SEVEN TRIGGER

匿名BB

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揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》

揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》34

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「クソッ!」
 牧師パスターに正面からタックルされ、地面に仰向けに倒された俺は、その拘束から逃れようと必死に藻掻いた。
 二人の男が取っ組み合いをしているような様に、周りにいた人たちは状況を読み込めず、困惑した表情で見下ろしていた。
「離れろッ!!これは爆弾だッ!!急いで離れろッ!!」
 俺がそう叫ぶと、周りにいた一般人は一瞬躊躇を見せた後に悲鳴を上げて逃げていった。
 そうしている間にも、目の前の白いケースに入っている時限式C4爆弾が一秒、また一秒と時間を刻んでいる。

 残り20秒

 牧師パスターは右足首を撃ち抜かれているのにも関わらず、プレス機で挟んでいるかのような猛烈な力で俺の両腕両足を抑え込んできている。
 背中や腰の辺りが牧師パスターの足から流れ出た血でベチャベチャと生暖かい嫌な感触が伝わってくる。やはり操れているのか、自分ごと俺のを道連れにしようとしている牧師パスターからは恐怖のようなものは一切感じない。
 やっていることがタチが悪すぎる────
 仲間を操って爆破テロをやらせるというあまりにも非道な行為を前に、俺は必死に腕や足を動かそうとするが拘束から抜けることができない。
 プロのレスリングや柔道の選手と同じで、一度完璧に拘束が決まってしまうと力や技術力に大きな差がない限り逃れることは難しい。さらに実際の試合と違い牧師パスターは俺の意識を落とす必要がない。数十秒ここで耐えるだけでいい。首を絞める必要が無い分、他の部位の拘束に腕や足を使うことができるのため、通常よりも逃れることは難しい。
 それどころか────
「……うッ……!」
 腕と腰、牧師パスターの腕と足が絡みついている部分に鈍い痛みが走り、俺は顔を歪めた。
 耳に自分の骨がミシミシと軋むような音が聞こえてくる。
 これは……拘束とかそれどころの話しどころじゃない。腕ごと背骨を鯖折りするくらいの勢いで締め上げてきている。
 ────このままじゃマジでヤバい……
 俺は何か近くに使えるものがないか顔を動かした。
 HK45ハンドガンは俺から少し離れた位置、義手の左腕から2m程離れた位置に落ちていた。あれは多分取れないだろう……
 小太刀の村正改は腰の鞘に収まっている。
 ────まだこっちの方が手が届く!
「フッ……!くぅ……!」
 俺は悪魔の紅い瞳レッドデーモンアイを発動させ、5倍の力で小太刀の柄を右手で掴み抜刀しようとする。

 残り15秒

「……クッ……!フッ……!」
 幾ら力が強靭とはいえ、流石に5倍の力には勝てないのか、少しずつ……ホントに少しずつ鞘から刃が引き抜かれていく。
 だがそれでは間に合わない────
 このスピードでは、刀を抜くころにはおそらく俺は牧師パスターと一緒に月旅行をする羽目になる。
 一瞬だけ、もしホントに月に行ったら俺の左眼の蒼き月の瞳ブルームーンアイはどんな反応を起こすのか気になったが、今はそんなこと考えている場合じゃないとコンマ数秒で思考を切り替える。
 意識を両腕にだけに集中させ、悪魔の紅い瞳レッドデーモンアイの力を6倍、7倍、8倍とだんだん高めていくにつれて鞘から刃が抜けるスピードが速くなっていく。
 ────あと少し……!
 刃渡り23.3㎝の村正改がその刀身を照り付ける太陽の光でギラギラと輝かせ、今にも鞘から抜けそうになるのを牧師パスターは必死に抑え込んでくる。
 こんなことなら村正改を作った時にもっと短くしとけばよかったぜッ……!
 力をさらに込めていき、9倍、そして普段の自分が出しても問題のない10倍まで力を引き上げたところでようやく────

 ────シュッ!
 抜けたッ!!
 抜刀できた村正改を俺は牧師パスターの背中に突き立てようとした。
 だが、それが良くなかった。
 抜刀できたことと、俺を急かすようなピッピッとタイマーの音が断続的に聞こえてきていたのが悪かった。
「ッ!?」
 俺が右腕で小太刀を振りかぶった瞬間を見計らって、牧師パスターが右腕の拘束を解いた。
 そして、俺の右腕の下から再び手を回るようにして拘束し直してきた。
 肩固め……かッ……
 俺の右腕は万歳するかのように上部に持ち上げられ、さらに意識を刈り取ろうと締め上げてきている。
 ここまでがっつり技が決まってしまうと最早抜け出すことは不可能だった。
 ────い、意識が……
 集中力が途切れ、魔眼の力が解除される。
 視界もだんだんと暗くなっていく。

 残り10秒

「……ぁ……ぅ……」
 苦しい……このままだと爆発の前に意識を持っていかれちまう……
 何か……何か他にないのか……
 その時ふと、さっき見た銃、HK45が目に留まった。
 拘束が切り替わったことで左腕が多少自由になり、HK45の方に手を伸ばせるようにはなった……が、それでも2mは離れている。
 手を伸ばすも無情にも腕の長さを除いた1m程の距離が縮まることはない。
 とど……かない……
 そう思って伸ばした手の力が抜けそうになった時、義手……自分が作ったのではなく、ロナに作ってもらった義手を装着していることを思い出した。
 一か八か……
 勝負は一発、ミスったらもう打つ手はない。
 狭まる視界の中、俺はHK45を見ながら左腕の角度を調整した。
 そして、義手に内蔵された動きを読み取る装置、ブレインコミュニケーターにこう指示を出した。
 伸びろッ……!
 普通の腕では絶対に出さないであろう命令を俺が下した瞬間、

 ────プンッ!
 内蔵された高圧エアーによって吐き出された左手だけが2m離れたHK45をガシッと掴み、腕と手を繋ぐワイヤーを電動モーターで高速で巻き上げることで銃が手元に戻ってきた。
 ロナの開発した手が伸びる義手。ただ、遠くのものを掴むという動作は普段やらないので、昨日の今日でまだ完璧にはできないが……良かった、なんとか掴むことができた。

 バンッ!!
「うぁぁぁぁッ!!」
 牧師パスターが悲鳴を上げた。
 俺が自分の手元に戻ってきた銃を使って牧師パスターの右太腿を撃ち抜いた。
 鮮血が俺の左腕を濡らし、拘束が甘くなる。
 肺に空気が急激に戻り、クラクラとする意識と咳き込みそうになるのを我慢しながら、牧師パスターを突き飛ばして白いケースに飛びついた。

 残り5秒

 あと5秒しかないッ!

 残り4秒

 クソッ!クソッ!
 どこに、どこに爆弾を持っていけば……!

 3秒

 ええいヤケクソだッ!
 俺は白いケースを閉じて留め具をしてから取っ手を掴んだ。
 右腕のみ意識を集中させ、魔眼レッドデーモンアイを発動。
 力は15倍まで跳ね上げる。

 2秒

「いけぇぇぇぇ!!!!」
 俺は思いっきり左足を踏み込んで、さっき通った線路の真上に向かって白いケースを投擲した。
 ケースはどんどんその距離を伸ばしていき、隣にあった9階建てのNASA本部と同じくらいの高い位置まで飛んでいった。

 1秒

「伏せろぉぉぉぉ!!!!」
 俺は大声で周りの人間に注意喚起しながら、痛みに悶える牧師パスターの襟首を掴んで引きずり、ケースから数センチでも遠くに逃げようと走り、空中にダイブ。地面に伏せてから頭を抱えた。

 0秒

 バァァァァァァァァァン!!!!

 大気を揺らす程の衝撃。
 鼓膜を劈くような爆発音。
 激しい風圧が倒れた背中に襲い掛かる。
 その衝撃は凄まじく、9階建てのNASA本部や他の高層ビルの窓ガラスが何枚か割れ、鋭い雨を降らせていた。

「……」
 無茶苦茶だ。と俺は心の中で呟いた。
 ケースの中身を見た時は、詳しく調べている時間が無くて分からなかったが、どうやらC4爆薬の他に魔術の細工を施してあったらしい。
 ────魔術式爆弾か……
 軍隊でも工事現場でも、そしてテロでも使われている最新式爆弾だ。
 その仕組み自体は様々だが、爆発によって生じた風圧、黒々とした煙の中にオイルのような臭いが混じっているのを感じる辺り、おそらく水系魔術でガソリンか軽油を圧縮させ、小瓶にでも詰め込んでケースの中に仕込んであったのだろう。
 戦車どころか、上手くやればビルすら吹っ飛ばせるくらいの威力だった。
 だが幸いなことに、何百人も殺せる爆弾が爆発したにも関わらず、俺が遠くに投げたおかげで目立った外傷はない。それに他に誰か一般人を巻き込んだ様子も見受けられなかった。ただ……
 ────耳が痛い
 鼓膜は破れてなかったみたいだが、ジンジンと痛む。
 さらにその痛んだ鼓膜を刺激するように、爆発の衝撃で驚いた一般人の悲鳴、窓ガラスなどが落ちる音、車のセキュリティーアラームが鳴り響き、ただでさえパニックだった街がさらにカオスと化す。
 本当にミサイル攻撃が始まったと叫んでいる人も何人かいた。
 そんな中、俺は立ち上がって隣に倒れた牧師パスターを見下ろす。どうやら気絶しているようだ。
 また立ち上がられても困るので、手足を適当に衣類などで縛ってから俺が撃ち抜いた傷の手当をする。

 ────セイナやロナ達は大丈夫だろうか……
 確実に俺を殺そうとしていた牧師パスターの行動を見る限り、やはりこの一連の騒動はあのヨルムンガンドが関与しているといった線で間違いないだろう。
 それに、牧師パスターの動きや表情を見る限り、やっぱり一か月前のケンブリッジ大学のテロリストや突然錯乱した警備員のおじさんの時と挙動が似ていた。
 俺は手当てをしながらスマートフォンを取り出して二人に電話を掛けようとしたが、電源が付かない。
 どうやら牧師パスターと取っ組み合っている時か、地面に飛び込んだ時に壊したらしい。
「クソッ!」
 適当に地面に放り捨てる。
 ここまで最低最悪という言葉でしか表現できない日は久しぶりだ……
 どうしてもこういう時、心が折れそうになる。全て投げ出したくなる。だけど最低最悪ということは、これ以上悪いことは起こらない……はずだッ!
 俺はプラス思考でそう思ってから、これからどうするか考えようとしていると、痛む鼓膜に車のセキュリティーアラームとは別の警報音。聞きなれたサイレンの音が聞こえてきた。
 げぇッ……嘘だろ……?
 俺の思う最低最悪にはどうやらまだ下があったらしい……多分最悪ゲージがゼロからマイナスに突入したのだろう。
 サイレンを鳴らした車数台……いや、数十台が俺を囲むようにして数十m先に止まり、中からぞろぞろと重装備をした屈強な男たちがぞろぞろ降りてきて、一般人が乗り捨てていった車を遮蔽物にしながら近づいてくる。
 間違いない……FBIの連中だ。
 俺一人で今すぐ逃げれば逃げ切れるかもしれない……だがこっちには負傷した牧師パスターがいる。もし爆破テロを牧師パスターがやったと知られれば酷い拷問にかけられて殺されるだろう……
 かと言って俺が連れて行けば幾らか時間は稼げるが、すぐに二人とも射殺されて終わりだろう。
 一難去ってまた一難……どうするか……
「大人しくしろ────大罪人フォルテ!貴様は完全に包囲されている────!我ら長官殿だけでなく、無差別爆破テロとは……覚悟しろ大罪人────!」
 FBIの車の方からスピーカーでそう叫ぶ声が聞こえてきた。
 この中年男の声、確か空港の時に着いた奴だな……
 そう考えると、ここのFBIの隊員は空港の時と同じ連中。俺を撃つことなど何とも思ってない連中だろう……
 ────それなら、一秒でも遠くに……!
 俺は気絶した牧師パスターを抱えて右眼の魔眼に力を込めた。
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