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紫電の王《バイオレットブリッツ》
紫電の王《バイオレットブリッツ》28
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「オラッ!!」
ベルゼが右腕の鉤爪を突き出した。
「ッ!!」
さっきの飛び回るような小細工なしの一閃をフォルテはサイドステップで左側に避けた…のだと思う。というのもアタシから見てフォルテが左側に体重を傾けた瞬間、足を踏み出すことなくスライドしたかのように身体がそこに移動していたのだ。
速すぎて見えなかった…?
抜き足のような特殊な歩行法とも違う……何と表現したらいいのかしら…?さっきのフォルテの説明ではアタシは正直その悪魔の紅い瞳と蒼き月の瞳の違いがあまり分からなかったが、今のを見る限りでは要は紅い眼は肉体、つまりは身体能力向上で、さっきのフォルテは攻撃も防御も力強いが動きが「重い」という印象だった。それに対して今はその力強さと合わせて速さが追加されたような感じだった。
さっきは重たい武器をただ振り回しているだけだったが、今はそれに耐えれるだけの補助器具を身体に取り付けたようなところかしら…?
ふと、アタシは探している雷神トールの神器の一つである「ミョルニル」と少し似ているなと思った。
「ミョルニル」は雷神トールの唯一の武器である「打ち砕くもの」の名を冠する世界最強のハンマーである。だが、世界最強と謳われているハンマーにも欠点はあって、それは重さとは裏腹に持ち手の柄が短すぎるのだ。理由はこのハンマーの製作者である「ブロック」と「シンドリ」という侏儒、つまり小人の兄弟に、製作を依頼した「ロキ」と言う悪戯好きの神が二人を邪魔したことによってそうなってしまったらしい。それによってこの「ミョルニル」は二つの神器が無ければ扱うことができないものとなってしまった。それが「ヤールングレイプル」という鉄の籠手とベルゼが電話で所持していると言ったいた「メギンギョルズ」という力を倍増させる帯だ。
フォルテの場合は使えなくはないが、悪魔の紅い瞳だけでは身体の負担が掛かりすぎてしまう。それを蒼き月の瞳で軽減しているのは何となく分かったけど、魔眼を使うために魔眼を使う。本当にフォルテの身体の負担が軽減されているのかしら……?
アタシは心のどこかで言い知れぬ不安が募っていくのを感じた。
「そらッ!!」
攻撃を躱されたベルゼは空中で一回転しながら地面に着地すると、逃げたフォルテ目掛けて左腕の鉤爪を無造作に突き出した。
フォルテはその攻撃を軽く村正改で弾き返した。
ベルゼの左腕が高く跳ね上げられる。
「はぁッ!!」
フォルテは腹部を狙った刺突を繰り出した。
「おっとッ!」
ベルゼはそれを左の腰を引くようにしてぎりぎりのところで躱した。赤いTシャツが再び切り裂かれてボロボロになった姿は、ダメージジーンズならぬダメージTシャツみたいになっていた。
そんなことお構いなしなベルゼは腰を引いた勢いを乗せて弾かれた左腕の鉤爪を回転しながら水平に振るった。
「ッ!!」
咄嗟にフォルテは頭を下げた。
フォルテの首のあった位置をベルゼの鉤爪を通過していく。
それを見たベルゼが口角を吊り上げたのをアタシは見逃さなかった。
「かかったなッ!」
ベルゼが高らかにそう言いながら繰り出したのは右足のローキックだった。
ただのローキックなら良かったのだけど、あれはまずい…!
左腕の鉤爪の下に顔を下げたフォルテはあの攻撃を確認することができない。
しかも下げた頭の位置に数瞬で当たるように調整された角度とタイミングだ。
アタシは少し離れた位置から二人が見えるから攻防の全容が見て取れるけど、フォルテの位置からでは確認できないその一撃が顔面目掛けて振り払われようとしている。
直撃。
鋭い右足の蹴りがフォルテに命中した……ように見えたが寸でのところで左腕を顔の横にねじ込んだフォルテはそれを防いでいた。
バンッ!!
「おッ!?」
ベルゼのローキックを弾き飛ばしながらフォルテがHK45を一発撃ったのだ。
銃弾がベルゼの顔面を襲う。驚きの声を上げながらも辛うじてそれを首を捻って躱された。
だが、思わぬ反撃で態勢を崩したベルゼをフォルテは逃がさない。
躱されたベルゼの首や心臓目掛けて村正改の連撃を浴びせる。
「クッ!?このッ…!」
ベルゼは何とかフォルテの連撃を防いではいたが、そのせいで後ろに乗った体重を前に乗せることができずに斬撃を防ぎながらもどんどん後ずさりしていく。その数計11連撃。
ダン…!
「クッ!?チクショウッ!!」
後ずさりしていったベルゼは鉄柱に背中をぶつけて背後に逃げれなくなったことに気が付いて悪態をついた瞬間、12連撃目のフォルテの斬撃がベルゼの首付近に繰り出された。
ベルゼは身体を傾けてその斬撃を躱したが。
キーンッ!!ガシャーンッ!!
ベルゼの背後にあった鉄柱が斜めに切り裂かれ、そのまま滑り落ちた上部の鉄柱が地面に落下して倒れた。
激しい音を響かせながら倒れた鉄柱が地面の砂埃を巻き上げ、アタシの顔や金髪に細かい砂が舞い落ちた。
ウソでしょ…
電柱の太さほどある鉄製の柱をまるで大根でも切るぐらいの感覚で真っ二つにしたフォルテに、アタシは両腕が塞がれ顔にかかった砂が払えないのでブルブルと振りながらもその光景に驚愕した。
廃工場内に舞い上がった砂埃の中でも互いの獲物同士がぶつかる金属音は途絶えない。
もはや常人の域から遥かに逸脱した二人の戦闘を前にアタシは開いた口が塞がらなかった。
一回二回ではない、数十回の金属音の後にようやく砂埃が収まっていき、アタシは二人を視認できた。
「はぁッ!」
「おらッ!」
フォルテが村正改を振るいベルゼが両腕の鉤爪をクロスさせてそれを防ぐ。
片腕の空いているフォルテはすかさずHK45を撃とうとするがベルゼが両腕で村正改ごとフォルテを払いのけて態勢を崩させる。銃声が響いたがベルゼには命中しなかった。態勢を立て直す前に間髪入れずに右後ろ廻し蹴りをベルゼは繰り出したがフォルテは頭を振ってそれを躱した。
「コッチだッ!」
空ぶったはずのベルゼの右後ろ廻し蹴りが運動のベクトルを変えたかのようにフォルテの顔面に直撃した。
「グッ!!」
「フォルテッ!」
なんて蹴りなの……!?
空ぶった右後ろ廻し蹴りが地面に着く前に、右の上段蹴りに運動方向を変えたのだ。
どんなにすごい体幹を持っていてもあんな蹴りできる人間はいない。
そう思ってベルゼを見ると右足の足元にさっきの鉄柱が倒れていた。
紫電の瞳を使って空ぶった攻撃を途中で中断してから、鉄柱の反発を利用して別の攻撃にスイッチしたというの……!?
強いッ…!
このベルゼ・ラングと言う男の戦闘センスはやはり侮れないとアタシは思ってしまう。
だが、対するフォルテも負けていない。
左の顔面に重い一撃をもらったフォルテは身体を大きく右側に傾けてベルゼに背を向けるような状態になった。その勢いを殺さずにベルゼと同じ右後ろ廻し蹴りをヤツの右の側頭部に叩き込んだ。
「がはッ!?」
そのままベルゼは吹き飛ばされて地面を転がっていく。
3m程吹き飛ばされたところで勢いの止まったベルゼは、その場でふらふらと大股で立ち上がってフォルテの方を向いた。
「はぁ…はぁ…しぶとい…」
「はぁ…はぁ…クソが…」
二人は睨み合い、荒れた呼吸を整えながらそう呟いた。
玉のような汗を額から流しながら、フォルテはそれを無造作に左腕で払った。
その時、フォルテは自分が握っていたHK45がスライドオープンしていたことにそこでようやく気づいてマガジンを交換しようとしたが腰を一瞬触った後に直ぐにそれを止めた。どうやら弾切れしたらしい。仕方なくフォルテはスライドリリースレバーを解除してスライドを戻してから銃をレッグホルスターに戻してから留め具を外した。ガコンッ!と音を鳴らしながら左の太腿からレッグホルスターを外したフォルテは村正改を納刀してから構えた。
さっきベルゼの超高速移動による攻撃を防いだ、あの居合の構えだ。
それに呼応するようにベルゼも両腕の鉤爪をボクサーのファイティングポーズのように胸の前で構えた。
動きや隙を伺っているのでしょう、二人は構えたまま互いを睨みつけて動かない。
さっきまで喧騒に包まれていた廃工場が嘘のように空気が一気に静まり返った。
多分フォルテもベルゼも限界に近い、おそらく互いに最後の一撃にかける気なんだ。
アタシは緊張した空気に思わず唾を飲み込んだ。
ごくりと言う音が二人にも聞こえるんじゃないかと思うくらい大きく聞こえたアタシは、さっきの砂埃が混じったざらざらとした唾が喉にこびりついて咳き込んでしまいそうになった。
ベルゼが右腕の鉤爪を突き出した。
「ッ!!」
さっきの飛び回るような小細工なしの一閃をフォルテはサイドステップで左側に避けた…のだと思う。というのもアタシから見てフォルテが左側に体重を傾けた瞬間、足を踏み出すことなくスライドしたかのように身体がそこに移動していたのだ。
速すぎて見えなかった…?
抜き足のような特殊な歩行法とも違う……何と表現したらいいのかしら…?さっきのフォルテの説明ではアタシは正直その悪魔の紅い瞳と蒼き月の瞳の違いがあまり分からなかったが、今のを見る限りでは要は紅い眼は肉体、つまりは身体能力向上で、さっきのフォルテは攻撃も防御も力強いが動きが「重い」という印象だった。それに対して今はその力強さと合わせて速さが追加されたような感じだった。
さっきは重たい武器をただ振り回しているだけだったが、今はそれに耐えれるだけの補助器具を身体に取り付けたようなところかしら…?
ふと、アタシは探している雷神トールの神器の一つである「ミョルニル」と少し似ているなと思った。
「ミョルニル」は雷神トールの唯一の武器である「打ち砕くもの」の名を冠する世界最強のハンマーである。だが、世界最強と謳われているハンマーにも欠点はあって、それは重さとは裏腹に持ち手の柄が短すぎるのだ。理由はこのハンマーの製作者である「ブロック」と「シンドリ」という侏儒、つまり小人の兄弟に、製作を依頼した「ロキ」と言う悪戯好きの神が二人を邪魔したことによってそうなってしまったらしい。それによってこの「ミョルニル」は二つの神器が無ければ扱うことができないものとなってしまった。それが「ヤールングレイプル」という鉄の籠手とベルゼが電話で所持していると言ったいた「メギンギョルズ」という力を倍増させる帯だ。
フォルテの場合は使えなくはないが、悪魔の紅い瞳だけでは身体の負担が掛かりすぎてしまう。それを蒼き月の瞳で軽減しているのは何となく分かったけど、魔眼を使うために魔眼を使う。本当にフォルテの身体の負担が軽減されているのかしら……?
アタシは心のどこかで言い知れぬ不安が募っていくのを感じた。
「そらッ!!」
攻撃を躱されたベルゼは空中で一回転しながら地面に着地すると、逃げたフォルテ目掛けて左腕の鉤爪を無造作に突き出した。
フォルテはその攻撃を軽く村正改で弾き返した。
ベルゼの左腕が高く跳ね上げられる。
「はぁッ!!」
フォルテは腹部を狙った刺突を繰り出した。
「おっとッ!」
ベルゼはそれを左の腰を引くようにしてぎりぎりのところで躱した。赤いTシャツが再び切り裂かれてボロボロになった姿は、ダメージジーンズならぬダメージTシャツみたいになっていた。
そんなことお構いなしなベルゼは腰を引いた勢いを乗せて弾かれた左腕の鉤爪を回転しながら水平に振るった。
「ッ!!」
咄嗟にフォルテは頭を下げた。
フォルテの首のあった位置をベルゼの鉤爪を通過していく。
それを見たベルゼが口角を吊り上げたのをアタシは見逃さなかった。
「かかったなッ!」
ベルゼが高らかにそう言いながら繰り出したのは右足のローキックだった。
ただのローキックなら良かったのだけど、あれはまずい…!
左腕の鉤爪の下に顔を下げたフォルテはあの攻撃を確認することができない。
しかも下げた頭の位置に数瞬で当たるように調整された角度とタイミングだ。
アタシは少し離れた位置から二人が見えるから攻防の全容が見て取れるけど、フォルテの位置からでは確認できないその一撃が顔面目掛けて振り払われようとしている。
直撃。
鋭い右足の蹴りがフォルテに命中した……ように見えたが寸でのところで左腕を顔の横にねじ込んだフォルテはそれを防いでいた。
バンッ!!
「おッ!?」
ベルゼのローキックを弾き飛ばしながらフォルテがHK45を一発撃ったのだ。
銃弾がベルゼの顔面を襲う。驚きの声を上げながらも辛うじてそれを首を捻って躱された。
だが、思わぬ反撃で態勢を崩したベルゼをフォルテは逃がさない。
躱されたベルゼの首や心臓目掛けて村正改の連撃を浴びせる。
「クッ!?このッ…!」
ベルゼは何とかフォルテの連撃を防いではいたが、そのせいで後ろに乗った体重を前に乗せることができずに斬撃を防ぎながらもどんどん後ずさりしていく。その数計11連撃。
ダン…!
「クッ!?チクショウッ!!」
後ずさりしていったベルゼは鉄柱に背中をぶつけて背後に逃げれなくなったことに気が付いて悪態をついた瞬間、12連撃目のフォルテの斬撃がベルゼの首付近に繰り出された。
ベルゼは身体を傾けてその斬撃を躱したが。
キーンッ!!ガシャーンッ!!
ベルゼの背後にあった鉄柱が斜めに切り裂かれ、そのまま滑り落ちた上部の鉄柱が地面に落下して倒れた。
激しい音を響かせながら倒れた鉄柱が地面の砂埃を巻き上げ、アタシの顔や金髪に細かい砂が舞い落ちた。
ウソでしょ…
電柱の太さほどある鉄製の柱をまるで大根でも切るぐらいの感覚で真っ二つにしたフォルテに、アタシは両腕が塞がれ顔にかかった砂が払えないのでブルブルと振りながらもその光景に驚愕した。
廃工場内に舞い上がった砂埃の中でも互いの獲物同士がぶつかる金属音は途絶えない。
もはや常人の域から遥かに逸脱した二人の戦闘を前にアタシは開いた口が塞がらなかった。
一回二回ではない、数十回の金属音の後にようやく砂埃が収まっていき、アタシは二人を視認できた。
「はぁッ!」
「おらッ!」
フォルテが村正改を振るいベルゼが両腕の鉤爪をクロスさせてそれを防ぐ。
片腕の空いているフォルテはすかさずHK45を撃とうとするがベルゼが両腕で村正改ごとフォルテを払いのけて態勢を崩させる。銃声が響いたがベルゼには命中しなかった。態勢を立て直す前に間髪入れずに右後ろ廻し蹴りをベルゼは繰り出したがフォルテは頭を振ってそれを躱した。
「コッチだッ!」
空ぶったはずのベルゼの右後ろ廻し蹴りが運動のベクトルを変えたかのようにフォルテの顔面に直撃した。
「グッ!!」
「フォルテッ!」
なんて蹴りなの……!?
空ぶった右後ろ廻し蹴りが地面に着く前に、右の上段蹴りに運動方向を変えたのだ。
どんなにすごい体幹を持っていてもあんな蹴りできる人間はいない。
そう思ってベルゼを見ると右足の足元にさっきの鉄柱が倒れていた。
紫電の瞳を使って空ぶった攻撃を途中で中断してから、鉄柱の反発を利用して別の攻撃にスイッチしたというの……!?
強いッ…!
このベルゼ・ラングと言う男の戦闘センスはやはり侮れないとアタシは思ってしまう。
だが、対するフォルテも負けていない。
左の顔面に重い一撃をもらったフォルテは身体を大きく右側に傾けてベルゼに背を向けるような状態になった。その勢いを殺さずにベルゼと同じ右後ろ廻し蹴りをヤツの右の側頭部に叩き込んだ。
「がはッ!?」
そのままベルゼは吹き飛ばされて地面を転がっていく。
3m程吹き飛ばされたところで勢いの止まったベルゼは、その場でふらふらと大股で立ち上がってフォルテの方を向いた。
「はぁ…はぁ…しぶとい…」
「はぁ…はぁ…クソが…」
二人は睨み合い、荒れた呼吸を整えながらそう呟いた。
玉のような汗を額から流しながら、フォルテはそれを無造作に左腕で払った。
その時、フォルテは自分が握っていたHK45がスライドオープンしていたことにそこでようやく気づいてマガジンを交換しようとしたが腰を一瞬触った後に直ぐにそれを止めた。どうやら弾切れしたらしい。仕方なくフォルテはスライドリリースレバーを解除してスライドを戻してから銃をレッグホルスターに戻してから留め具を外した。ガコンッ!と音を鳴らしながら左の太腿からレッグホルスターを外したフォルテは村正改を納刀してから構えた。
さっきベルゼの超高速移動による攻撃を防いだ、あの居合の構えだ。
それに呼応するようにベルゼも両腕の鉤爪をボクサーのファイティングポーズのように胸の前で構えた。
動きや隙を伺っているのでしょう、二人は構えたまま互いを睨みつけて動かない。
さっきまで喧騒に包まれていた廃工場が嘘のように空気が一気に静まり返った。
多分フォルテもベルゼも限界に近い、おそらく互いに最後の一撃にかける気なんだ。
アタシは緊張した空気に思わず唾を飲み込んだ。
ごくりと言う音が二人にも聞こえるんじゃないかと思うくらい大きく聞こえたアタシは、さっきの砂埃が混じったざらざらとした唾が喉にこびりついて咳き込んでしまいそうになった。
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