魔法なきこの世界で……。

幼少期

大人げない2

　今、必死に荷物を抱えながら死に物狂いで走っている。隣にはクリスも顔をぐしゃぐしゃにしながら走っている。

　夜逃げの準備が完了したのは決闘の前日だった。両親はもう家を出ており、隣町で落ち合うことになっている。そしてクリスの家の裏口からこっそりでて、この街から出ようとした時、運悪く顔を見られている非番の領主の護衛に見つかってしまった。そこからは、その護衛に仲間を呼ばれたり、警報を鳴らされたり、懸賞金がかけられたりと散々だった。

「もうあれを使うしかないよ！あの作ったやつ。」とクリスが懇願するように言った。確かにあれを使うしかないと、荷物を探ろうとした時、前から護衛達が現れた。

「道を開けろぉぉぉぉぉーーー！」

　と叫びそれを出そうとしたその瞬間、護衛達に捕まり縄で簀巻きにされてしまった。

　その後は決闘の舞台である闘技場まで縄で引っ張られて、連れて行かれた。クリスは普通に連れられていた。

　その道中、引っ張っている護衛が「お前が領主に負けた際、お前の家族、親戚、友人はすべて殺すよう言付かっている。あそこにいる女もそうだ。それにどこに逃げたってあのバカはしつこく追いかける。すでに逃げていたって意味はない。だから……、絶対に勝てよ。」と告げられた。絶対に負けられないじゃないか。




　闘技場はまるでコロッセオみたいな外見をした運動場みたいな所だった。俺はその中に夜逃げ用にまとめた荷物と共に置いて行かれた。縄は解いてくれたが、引っ張られたせいで暫くはまともに立てなかった。

　やっと立てるようになった時、あの領主が現れた。
　それはそれはとても立派な盾、兜、胸当てを身につけ、俺の身長の倍はあるような大きな馬に乗りその馬さえも立派な防具をつけている。身につけている武器もとても巨大な大剣を持っている。

　本当に大人げねぇぇぇぇーーー！