世界はあまりそうした衛生観念に乏しいのであろう。



 かなり日が暮れて来たので、もう一度休憩する。

 体力的にはもう少し行けそうだが、今のうちに野営の準備が必要かも知れない。

 取り敢えずは、水分補給だ。

 生温い水を少しずつ飲みながら、辺りを確認する。

 この辺には野営の跡は無いので危険かも知れない。

 もう少し進むしかないか…



 さらに進むと野営の跡があった。

 しかし、安心しては行けない。

 何故なら、山賊の野営跡かも知れないからだ。

 辺り100m程を確認してから、燃える物を集め始める。

 もうすぐ日が暮れる。

 今日はここまでのようだ。



 集めた枯れ草や枯れ木で、焚き火の準備をする。

 火は生活魔法のトーチでつけた。

 一応周りには反応は無かったが、今日は寝るつもりは無い。

 寝て死ぬよりは、寝ないで苦しむ方を選ぶ。

 火に関しても途中で消すつもりだ。

 最悪、他の獣や山賊を集めかねない。

 今回はお湯の確保の為だけだ。

 軽く食事を終わらせて、お湯を水袋に詰め替える。

 暖かいお湯の入った水袋を懐に入れて湯たんぽ代わりにする。



 暗闇の中、周りを警戒しながら体を丸めて暖が逃げないようにして朝を待つ。

 一応ステータスも確認しておこう。



『名前』
 ・なし

『ユニークスキル』
 ・契約書
 ・異世界言語

『スキル』
 ・鑑定 Lv1
 ・生活魔法 Lv1
 ・アイテムボックス Lv1
 ・索敵 Lv2
 ・危険察知 Lv2
 ・暗視 Lv1(new)

『称号』
 ・異世界転生者



 索敵と危険察知がレベルが上がっている。

 暗視が増えているので確認してみるが、確かに夜なのに見やすくなっている。

 本来なら詳細などを調べたい所だが、私は熱中してしまうと周りが見えなくなる程没頭するので、このような場所では止めておこう。



 どの位時間が経ったのか分からないが、周りはまだ静かなものだ。

 危険察知と索敵のレベルが上がった所為か、周りの状況がこんな暗闇でも感覚的に分かってしまう…



 急に虫の音が止まった! 



 静かに伏せて辺りを伺う。

 まだ今の所、何も反応は無い。

 少しずつ匍匐前進で、野営の場所から移動する。

 荷物は既にアイテムボックスの中だ。



 じわりじわりと移動していた時、野営をしていた場所に何かが近づくのを感じる!

 これが索敵のスキルの効果か! 聞き耳を立てながら、音が出来るだけ出ないように匍匐前進でその場を離れる。

 …どうやら人間のようだが、灯りも持たず野営地に近づいてくるのだ。

 碌な用ではないだろう。

 身を伏せたまま、相手が居なくなるまでこのまま伏せておく。

 蛇や虫も嫌だが、野盗なら完全に命が無くなるしな…

 暫くすると、野営地に来た人間はその場を離れていく。

 私はまだ伏せたままだ。

 更に時間が経ってから、ゆっくりと辺りを確認して立ち上がる。

 人間が移動した方向を確認し、そちらが北でないことに安堵する。

 ふと気がつくと、周りの景色が更によく見えるようになっている。

 これなら明け方の状態と殆ど変わらないな。

 予定を変更して、このまま町に向かうとする。



 かなり疲労が溜まっている。

 しかし自分の記憶が正しければ、北の街への距離は最初の位置から30km前後だった筈だ。

 かなり遅い進行だったが、それでも20kmは昨日の内に進んでいたはず。

 本当なら残り10kmを夜間強行したかったが、あの時は目が見えないから断念した。

 生活魔法のウォーターを念じ、顔にかけるようにする。

 冷たい水が、意識を少しだけ取り戻させる。

 索敵と危険察知は使用中だが、今の所反応は無い。




 漸く街の門が見え始める。

 どうやら北の街ブランは周りを塀で囲んでいるようだ。

 その中に街があるように見える。

 明け方の街の門から何台かの馬車が出立しようとしている。

 道の脇を歩いて、念願の街にやっと到着だ!

「明け方から街に来るとは夜通しロンデル平原を歩いて来たのか? 無茶をしたな。身分を証明できる物は持っているか? 」

 何故か、かなり親切な門番が可哀想な人を見る目で自分を見ている。確かにその通りなので仕方がないのだが…

「旅の途中に、山賊に追われて殆どの荷物を無くしてしまいました。少しならお金があるのですが、身分を証明できる物はありません」

 大体、本当の事しか言ってないので問題はないはずだ。門番の人は門の隣にある小屋に俺を連れて行くと拳ほどの宝玉を私に差し出す。

「これは、犯罪者に反応する宝玉だ。称号に犯罪者としての称号があれば光るようになっている。これに触るように」

 称号にそれらしきものはなかった筈なので宝玉に触る。

 よかった、問題無いようだ。

「街へ入る為に税金を払ってもらう。銀貨五枚だが払えるか? 」

 アイテムボックスの中に金貨9枚と銀貨100枚が入っていたのを知っていたので懐から出す真似をして、アイテムボックスから取り出す。

「良し! これで問題なくはいれるぞ。ようこそブランの街へ! 」



 門番の元気な声を聞きながら、街の中に入る…早く眠りたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...