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揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》
揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》32
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スミソニアン学術協会は全部で19もの博物館と研究機関の集合体だ。そのうちの一つが今私がいるこのスミソニアン博物館で、ここの地下で例の神器、雷神トールのヤールングレイプルを研究させていた。その建物の一階に入った私は両手でベネリM4ショットガンを持ち、辺りを警戒しながらゆっくりと進んでいた。
ジェイクには待てと言われたが、今は電話も無線も電源を切っているのでその声は聞こえてこない。
その代わりにもう一人の自分自身であるロナから脳内で私に色々言ってきている。
いや、言っているような感覚がするというのが正しい表現かな?
というのも私ことロアともう一人の人格であるロナは記憶こそ共有できるが、直接会話することができない。
それでも、互いに何を考えているかは何となく分かる。
仲のいい友人や恋人の考えが分かるっていう表現に近いのかもしれない。
まあロアである私はアイツと違って仲間を作るのが得意じゃねーし、恋人もいないからホントにそれであっているのかはよく分かってないんだけどな。
博物館内部、宇宙船や戦闘機が天井から吊るされ、床にはアメ車で淡いクリーム色をしたキャデラックのオープンカーや、真っ赤なシボレーコルベットなどが飾られた広い空間、そのサッカー場くらいはありそうな大きなな展示室の明かりは消えていたが、その代わりに部屋の奥の天井から木漏れ日のような小さな火が宇宙船や戦闘機を薄暗く照らしていた。パチパチと音を立てながら小さく燃えていた天井の方から、ほのかに物が焼ける焦げ臭い空気を漂わせ、私自身は実際に見たことなかったが、吊るされた戦闘機、かつて太平洋戦争時、日本の都市を焼き尽くしたとされるそのB‐29が当時飛んでいた時代にタイムスリップしたのではないかという錯覚さえ起こしてしまいそうな光景だった。
「どうやら爆破されたのは上の職員用のオフィスの方らしいな……」
私は火の位置を見てそう分析してから部屋の奥、地下室の研究所及び展示品の金庫の方に向かっていく。
その度にもう一人の私が脳内で叫んでいるような感覚に襲われる。
────それ以上先に行くな────応援を待て────早くロナに身体の指揮権を返せ────!
「うるさい、折角楽しめそうなのに邪魔するんじゃねーよ」
軽く頭痛を起こしそうになった私はそう呟いてから、脳内を襲うその感覚を無理矢理無視しようとする。
私たちの人格は基本的に表に出ている方に全て決定権があり、もちろんそれは人格を切り替えるかどうかも含まれている。普段の私は表のロナによって抑えつけられているため、なかなか出てくることができない。腐ってもアイツは一応特殊部隊に所属していただけあってそこそこ戦闘力があるが、それでも勝てない相手を前にした時や、めんどくさい時などは今の私、ロナよりも知力が低く戦闘能力の高い私を頼ってくる。人格さえ入れ替わってしまえばこっちのもの……と言いたいところだが実際はそうでもなく、ロナによって作られた私は人格を切り替えたくなくても、一度気絶してしまうと本来の人格であるロナに戻ってしまうため、戦闘後に言うことを聞かないと、昨日のジェイクのようにキツイ一撃をお見舞いされてしまい、元の人格を戻されてしまうのだ。
ただし例外として、人格の切り変える方法はもう一つだけ存在する。
それがさっきあった自分の身に大きな危険を感じた時は人格が無意識に切り替わることがある。
銃やナイフを突きつけられれば戦闘能力を考慮してロナからロアへ、30秒以内に爆弾を解除しなければならない場面などで頭を使う必要があるときは、ロアからロナへと無意識に変わることがある。
何でそうなのかは詳しく理解できていなかったが、要は野生の本能みたいなものらしい……と前にロナがジェイクと話していた記憶がある。
とにかくそのおかげで人格の入れ替わった私の周りには今、ジェイクやフォルテのような監視役がいない。ということは今の私を止めることのできる人物はいないということだ。
────心が躍らない方が無理な話しだ。
まるで両親が遠くに出かけている間に、家で好き放題できる子供のような気分で私は博物館の一番奥の階段を下っていく。
ミサイル警報や爆発で電力が非常電源に切り替わっているらしく、青白い非常灯で照らされた地下の階段を私が降りていく。そうするにつれて焦げ臭い空気にだんだん嗅ぎなれた血の臭いが混じってくる。
────いる────この奥に私と同類の臭い────獣のような臭いが漂ってくる────
「ううううッ!!!!」
「────ッ!?」
階段の下の地下の方から男の悲鳴のような声が聞こえてきて、驚いた私は反射的にベネリM4を構えたが特になにも起こらなかった。
今の声は聞いたことがある。確かここに配置していたうちのCIA職員の一人だ……
仲間の悲鳴を聞いた私は、別の意味で走り出してしまいそうになった気持ちを何とか抑えながら、慎重に……あくまで慎重に進んでいく。
逸る気持ちを抑えながら階段を折り切って狭い通路に出る、その一番奥にある大きな円形状の電子ロック式の金庫室の扉が開いていることに私は気づいた。
どうやらその臭いは金庫の方からするらしい……
本来だったらこの狭い通路にも赤外線トラップなどが仕掛けてあるが、非常電源に切り替わっている今、罠が作動する心配をする必要はない。
恐らく全ての防犯対策が死んでいるだろう。
金庫室の扉の前に立った私は、金庫室の中に向けてベネリM4を構えてから静かに呟いた。
「動くな……」
金庫の内部、六畳ほどの部屋の壁際に多数の金庫が並ぶ中、その中央に猿ぐつわを付けられ、椅子に縛り付けられた状態で藻掻くCIA職員に対し、それを見下ろすようにして佇んでいた一人の黒髪の女に私は銃口を向けた。
黒髪のショートボブの毛先を外にはね、場違いな黒いドレスにコンバットブーツを履いたその女は、一瞬だけピクリッと身体が動いたように感じたが、何も言わずに私に背を向けたままゆっくりと両手を上げた。
パンッ!
「ウッ……!」
私は両手を上げたその黒髪の女の綺麗な白い足に向けてショットガンを一発、容赦なく放った。
女は苦しいそうな呻き声を上げながら片膝を着く。しかし、真っ白く艶めかしいその右足に綺麗な赤い花が咲くことは無かった。
というのも今私が撃った弾丸は12ゲージやスラッグ弾ではなく、昨日使ったショットガン用のゴム弾だ。
貫通こそしないが、その威力は御覧の通り動きを鈍くさせるには持ってこいの代物だ。
「いいか?次は12ゲージ弾だ。それが嫌だったらはっきり答えろ……お前どこの誰で?ここで何をしていた?」
痛みでその場にしゃがみ込んだ黒髪女の背中に銃口をガシッガシッと小突きながら英語でそう聞いたが、痛みで喋れないのか?それともだんまりなのか?分からないが何秒待っても喋る気配がないので、私はため息混じりに次弾を手動で装填してからショットガンを構え────
「動くな……」
「ッ!?」
右の側頭部からそう声を掛けられた私は、ショットガンを構えようとしていた動きが止まる。
いつの間に────!
一瞬、ほんの刹那視線を逸らした私の真横の位置に移動していたその黒髪女が、右手に持った黒い銃の先を私の側頭部に向けてそう言ってきた。
前方で倒れていた女の姿は既に影も形もなかった。
油断して警戒を解いていたわけではない、獲物を前に興奮していたわけでもない。
それなのにも関わらず、私が察知できないくらいのスピードでコイツは移動していたのだ。
動いていた気配も感じなかった。瞬間移動とでも言わなければ説明がつかないレベルだ……!
バンッ!!
「ッ……!」
痛ってぇ……
激痛が走り、私は顔を歪めた。
意趣返しのつもりか私の撃った場所と同じ右足に向かってその黒髪女は容赦なくその銃……銃声から察するに恐らくベルギー製拳銃、FNブローニング・ハイパワーの9㎜パラベラム弾を撃ちやがった。
幸い、いつも履いている白いニーソックスは防弾性なので貫通こそしなかったが、それでもこんな至近距離で撃たれれば流石に痛い。
「ウッ……!」
痛みにグラついた私の身体を、黒髪女は銃を持つ手とは反対の左手で銀のツインテールの片方を掴み上げ、倒れることを許さない。
その時初めてその女のことを正面から見た。
身長は私やセイナよりも少し高くフォルテよりも小さい160㎝くらいで、胸はEカップの私より小さく、セイナのBカップよりは大きいⅮカップくらいだ。
体型も黒いドレスが良く似合いシュッとしていて、足も細長くスラッとしていた。所謂モデル体型とでも言ったところか。顔は各パーツが繊細で美しく。象牙色の肌と合わせてその姿はまるで日本の大和撫子のような風貌の女だった。
東洋系……日本人か……?
確かフォルテが前にケンブリッジ大学で戦ったと言っていた人物と特徴が似ている気がする……
「全く……いきなり撃つとはご挨拶だな……」
私がその黒髪女を睨みつけながらそんなことを考えていると、流暢な英語で東洋人の女はそうしゃべりかけてきた。
「これがアメリカ流の挨拶だ。いい勉強になったな?」
へッ!とわざと屈託ない笑顔を作ってそう返してやると、黒髪女は私の頭に銃口を押し付けながらこう告げてきた。
「じゃあ日本流の挨拶も教えてやらないとな……」
そう言って私の頭に向けて銃口を引こうとする。
かなりマズイ状況だが、良いことを知れた。
少なからず今の言動を聞く限り、やっぱりこの女は東洋人。その中でも日本人なのだろう。
私たちの横でCIAの職員の男が「やめろ!」とでも言っているのかじたばたしている音が聞こえてくる。
普通の人が見ればヤバい状況かもしれないが、私はそれに臆することなくこう告げた。
「そんな壊れた銃で弾撃つと暴発するぞ?」
指ぬきグローブをはめた右手をクイッと中指と薬指だけを動かす。
シュ────!
「ッ……!?」
空気を切り裂く風切り音のあと、私に向けていた黒髪女の銃口が引き金から先で真っ二つに分かれた。
その超常現象に一瞬だけその黒髪女は動揺を見せた。
「はぁッ!!」
私はその一瞬の隙にICコートから一本のクナイ式ナイフを取り出して身体目掛けて突き出した。
「……チッ!」
黒髪女はたまらず距離を取って金庫の外に飛び出す。
そのまま狭い通路を走って上の階に逃げようとしていた。
逃がすか────!
私は縛られた職員に一本のナイフを渡してから逃げた黒髪女を追うため、同じように走り出していた。
ジェイクには待てと言われたが、今は電話も無線も電源を切っているのでその声は聞こえてこない。
その代わりにもう一人の自分自身であるロナから脳内で私に色々言ってきている。
いや、言っているような感覚がするというのが正しい表現かな?
というのも私ことロアともう一人の人格であるロナは記憶こそ共有できるが、直接会話することができない。
それでも、互いに何を考えているかは何となく分かる。
仲のいい友人や恋人の考えが分かるっていう表現に近いのかもしれない。
まあロアである私はアイツと違って仲間を作るのが得意じゃねーし、恋人もいないからホントにそれであっているのかはよく分かってないんだけどな。
博物館内部、宇宙船や戦闘機が天井から吊るされ、床にはアメ車で淡いクリーム色をしたキャデラックのオープンカーや、真っ赤なシボレーコルベットなどが飾られた広い空間、そのサッカー場くらいはありそうな大きなな展示室の明かりは消えていたが、その代わりに部屋の奥の天井から木漏れ日のような小さな火が宇宙船や戦闘機を薄暗く照らしていた。パチパチと音を立てながら小さく燃えていた天井の方から、ほのかに物が焼ける焦げ臭い空気を漂わせ、私自身は実際に見たことなかったが、吊るされた戦闘機、かつて太平洋戦争時、日本の都市を焼き尽くしたとされるそのB‐29が当時飛んでいた時代にタイムスリップしたのではないかという錯覚さえ起こしてしまいそうな光景だった。
「どうやら爆破されたのは上の職員用のオフィスの方らしいな……」
私は火の位置を見てそう分析してから部屋の奥、地下室の研究所及び展示品の金庫の方に向かっていく。
その度にもう一人の私が脳内で叫んでいるような感覚に襲われる。
────それ以上先に行くな────応援を待て────早くロナに身体の指揮権を返せ────!
「うるさい、折角楽しめそうなのに邪魔するんじゃねーよ」
軽く頭痛を起こしそうになった私はそう呟いてから、脳内を襲うその感覚を無理矢理無視しようとする。
私たちの人格は基本的に表に出ている方に全て決定権があり、もちろんそれは人格を切り替えるかどうかも含まれている。普段の私は表のロナによって抑えつけられているため、なかなか出てくることができない。腐ってもアイツは一応特殊部隊に所属していただけあってそこそこ戦闘力があるが、それでも勝てない相手を前にした時や、めんどくさい時などは今の私、ロナよりも知力が低く戦闘能力の高い私を頼ってくる。人格さえ入れ替わってしまえばこっちのもの……と言いたいところだが実際はそうでもなく、ロナによって作られた私は人格を切り替えたくなくても、一度気絶してしまうと本来の人格であるロナに戻ってしまうため、戦闘後に言うことを聞かないと、昨日のジェイクのようにキツイ一撃をお見舞いされてしまい、元の人格を戻されてしまうのだ。
ただし例外として、人格の切り変える方法はもう一つだけ存在する。
それがさっきあった自分の身に大きな危険を感じた時は人格が無意識に切り替わることがある。
銃やナイフを突きつけられれば戦闘能力を考慮してロナからロアへ、30秒以内に爆弾を解除しなければならない場面などで頭を使う必要があるときは、ロアからロナへと無意識に変わることがある。
何でそうなのかは詳しく理解できていなかったが、要は野生の本能みたいなものらしい……と前にロナがジェイクと話していた記憶がある。
とにかくそのおかげで人格の入れ替わった私の周りには今、ジェイクやフォルテのような監視役がいない。ということは今の私を止めることのできる人物はいないということだ。
────心が躍らない方が無理な話しだ。
まるで両親が遠くに出かけている間に、家で好き放題できる子供のような気分で私は博物館の一番奥の階段を下っていく。
ミサイル警報や爆発で電力が非常電源に切り替わっているらしく、青白い非常灯で照らされた地下の階段を私が降りていく。そうするにつれて焦げ臭い空気にだんだん嗅ぎなれた血の臭いが混じってくる。
────いる────この奥に私と同類の臭い────獣のような臭いが漂ってくる────
「ううううッ!!!!」
「────ッ!?」
階段の下の地下の方から男の悲鳴のような声が聞こえてきて、驚いた私は反射的にベネリM4を構えたが特になにも起こらなかった。
今の声は聞いたことがある。確かここに配置していたうちのCIA職員の一人だ……
仲間の悲鳴を聞いた私は、別の意味で走り出してしまいそうになった気持ちを何とか抑えながら、慎重に……あくまで慎重に進んでいく。
逸る気持ちを抑えながら階段を折り切って狭い通路に出る、その一番奥にある大きな円形状の電子ロック式の金庫室の扉が開いていることに私は気づいた。
どうやらその臭いは金庫の方からするらしい……
本来だったらこの狭い通路にも赤外線トラップなどが仕掛けてあるが、非常電源に切り替わっている今、罠が作動する心配をする必要はない。
恐らく全ての防犯対策が死んでいるだろう。
金庫室の扉の前に立った私は、金庫室の中に向けてベネリM4を構えてから静かに呟いた。
「動くな……」
金庫の内部、六畳ほどの部屋の壁際に多数の金庫が並ぶ中、その中央に猿ぐつわを付けられ、椅子に縛り付けられた状態で藻掻くCIA職員に対し、それを見下ろすようにして佇んでいた一人の黒髪の女に私は銃口を向けた。
黒髪のショートボブの毛先を外にはね、場違いな黒いドレスにコンバットブーツを履いたその女は、一瞬だけピクリッと身体が動いたように感じたが、何も言わずに私に背を向けたままゆっくりと両手を上げた。
パンッ!
「ウッ……!」
私は両手を上げたその黒髪の女の綺麗な白い足に向けてショットガンを一発、容赦なく放った。
女は苦しいそうな呻き声を上げながら片膝を着く。しかし、真っ白く艶めかしいその右足に綺麗な赤い花が咲くことは無かった。
というのも今私が撃った弾丸は12ゲージやスラッグ弾ではなく、昨日使ったショットガン用のゴム弾だ。
貫通こそしないが、その威力は御覧の通り動きを鈍くさせるには持ってこいの代物だ。
「いいか?次は12ゲージ弾だ。それが嫌だったらはっきり答えろ……お前どこの誰で?ここで何をしていた?」
痛みでその場にしゃがみ込んだ黒髪女の背中に銃口をガシッガシッと小突きながら英語でそう聞いたが、痛みで喋れないのか?それともだんまりなのか?分からないが何秒待っても喋る気配がないので、私はため息混じりに次弾を手動で装填してからショットガンを構え────
「動くな……」
「ッ!?」
右の側頭部からそう声を掛けられた私は、ショットガンを構えようとしていた動きが止まる。
いつの間に────!
一瞬、ほんの刹那視線を逸らした私の真横の位置に移動していたその黒髪女が、右手に持った黒い銃の先を私の側頭部に向けてそう言ってきた。
前方で倒れていた女の姿は既に影も形もなかった。
油断して警戒を解いていたわけではない、獲物を前に興奮していたわけでもない。
それなのにも関わらず、私が察知できないくらいのスピードでコイツは移動していたのだ。
動いていた気配も感じなかった。瞬間移動とでも言わなければ説明がつかないレベルだ……!
バンッ!!
「ッ……!」
痛ってぇ……
激痛が走り、私は顔を歪めた。
意趣返しのつもりか私の撃った場所と同じ右足に向かってその黒髪女は容赦なくその銃……銃声から察するに恐らくベルギー製拳銃、FNブローニング・ハイパワーの9㎜パラベラム弾を撃ちやがった。
幸い、いつも履いている白いニーソックスは防弾性なので貫通こそしなかったが、それでもこんな至近距離で撃たれれば流石に痛い。
「ウッ……!」
痛みにグラついた私の身体を、黒髪女は銃を持つ手とは反対の左手で銀のツインテールの片方を掴み上げ、倒れることを許さない。
その時初めてその女のことを正面から見た。
身長は私やセイナよりも少し高くフォルテよりも小さい160㎝くらいで、胸はEカップの私より小さく、セイナのBカップよりは大きいⅮカップくらいだ。
体型も黒いドレスが良く似合いシュッとしていて、足も細長くスラッとしていた。所謂モデル体型とでも言ったところか。顔は各パーツが繊細で美しく。象牙色の肌と合わせてその姿はまるで日本の大和撫子のような風貌の女だった。
東洋系……日本人か……?
確かフォルテが前にケンブリッジ大学で戦ったと言っていた人物と特徴が似ている気がする……
「全く……いきなり撃つとはご挨拶だな……」
私がその黒髪女を睨みつけながらそんなことを考えていると、流暢な英語で東洋人の女はそうしゃべりかけてきた。
「これがアメリカ流の挨拶だ。いい勉強になったな?」
へッ!とわざと屈託ない笑顔を作ってそう返してやると、黒髪女は私の頭に銃口を押し付けながらこう告げてきた。
「じゃあ日本流の挨拶も教えてやらないとな……」
そう言って私の頭に向けて銃口を引こうとする。
かなりマズイ状況だが、良いことを知れた。
少なからず今の言動を聞く限り、やっぱりこの女は東洋人。その中でも日本人なのだろう。
私たちの横でCIAの職員の男が「やめろ!」とでも言っているのかじたばたしている音が聞こえてくる。
普通の人が見ればヤバい状況かもしれないが、私はそれに臆することなくこう告げた。
「そんな壊れた銃で弾撃つと暴発するぞ?」
指ぬきグローブをはめた右手をクイッと中指と薬指だけを動かす。
シュ────!
「ッ……!?」
空気を切り裂く風切り音のあと、私に向けていた黒髪女の銃口が引き金から先で真っ二つに分かれた。
その超常現象に一瞬だけその黒髪女は動揺を見せた。
「はぁッ!!」
私はその一瞬の隙にICコートから一本のクナイ式ナイフを取り出して身体目掛けて突き出した。
「……チッ!」
黒髪女はたまらず距離を取って金庫の外に飛び出す。
そのまま狭い通路を走って上の階に逃げようとしていた。
逃がすか────!
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