108 / 361
赤き羽毛の復讐者《スリーピングスナイパー》
舞い降りた二つの銀尾3
しおりを挟む
「……」
チーン……!
笑顔でとんでもないサイコパス発言をするロナを前に、俺は絶句。返す言葉が見つからない……
「どうしたの??」
そんな俺の様子など知りもせずに小首を傾げるロナ。
────忘れていた……コイツは自分の欲求のためならどんなことでもするやつだということを……
元々ロナと出会ったのも、生活に必要な金のために悪事を働きまくってたのが原因……昔から、目的のためにはなにふり構わないって感じだからな……一応そのことはS.T時代に教育したはずだったんだが。
────そもそも何故そこまでして俺に固執するのか……?
大して本気でもないだろうダーリンダーリンという言葉をかけて俺をからかい、さっきのハニートラップだってそうだ。普段はそんなことやらないくせに……まるでこっちの反応でも楽しむかのようなその態度に、いったい何の意味があるってんだ?
「……いつからだ?」
「何が?」
「いつから俺のスマートフォンを覗き見してやがったんだ?」
「そんなの、S.T解散後からに決まってるじゃん!」
「……」
りんごは赤い、みたいに……さも当たり前のことのように答えるロナを前に、俺は頭がクラッとして倒れそうになったのをギリギリで踏ん張る。
────た、耐えるんだフォルテ……!この際、出せる膿は全部出しちまったほうがいい……!
普段のセイナから受けている物理的なものと違って別ベクトルでツライその攻撃を前に、俺は大きく息を吸ってから勇気を振り絞って聞く。
「じゃあ、なんで俺がこの港町に住んでいるのか理由を知ってるか?」
「戸籍がなくても住めるからでしょ?ここの市長さん、そういうところ甘くしてくれることで有名みたいだしね。でもフォルテ、検索エンジンで「戸籍が無くても住める町」って打つのは流石に笑っちゃうよ」
「うぐ……こ、珈琲店を営んでいる理由は?」
「昔から珈琲淹れるのが上手かったからそれを生かそうとしたからでしょ?これは正直調べなくてもわかるけど、ああ、店名がBLACK CATなのは、フォルテのことを見た近所の子供に「黒猫みたい」って言われたからなんだっけ?」
あぁ……ずっとハッキングしてるっていうのはマジみたいだな……
俺が誰にも、それこそセイナにもしゃべったことないようなことまで知ってるぞコイツ……
ん……?ちょっと待てよ……
「まさか……セイナの素性を知っていたのは……?」
「もちろん!フォルテのスマートフォンからだよ!」
────女王陛下ごめんなさい。ロナが娘さんの秘密知っているのはそっちの情報管理がなっていないわけではなく、俺に原因があったみたいです。はい。
目元を手で覆い、遠いイギリスで仕事しているであろうエリザベス三世に心の中で謝罪する俺をよそに、ロナは得意げな様子で続ける。
「最初、フォルテのスマートフォンが壊れたことを知って、町の監視カメラとかで動向を探って、で、イギリスに連れ去られたことは分かったから、新しく用意してもらってたスマートフォンを遠隔でハッキングして、そのとき偶然聞いちゃったんだよね!」
────偶然、イギリス王室の秘密を聞くやつがどこにいるんだよ……?主婦の井戸端会議じゃあるまいし……
「大体、なんで俺のスマートフォンをハッキングする必要がある!?」
「趣味」
急に真顔になったロナがそう答えるのを見て、ため息をつく俺。
ため息つきすぎて酸欠になるわ……マジで……
まったく、どんだけ俺のことをからかえば気が済むのか?このアホは……
「分かった、お前がどれだけ俺のことを思っているか、よぉーーーく分かった。確かに今思い返してみれば、ワシントンダレス空港にインビジブルカモフラージュコートやセダンがあんな都合のいい場所に用意してあったのも、あれは俺の動向を知って誰かに用意させたってことだったのか……」
腕を組みながらうんうん頷いていた俺がそういうと、何故かロナが驚いたようにキョトンとし────
「え?動向は確かにスマートフォンで確認してたけど、あれはロナが直接用意したんだよ?」
「────今なんて言った?」
さらに耳を疑うような言葉に俺は、両目のお目々ぱちぱちさせていたロナのほうを向いた。
いや、パチパチさせたいのは俺のほうなんだが……???
「だから、用意したのはロナだって。気づいてなかったの?」
首を傾げたロナに合わせて、俺も同じように首を傾げた。
────これってまさか……さっきとは別でもっとヤバイ話しなのでは?
「お前が用意したって……あの銃撃戦の最中にどうやって?」
「そんなもん、ICコートで姿を隠しながらだよ?」
「でも、そのあと俺たちより先にホワイトハウスにいたじゃねーか?」
「うん、ロナが命令して、二人のシークレットサービスにフォルテ達が止められている隙に先に帰ってたんだよ」
「は?」
「え?」
あれ、俺が間違っているのか?ちょっとなに言っているか全然意味が理解できないんだが……?
いや、内心では薄々気づき始めている……ただ、その事実を脳が認めるのを拒否している感じだ……
「……まさかお前……あのセダンの後部座席に一緒に乗っていたのか?」
「うん、ずっと二人の会話を聞いてたよ?ポトマック川やらロナについての話とか!」
「……」
「……?」
恐る恐る聞いた俺に、今日一番のピュアスマイルを浮かべたロナ……
その言葉を聞いた俺と、にこっと笑うロナとの間に初めて沈黙が走る────
脳ってやつは必要以上の情報を受け取ってしまうと、ショートし、思考が回らなくなってしまう。
そのため一旦再起動をかけた俺の脳みそは、改めてロナの言ったことを整理する。整理するのだが……
「……ッ!!」
銀髪の悪魔から逃げるようにして、俺は後方にあった扉に飛びついた。
意味を理解したらとてつもなく恐ろしい言葉。そのすべてを理解した俺の脳は物事を受け止めるための容量をオーバーしたのだ。
「な、何で逃げるのダーリン??」
悪魔が……ストーカーという悪魔が一歩こちらに踏み出してきた……ひぃ!?
ロナは、俺たちがワシントンダレス空港に着いたときからずっと近くにいたんだ。そして、サポートしつつ、ICコートで身を隠した状態のまま俺たちと一緒にセダンに乗り、ホワイトハウスについたところでシークレットサービスと話している隙を見計らって、あたかも最初からいたかのように自室に帰ったロナと対面した。
通りでコマンドーだかなんだか知らないが、クソつまらない話だなって思ってんだよ……あのシークレットサービスの話。あれもロナのクソつまらない台本通りだったってわけか……
他にも心当たりはある。昨日アメリカから日本に帰ってくるとき、飛行機のベットでうとうとしていた俺が見た白銀のタスキ、あれはおそらくICコートからはみ出したロナのツインテールの片割だったんだろう。
さらに言うと、新幹線が途中で停車した要因を作ったのもおそらくロナだ。俺達が新幹線で待っている間に、先回りしたロナが荷物をせっせと俺の家に運び入れていたのだろう。そうでなければ玄関からここまで続く大量のダンボールの説明がつかない……
────どこの世界に引越しのために新幹線止めるやつがいるんだよ!!
ホラー映画のワンシーンのようにガチャガチャとドアノブを動かす俺。自分で鍵を掛けたくせに、手元が震えて上手く開けることができない!!
「……う、うわああああ!!セ、セイナ!?助けてくれ!!」
「ちょっ!?どどどどうしたのよ!?フォルテ!?」
やっと扉を開けることに成功した俺が、扉の前にいたセイナを盾にしつつロナの方にグイグイ押しやる。
その、普段とはかけ離れた惨め過ぎる俺に、流石のセイナも困惑した様子で首を左右に振り向かせながらあたふたしている。
我ながら、助けてもらったくせにこの態度はいかがなものかと思ったが、今はそれよりも恐怖が勝ってしまい、身体中をがくがく震えていた俺にセイナはため息ひとつ漏らしてから────
「で?結局話しはまとまったの?」
その一言にロナは大きく頷いた。
と、そんなこともあり、半ば強制的にここに住み着いているロナ。
住むことに関してはもう諦めたからいいとして、どうしてコイツは俺のベットなんかに潜り込んでいたんだ?
部屋はちゃんとセイナ同様に個室を用意してやっているというのに……
「んん……」
そんなことを考えていると、俺がベットから落ちた音に気づいたのか?寝ていたロナが目を覚まし、正座の状態で両腕を上げながら大きな伸びをする。
カーテンの隙間からこぼれる朝日を背に、いつものとは違ってツインテールの髪をストレートで両肩から垂らしたロナ。髪と同じくらい透明感のある白い肌も、逆光を浴びて神々しく光り輝いていた。
────セイナと同じで普通にしていればかわいいのにな……
まだ起きたばっかで寝ぼけているのか?トロン……とした瞳でこっちをボンヤリと見つめるロナに、俺は声を掛けながら立ち上がった。
「おい、ロナ。どうしてこんなところで────」
言葉が途中で途切れる。というのも、逆光とその垂れ下がる髪のせいでロナのことがシルエットのようにしか見えていなかった俺は、立ち上がるまでそれに気づくのが遅れた……
髪の下、つまりは上半身になにも、文字通りなにも身に着けていないのだ!何でだよ……!?
幸い胸は髪で隠せているが、それが逆にイケナイ感じをかもし出しているというか……何というか……
「あれ……フォルテ……?もう身体は大丈夫なの?」
「ッ!???」
そのことに気づいていないのか?それとも気にしていないのか?普段している髪留めと同色のアメジストのパンティー一枚で、ハニーイエローの瞳を擦るロナ。その下着も肌が透けそうなほどのシースルーでつける意味あるのかそれ?と思ってしまうほどだった……
って、どうして俺も俺でマジマジと見ちまってんだ!!
「ん……?あ……」
流石に俺の異変を見たロナが、自分があられもない姿をしていることに気づいて、全身をピタリ……と膠着させる。
「そ、その……」
なんとか誤魔化そうと、そっぽを向いた俺が両手をバタつかせて弁明しようとしていると……真っ白だったロナの肌が、下から上にかけて次第に赤く、桃を通りこして熟れたりんごのように真っ赤に染まっていく。
「き……」
「き……?」
俯いたロナの口から声が、かすかに声が漏れたかと思った瞬間────!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分の胸元を押さえたロナが、目覚まし時計にも負けない大きな悲鳴を上げてその場にうずくまった。
────お、お前!この前俺に胸押し付けてきた時はなにも言わなかったくせに、どうしてこういうときに限ってそんな大声出すんだよ!!恥ずかしがる境界線が分かんねーよ……!
本来なら裸を見たことが一番悪いはずなのに、そう心の中で逆切れしてしまう俺……
だって、だってそんな悲鳴を上げたら絶対────
「どうしたのロナ!?何かあったの!?」
ダダダダ────と地響きをさせながら、一階から二階にある俺の部屋の扉を蹴破るもう一人の住人。セイナは……おどおどする俺、半泣きで胸元を押さえる半裸のロナとを交互に見比べていく。
「……へぇー……起きたと思ったらそれ?……長く寝込んでるからって心配してたアタシが……どうやらバカだったみたいわね……」
その顔が左右に動くたびに、セイナの顔が心配から般若のごとく凄まじい形相に変わっていくのを見た俺は……
────どうやら、もう一日休養が必要みたいだな……
と、ロナの精神攻撃とは別、セイナの物理的な鉄拳制裁を受けるのであった。
────そういえば……夢の中で感じた息が詰まるほどのお餅のような感触、頬を押し当ててきた突起物の感触。あれはまさか……いや、まさかな……
凄まじい調教という名の暴力の嵐を受けながら、俺の思考はそこで再び途切れるのだった。
チーン……!
笑顔でとんでもないサイコパス発言をするロナを前に、俺は絶句。返す言葉が見つからない……
「どうしたの??」
そんな俺の様子など知りもせずに小首を傾げるロナ。
────忘れていた……コイツは自分の欲求のためならどんなことでもするやつだということを……
元々ロナと出会ったのも、生活に必要な金のために悪事を働きまくってたのが原因……昔から、目的のためにはなにふり構わないって感じだからな……一応そのことはS.T時代に教育したはずだったんだが。
────そもそも何故そこまでして俺に固執するのか……?
大して本気でもないだろうダーリンダーリンという言葉をかけて俺をからかい、さっきのハニートラップだってそうだ。普段はそんなことやらないくせに……まるでこっちの反応でも楽しむかのようなその態度に、いったい何の意味があるってんだ?
「……いつからだ?」
「何が?」
「いつから俺のスマートフォンを覗き見してやがったんだ?」
「そんなの、S.T解散後からに決まってるじゃん!」
「……」
りんごは赤い、みたいに……さも当たり前のことのように答えるロナを前に、俺は頭がクラッとして倒れそうになったのをギリギリで踏ん張る。
────た、耐えるんだフォルテ……!この際、出せる膿は全部出しちまったほうがいい……!
普段のセイナから受けている物理的なものと違って別ベクトルでツライその攻撃を前に、俺は大きく息を吸ってから勇気を振り絞って聞く。
「じゃあ、なんで俺がこの港町に住んでいるのか理由を知ってるか?」
「戸籍がなくても住めるからでしょ?ここの市長さん、そういうところ甘くしてくれることで有名みたいだしね。でもフォルテ、検索エンジンで「戸籍が無くても住める町」って打つのは流石に笑っちゃうよ」
「うぐ……こ、珈琲店を営んでいる理由は?」
「昔から珈琲淹れるのが上手かったからそれを生かそうとしたからでしょ?これは正直調べなくてもわかるけど、ああ、店名がBLACK CATなのは、フォルテのことを見た近所の子供に「黒猫みたい」って言われたからなんだっけ?」
あぁ……ずっとハッキングしてるっていうのはマジみたいだな……
俺が誰にも、それこそセイナにもしゃべったことないようなことまで知ってるぞコイツ……
ん……?ちょっと待てよ……
「まさか……セイナの素性を知っていたのは……?」
「もちろん!フォルテのスマートフォンからだよ!」
────女王陛下ごめんなさい。ロナが娘さんの秘密知っているのはそっちの情報管理がなっていないわけではなく、俺に原因があったみたいです。はい。
目元を手で覆い、遠いイギリスで仕事しているであろうエリザベス三世に心の中で謝罪する俺をよそに、ロナは得意げな様子で続ける。
「最初、フォルテのスマートフォンが壊れたことを知って、町の監視カメラとかで動向を探って、で、イギリスに連れ去られたことは分かったから、新しく用意してもらってたスマートフォンを遠隔でハッキングして、そのとき偶然聞いちゃったんだよね!」
────偶然、イギリス王室の秘密を聞くやつがどこにいるんだよ……?主婦の井戸端会議じゃあるまいし……
「大体、なんで俺のスマートフォンをハッキングする必要がある!?」
「趣味」
急に真顔になったロナがそう答えるのを見て、ため息をつく俺。
ため息つきすぎて酸欠になるわ……マジで……
まったく、どんだけ俺のことをからかえば気が済むのか?このアホは……
「分かった、お前がどれだけ俺のことを思っているか、よぉーーーく分かった。確かに今思い返してみれば、ワシントンダレス空港にインビジブルカモフラージュコートやセダンがあんな都合のいい場所に用意してあったのも、あれは俺の動向を知って誰かに用意させたってことだったのか……」
腕を組みながらうんうん頷いていた俺がそういうと、何故かロナが驚いたようにキョトンとし────
「え?動向は確かにスマートフォンで確認してたけど、あれはロナが直接用意したんだよ?」
「────今なんて言った?」
さらに耳を疑うような言葉に俺は、両目のお目々ぱちぱちさせていたロナのほうを向いた。
いや、パチパチさせたいのは俺のほうなんだが……???
「だから、用意したのはロナだって。気づいてなかったの?」
首を傾げたロナに合わせて、俺も同じように首を傾げた。
────これってまさか……さっきとは別でもっとヤバイ話しなのでは?
「お前が用意したって……あの銃撃戦の最中にどうやって?」
「そんなもん、ICコートで姿を隠しながらだよ?」
「でも、そのあと俺たちより先にホワイトハウスにいたじゃねーか?」
「うん、ロナが命令して、二人のシークレットサービスにフォルテ達が止められている隙に先に帰ってたんだよ」
「は?」
「え?」
あれ、俺が間違っているのか?ちょっとなに言っているか全然意味が理解できないんだが……?
いや、内心では薄々気づき始めている……ただ、その事実を脳が認めるのを拒否している感じだ……
「……まさかお前……あのセダンの後部座席に一緒に乗っていたのか?」
「うん、ずっと二人の会話を聞いてたよ?ポトマック川やらロナについての話とか!」
「……」
「……?」
恐る恐る聞いた俺に、今日一番のピュアスマイルを浮かべたロナ……
その言葉を聞いた俺と、にこっと笑うロナとの間に初めて沈黙が走る────
脳ってやつは必要以上の情報を受け取ってしまうと、ショートし、思考が回らなくなってしまう。
そのため一旦再起動をかけた俺の脳みそは、改めてロナの言ったことを整理する。整理するのだが……
「……ッ!!」
銀髪の悪魔から逃げるようにして、俺は後方にあった扉に飛びついた。
意味を理解したらとてつもなく恐ろしい言葉。そのすべてを理解した俺の脳は物事を受け止めるための容量をオーバーしたのだ。
「な、何で逃げるのダーリン??」
悪魔が……ストーカーという悪魔が一歩こちらに踏み出してきた……ひぃ!?
ロナは、俺たちがワシントンダレス空港に着いたときからずっと近くにいたんだ。そして、サポートしつつ、ICコートで身を隠した状態のまま俺たちと一緒にセダンに乗り、ホワイトハウスについたところでシークレットサービスと話している隙を見計らって、あたかも最初からいたかのように自室に帰ったロナと対面した。
通りでコマンドーだかなんだか知らないが、クソつまらない話だなって思ってんだよ……あのシークレットサービスの話。あれもロナのクソつまらない台本通りだったってわけか……
他にも心当たりはある。昨日アメリカから日本に帰ってくるとき、飛行機のベットでうとうとしていた俺が見た白銀のタスキ、あれはおそらくICコートからはみ出したロナのツインテールの片割だったんだろう。
さらに言うと、新幹線が途中で停車した要因を作ったのもおそらくロナだ。俺達が新幹線で待っている間に、先回りしたロナが荷物をせっせと俺の家に運び入れていたのだろう。そうでなければ玄関からここまで続く大量のダンボールの説明がつかない……
────どこの世界に引越しのために新幹線止めるやつがいるんだよ!!
ホラー映画のワンシーンのようにガチャガチャとドアノブを動かす俺。自分で鍵を掛けたくせに、手元が震えて上手く開けることができない!!
「……う、うわああああ!!セ、セイナ!?助けてくれ!!」
「ちょっ!?どどどどうしたのよ!?フォルテ!?」
やっと扉を開けることに成功した俺が、扉の前にいたセイナを盾にしつつロナの方にグイグイ押しやる。
その、普段とはかけ離れた惨め過ぎる俺に、流石のセイナも困惑した様子で首を左右に振り向かせながらあたふたしている。
我ながら、助けてもらったくせにこの態度はいかがなものかと思ったが、今はそれよりも恐怖が勝ってしまい、身体中をがくがく震えていた俺にセイナはため息ひとつ漏らしてから────
「で?結局話しはまとまったの?」
その一言にロナは大きく頷いた。
と、そんなこともあり、半ば強制的にここに住み着いているロナ。
住むことに関してはもう諦めたからいいとして、どうしてコイツは俺のベットなんかに潜り込んでいたんだ?
部屋はちゃんとセイナ同様に個室を用意してやっているというのに……
「んん……」
そんなことを考えていると、俺がベットから落ちた音に気づいたのか?寝ていたロナが目を覚まし、正座の状態で両腕を上げながら大きな伸びをする。
カーテンの隙間からこぼれる朝日を背に、いつものとは違ってツインテールの髪をストレートで両肩から垂らしたロナ。髪と同じくらい透明感のある白い肌も、逆光を浴びて神々しく光り輝いていた。
────セイナと同じで普通にしていればかわいいのにな……
まだ起きたばっかで寝ぼけているのか?トロン……とした瞳でこっちをボンヤリと見つめるロナに、俺は声を掛けながら立ち上がった。
「おい、ロナ。どうしてこんなところで────」
言葉が途中で途切れる。というのも、逆光とその垂れ下がる髪のせいでロナのことがシルエットのようにしか見えていなかった俺は、立ち上がるまでそれに気づくのが遅れた……
髪の下、つまりは上半身になにも、文字通りなにも身に着けていないのだ!何でだよ……!?
幸い胸は髪で隠せているが、それが逆にイケナイ感じをかもし出しているというか……何というか……
「あれ……フォルテ……?もう身体は大丈夫なの?」
「ッ!???」
そのことに気づいていないのか?それとも気にしていないのか?普段している髪留めと同色のアメジストのパンティー一枚で、ハニーイエローの瞳を擦るロナ。その下着も肌が透けそうなほどのシースルーでつける意味あるのかそれ?と思ってしまうほどだった……
って、どうして俺も俺でマジマジと見ちまってんだ!!
「ん……?あ……」
流石に俺の異変を見たロナが、自分があられもない姿をしていることに気づいて、全身をピタリ……と膠着させる。
「そ、その……」
なんとか誤魔化そうと、そっぽを向いた俺が両手をバタつかせて弁明しようとしていると……真っ白だったロナの肌が、下から上にかけて次第に赤く、桃を通りこして熟れたりんごのように真っ赤に染まっていく。
「き……」
「き……?」
俯いたロナの口から声が、かすかに声が漏れたかと思った瞬間────!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分の胸元を押さえたロナが、目覚まし時計にも負けない大きな悲鳴を上げてその場にうずくまった。
────お、お前!この前俺に胸押し付けてきた時はなにも言わなかったくせに、どうしてこういうときに限ってそんな大声出すんだよ!!恥ずかしがる境界線が分かんねーよ……!
本来なら裸を見たことが一番悪いはずなのに、そう心の中で逆切れしてしまう俺……
だって、だってそんな悲鳴を上げたら絶対────
「どうしたのロナ!?何かあったの!?」
ダダダダ────と地響きをさせながら、一階から二階にある俺の部屋の扉を蹴破るもう一人の住人。セイナは……おどおどする俺、半泣きで胸元を押さえる半裸のロナとを交互に見比べていく。
「……へぇー……起きたと思ったらそれ?……長く寝込んでるからって心配してたアタシが……どうやらバカだったみたいわね……」
その顔が左右に動くたびに、セイナの顔が心配から般若のごとく凄まじい形相に変わっていくのを見た俺は……
────どうやら、もう一日休養が必要みたいだな……
と、ロナの精神攻撃とは別、セイナの物理的な鉄拳制裁を受けるのであった。
────そういえば……夢の中で感じた息が詰まるほどのお餅のような感触、頬を押し当ててきた突起物の感触。あれはまさか……いや、まさかな……
凄まじい調教という名の暴力の嵐を受けながら、俺の思考はそこで再び途切れるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】結界守護者の憂鬱なあやかし幻境譚 ~平凡な男子高校生、今日から結界を繕います~
御崎菟翔
キャラ文芸
【平凡な高校生 × 妖従者たちが紡ぐ、絆と成長の主従現代和風ファンタジー!】
「選ぶのはお前だ」
――そう言われても、もう引き返せない。
ごく普通の高校生・奏太(そうた)は、夏休みのある日、本家から奇妙な呼び出しを受ける。
そこで待っていたのは、人の言葉を話す蝶・汐(うしお)と、大鷲・亘(わたり)。
彼らに告げられたのは、人界と異界を隔てる結界を修復する「守り手」という、一族に伝わる秘密の役目だった。
「嫌なら断ってもいい」と言われたものの、放置すれば友人が、家族が、町が危険に晒される。
なし崩し的に役目を引き受けた奏太は、夜な夜な大鷲の背に乗り、廃校や心霊スポットへ「出勤」することに!
小生意気な妖たちに絡まれ、毒を吐く蛙と戦い、ついには異世界「妖界」での政変にまで巻き込まれていく奏太。
その過程で彼は、一族が隠し続けてきた「残酷な真実」と、従姉・結(ゆい)の悲しい運命を知ることになる――
これは、後に「秩序の神」と呼ばれる青年が、まだ「ただの人間」だった頃の、始まりの物語。
★新作『蜻蛉商会のヒトガミ様』
この物語から300年後……神様になった奏太の物語も公開中!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/174241108/158016858
転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】
マツヤマユタカ
ファンタジー
「わたしはもうまもなく死ぬ」
静まり返った老人ホームの一室で、老人は青年にそう告げた。励まそうとする青年に老人はさらに告げる。「いや正確に言い直そう。わたしは転生するのだ」
異世界に突如として転生したその男は、海洋国家ヴァレンティン共和国の超名門、シュナイダー家に生を受け、ガイウス・シュナイダーとして転生を果たす。だがそんなガイウスには前世の知識はあるものの、記憶がなかった。混乱するガイウス。だが月日が経つにつれ、次第にそんな環境にも慣れ、すくすくと成長する。そんな時、ガイウスは魔法と出会う。見よう見まねで魔法を繰り出すガイウス。すると、あろうことかとんでもない威力の魔法が――
数えきれないほど転生をし続けた伝説の大魔導師の最後の転生物語をどうぞお楽しみください!
こちらは『小説家になろう』で千五百万PⅤを獲得した作品を各所変更し、再構成して投稿しております。
また『1×∞(ワンバイエイト)経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!』という作品が、アルファポリス社より刊行されています。既刊第四巻まで発売中です。またコミカライズもされており、こちらは第二巻まで発売しています。あわせてよろしくお願いいたします!
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
「ただの経費削減ですが?」 銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです
空木 架
SF
日本の企業で総務として働く星野明日虎(32歳)は、ある日突然、見知らぬ宇宙の帝国へと転移してしまう。彼が配属されたのは、整理整頓もままならない「銀河最弱」の補給艦隊だった!
ひょんなことから戦艦の艦長に任命されてしまった明日虎だが、宇宙の戦い方など全く分からない。そこで彼が武器にしたのは、長年の社畜生活で培った「経費削減」と「在庫管理」のスキルだった。
「弾薬の無駄遣い禁止!」「エンジンはこまめに切れ!」――ただ徹底的なコストカットと業務効率化を推し進めただけなのに、それがなぜか「天才的な軍事戦略」として周囲に大勘違いされていく。
個性豊かな仲間たちと共に、最弱だった倉庫部門を最強の組織へと育て上げる、痛快・お仕事&成り上がりSFファンタジー!
※この作品は、「小説家になろう」「カクヨム」でも連載しています
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
主人公はあまり戦ったりはしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる