136 / 361
赤き羽毛の復讐者《スリーピングスナイパー》
バンゾック・フォールズ12
しおりを挟む
「とまあ、そんな感じだ……ほら」
隠していたジープの後部座席に腰かけ、俺は話しながら、昨日から何も食べていないというセイナのために、蜜柑の皮むきをしていた。さっきアイリスが風の魔術で収穫したものである。
「ありがとう……あむ、あむ……なるほど、そっちはそんなことがあったのね……」
俺の隣に腰かけたセイナが、受け取った蜜柑をパクパクと食べながら相槌を打つ。軍人とはいえ流石は貴族。皮ごと丸呑みしていたアイリスとは違い、食べ方も上品だ。
で、そのアイリスはというと、セイナと合流した後すぐに、電池の切れたロボットみたいに立ったまま寝だしたので、運転席までとりあえず俺が運んだ。今は、小動物のように身体を丸めた状態で、グーグーと気持ち良さそうな表情でイビキを掻いている。
本当は、すぐにでもロナを助けに行きたいところだったが、今の状況と今後の方針を確認。そして、眠るアイリスの休養も兼ねて、ジープに場所を移して情報整理をしていた。
ロナが捕まった状況について、セイナからの情報を纏めると────
「アタシは、ロナを担いで何とか密林を逃げていたのだけど、連中、暗視ゴーグルと特殊部隊顔負けの最新装備で武装していて、さらに十人以上の分隊で囲んできたの。数時間は何とか粘ったけど、最後、逃げ場を失くした時、ロナがこのコートを残して投降したの。アタシはそれを止めたのに、「ロナは大丈夫」って聞かなくて……結局、ロナが時間を稼いでいる間に、逃げだしたアタシは何とか助かったの……」
と、こんな感じだった。
捕まったことに関してはすごく心配だが、情報を吐くまではすぐに殺されることは無いと思うし、ロナはああ見えて容量は良い方だから、なんとか上手くやるだろう。
だが、崖で俺とアイリスを追い詰めてきた兵士達の品は、お世辞にも良いとは言えない。
可愛い見た目のアイツが、連中に何もされてないといいんだが……
あんまりよろしくないその想像に、自然とこめかみに血管が浮くような感覚が走る。
だけど、ここらの地形に疎い俺達二人、下手に突貫したところで、返り討ちに遭うのは目に見えている。だからこそ、今はアイリスが目覚めるまでは、下手に動くことができない。
ここで休養を取ることに、セイナは最初反対していたが、流石に今ここで焦ってもしょうがないことや、俺を救ってくれたアイリスをこの場に放置することもできなということで、渋々承諾してくれた。
そんなこと露知らず、俺達の命運を握るアイリスは、穏やかな表情のまま、マフラー越しに鼻提灯を膨らませている。
恐ろしい程の熟睡。アイリスの体質を考えると、もしかしたら今朝の道案内はかなりの重労働だったのかもしれないな……だとしても、こんな環境下でそこまで安眠できるのは、正直羨ましいくらいだった。
軍人時代、眠れずに苦労する人間はたくさんいるし、どんな場所でも寝ることできる奴は才能があるとすら言われている。もちろん、そんな才能の無かった俺もよく苦労したが、アイリスに至っては、クソ暑い中をマフラーをしたまま寝ている……見ているこっちが暑くなりそうな格好だ。
やっぱり、余程あの傷を他人に見せたくないのだろうな。魔術弾使いのスナイパーにつけられた、右頬の傷を……
閉め切っていた車内は、当初こそ外よりも暑く感じたが、窓を開けると直射日光を避けた上で、気持ちのいい風が通り抜けていくので、今は涼しいくらいまで落ち着いてはいた。
セイナ達と別れた後の状況について、俺が説明し終えたのも、丁度涼しいと感じ始めたくらいだった。
アイリスがあのスナイパーとやり合っていたこと。
二人で追っ手から逃れるため、キーソン川に飛び込んだこと。
川に流された俺を助けてくれた話や、洞窟で一晩明かしたこと。
そして ロナを狙撃したスナイパーは、数日前に港区で俺達を襲撃した同一人物であり、アイリスのパートナー、つまりは父親の仇であることも。
アイリスの過去やナルコレプシーの体質ついては、正直本人の確認も取らずにしゃべっていいか迷ったが、寝る前に父親の話題を口走ったところから、話しても問題ないだろうと判断した。唯一言わなかったのは、アイリスの右頬の傷についてだけだ。
「それにしてもあのスナイパー、一体何者なのかしら?」
「そうだな……何かもっと情報や特徴でもあれば、何か分かるかも知れないのに……」
酸っぱい蜜柑にちょっとだけ顔を窄めたセイナの呟きに、俺は頭を捻る。
緋色の魔術弾使い、港区の闇取引、ベトナムの工場と、それを護衛する軍隊。断片的に集まったパズルのピース同士は、まだ繋がる気配を見せない。
「そう言えば、アタシはフォルテ達と合流するためにここに来たけど、アンタ達は何しに来たの?アタシ達と合流するためだけにここに来たの?」
何か他に気になった情報はないかと、昨日からの今日までの記憶を辿る俺に、セイナが訊ねてくる。
「それもあったけど、キーソン川に流された時、アイリスが使っていた武器が滝の方に流されちまって……代わりの武器を取りに────」
「……ん?どうかしたの?」
不意に言葉を止めた俺に、セイナが首を傾げる。
「いや……ちょっと思い出したことがあってな……」
情報……とまではいかないかもしれないが、不審に思った点が一つあった。
「連中、変なものをキーソン川から滝下にある湖畔まで流して、わざわざ空気圧式ボートを使って回収してたな……」
「それってもしかして……コンテナみたいなやつのことかしら?」
「コンテナ……?いや違うけど、どうしてそう思ったんだ?」
数日前に港区で見たコンテナが、キーソン川を流れている絵面を思い浮かべた。が、普通そんなことはありえないし、言われなければ想像することも無いほど珍妙な様だろう。
不可解な発言にそう感じた俺が聞き返すと、セイナもそう思われることを想定していたらしく、「笑わないでよ」と前置きしてから、ちょっと自信なさげに口を開く。
「実はね、アタシがロナを担いで逃げている最中、偶然、工場よりも上流側の河川を見たのだけど……その時、このジープくらいのサイズのコンテナが数個、流れているのを見たような気がしたの……遠目だったから絶対とは言い切れないけど……」
「コンテナ……ねぇ……」
「ア、アタシだって、自分で言ってておかしいと思うわよ!でも、あれはコンテナ以外の何物でも────」
「大丈夫、信じてるよ」
突飛な内容で反応があまりよろしくなかったことに、セイナは信じてもらえてないと思ったのか、早口で色々弁解しだしたので、俺は興奮した馬をなだめるような仕草で、どうどう……と両手のひらを上下に動かす。すると突然、セイナがグイッと顔を近づけてきた。
「ホントに?」
「……ホ、ホントだッ……!」
俺は、仰け反りながらも首を縦に振る。
ち、近ぇ……
鼻同士が触れるくらい急接近してきた美少女に、俺は思わずドギマギしてしまう。
最初出会った時に比べて、だいぶ距離感が近づいたことはパートナーとして喜ばしいことだが。それにしても近づきすぎだッ……!
不服を表すように尖らせた、セイナのそのプリンのように柔らかそうな唇。俺がちょっと近づくだけで、簡単にキスができてしまうことに気づいてないのか……?
「じゃあ、なんで顔を背けるのよ?」
恥ずかしに耐え切れなくなって顔を背けていた俺に、セイナはさらに詰め寄る。
その、見とれるほどの美しい青眼の双眸が、真っすぐこっちを見据えている。
あ~くそ……相変わらずの可愛い顔、それに、いい香りしやがって……嗅覚の敏感な俺にとって、この匂いは刺激が強すぎるんだよッ……!
感情を左右する、俺の大脳辺縁系が、匂いに影響されてクラクラする。判断力、理性が掻き乱され、正常な思考が回らなくなってくる。
今ここにはロナはいない。横に居るアイリスは深い眠りについている。
つまりこの狭い空間に二人っきり。
────いっそのこと、キスしてしまえばいいんじゃないか……?
そんな、悪魔の囁きが聞こえたような気がした。
「フォルテ……?」
俺の異変に気付いたように、セイナが訝し気な表情を浮かべる。そんな、彼女の無垢で愛くるしい顔が、さらに俺の心情を煽ったような気がした。
がッ────!
詰め寄ってきていたセイナの肩を、俺の左手が不意に掴んでいた。
「えっ……!?」
唐突なことに驚いたセイナが、状況を読み取れず、可愛いおめめをパチパチ瞬かせた。
俺はそんな様子など気にせずに、ゆっくりと顔を近づけていく。
「ちょっ……!フォ、フォルテ……!?」
何をしようとしているのか察して、頬を桃色に染めたセイナが、無言の俺の前であたふたと後づさりしようとする。
冷静さを失い、軽いパニック状態だったセイナを逃がさないように、俺はもう片方の手を彼女の背中へと、蛇のようにスルリ……と回す。男としての本能が、全細胞がこの美しき少女を求めている。そんな気さえした。
「っっっ~~~」
指先に伝わる滑らかな髪の感触、薄いブラウス越しに感じる彼女の高鳴る鼓動。逃げ場を失ったセイナが、声にならない声を上げる中、さらに距離を詰める俺。不思議なことに、普段は乱暴なセイナが、俺の強引なその行動を前に、それ以上逃げようとしなかった。
見下ろす宝石のような青い瞳に映るのは、肉に飢えた獣だ。さっきと違って鼻同士は触れ合い、唇から漏れる荒い吐息が頬に当たってくすぐったい。それでもセイナは逃げない。頬を真っ赤に染めては小さく震えているが、何かを受け入れたかのように、ギュッと瞳を固く閉じている。
健気にも気丈に振舞うその態度に俺は高揚感を覚えつつ、小さく舌なめずりしてから意を決して、二枚の桜の花びらへと唇を近づけた────
隠していたジープの後部座席に腰かけ、俺は話しながら、昨日から何も食べていないというセイナのために、蜜柑の皮むきをしていた。さっきアイリスが風の魔術で収穫したものである。
「ありがとう……あむ、あむ……なるほど、そっちはそんなことがあったのね……」
俺の隣に腰かけたセイナが、受け取った蜜柑をパクパクと食べながら相槌を打つ。軍人とはいえ流石は貴族。皮ごと丸呑みしていたアイリスとは違い、食べ方も上品だ。
で、そのアイリスはというと、セイナと合流した後すぐに、電池の切れたロボットみたいに立ったまま寝だしたので、運転席までとりあえず俺が運んだ。今は、小動物のように身体を丸めた状態で、グーグーと気持ち良さそうな表情でイビキを掻いている。
本当は、すぐにでもロナを助けに行きたいところだったが、今の状況と今後の方針を確認。そして、眠るアイリスの休養も兼ねて、ジープに場所を移して情報整理をしていた。
ロナが捕まった状況について、セイナからの情報を纏めると────
「アタシは、ロナを担いで何とか密林を逃げていたのだけど、連中、暗視ゴーグルと特殊部隊顔負けの最新装備で武装していて、さらに十人以上の分隊で囲んできたの。数時間は何とか粘ったけど、最後、逃げ場を失くした時、ロナがこのコートを残して投降したの。アタシはそれを止めたのに、「ロナは大丈夫」って聞かなくて……結局、ロナが時間を稼いでいる間に、逃げだしたアタシは何とか助かったの……」
と、こんな感じだった。
捕まったことに関してはすごく心配だが、情報を吐くまではすぐに殺されることは無いと思うし、ロナはああ見えて容量は良い方だから、なんとか上手くやるだろう。
だが、崖で俺とアイリスを追い詰めてきた兵士達の品は、お世辞にも良いとは言えない。
可愛い見た目のアイツが、連中に何もされてないといいんだが……
あんまりよろしくないその想像に、自然とこめかみに血管が浮くような感覚が走る。
だけど、ここらの地形に疎い俺達二人、下手に突貫したところで、返り討ちに遭うのは目に見えている。だからこそ、今はアイリスが目覚めるまでは、下手に動くことができない。
ここで休養を取ることに、セイナは最初反対していたが、流石に今ここで焦ってもしょうがないことや、俺を救ってくれたアイリスをこの場に放置することもできなということで、渋々承諾してくれた。
そんなこと露知らず、俺達の命運を握るアイリスは、穏やかな表情のまま、マフラー越しに鼻提灯を膨らませている。
恐ろしい程の熟睡。アイリスの体質を考えると、もしかしたら今朝の道案内はかなりの重労働だったのかもしれないな……だとしても、こんな環境下でそこまで安眠できるのは、正直羨ましいくらいだった。
軍人時代、眠れずに苦労する人間はたくさんいるし、どんな場所でも寝ることできる奴は才能があるとすら言われている。もちろん、そんな才能の無かった俺もよく苦労したが、アイリスに至っては、クソ暑い中をマフラーをしたまま寝ている……見ているこっちが暑くなりそうな格好だ。
やっぱり、余程あの傷を他人に見せたくないのだろうな。魔術弾使いのスナイパーにつけられた、右頬の傷を……
閉め切っていた車内は、当初こそ外よりも暑く感じたが、窓を開けると直射日光を避けた上で、気持ちのいい風が通り抜けていくので、今は涼しいくらいまで落ち着いてはいた。
セイナ達と別れた後の状況について、俺が説明し終えたのも、丁度涼しいと感じ始めたくらいだった。
アイリスがあのスナイパーとやり合っていたこと。
二人で追っ手から逃れるため、キーソン川に飛び込んだこと。
川に流された俺を助けてくれた話や、洞窟で一晩明かしたこと。
そして ロナを狙撃したスナイパーは、数日前に港区で俺達を襲撃した同一人物であり、アイリスのパートナー、つまりは父親の仇であることも。
アイリスの過去やナルコレプシーの体質ついては、正直本人の確認も取らずにしゃべっていいか迷ったが、寝る前に父親の話題を口走ったところから、話しても問題ないだろうと判断した。唯一言わなかったのは、アイリスの右頬の傷についてだけだ。
「それにしてもあのスナイパー、一体何者なのかしら?」
「そうだな……何かもっと情報や特徴でもあれば、何か分かるかも知れないのに……」
酸っぱい蜜柑にちょっとだけ顔を窄めたセイナの呟きに、俺は頭を捻る。
緋色の魔術弾使い、港区の闇取引、ベトナムの工場と、それを護衛する軍隊。断片的に集まったパズルのピース同士は、まだ繋がる気配を見せない。
「そう言えば、アタシはフォルテ達と合流するためにここに来たけど、アンタ達は何しに来たの?アタシ達と合流するためだけにここに来たの?」
何か他に気になった情報はないかと、昨日からの今日までの記憶を辿る俺に、セイナが訊ねてくる。
「それもあったけど、キーソン川に流された時、アイリスが使っていた武器が滝の方に流されちまって……代わりの武器を取りに────」
「……ん?どうかしたの?」
不意に言葉を止めた俺に、セイナが首を傾げる。
「いや……ちょっと思い出したことがあってな……」
情報……とまではいかないかもしれないが、不審に思った点が一つあった。
「連中、変なものをキーソン川から滝下にある湖畔まで流して、わざわざ空気圧式ボートを使って回収してたな……」
「それってもしかして……コンテナみたいなやつのことかしら?」
「コンテナ……?いや違うけど、どうしてそう思ったんだ?」
数日前に港区で見たコンテナが、キーソン川を流れている絵面を思い浮かべた。が、普通そんなことはありえないし、言われなければ想像することも無いほど珍妙な様だろう。
不可解な発言にそう感じた俺が聞き返すと、セイナもそう思われることを想定していたらしく、「笑わないでよ」と前置きしてから、ちょっと自信なさげに口を開く。
「実はね、アタシがロナを担いで逃げている最中、偶然、工場よりも上流側の河川を見たのだけど……その時、このジープくらいのサイズのコンテナが数個、流れているのを見たような気がしたの……遠目だったから絶対とは言い切れないけど……」
「コンテナ……ねぇ……」
「ア、アタシだって、自分で言ってておかしいと思うわよ!でも、あれはコンテナ以外の何物でも────」
「大丈夫、信じてるよ」
突飛な内容で反応があまりよろしくなかったことに、セイナは信じてもらえてないと思ったのか、早口で色々弁解しだしたので、俺は興奮した馬をなだめるような仕草で、どうどう……と両手のひらを上下に動かす。すると突然、セイナがグイッと顔を近づけてきた。
「ホントに?」
「……ホ、ホントだッ……!」
俺は、仰け反りながらも首を縦に振る。
ち、近ぇ……
鼻同士が触れるくらい急接近してきた美少女に、俺は思わずドギマギしてしまう。
最初出会った時に比べて、だいぶ距離感が近づいたことはパートナーとして喜ばしいことだが。それにしても近づきすぎだッ……!
不服を表すように尖らせた、セイナのそのプリンのように柔らかそうな唇。俺がちょっと近づくだけで、簡単にキスができてしまうことに気づいてないのか……?
「じゃあ、なんで顔を背けるのよ?」
恥ずかしに耐え切れなくなって顔を背けていた俺に、セイナはさらに詰め寄る。
その、見とれるほどの美しい青眼の双眸が、真っすぐこっちを見据えている。
あ~くそ……相変わらずの可愛い顔、それに、いい香りしやがって……嗅覚の敏感な俺にとって、この匂いは刺激が強すぎるんだよッ……!
感情を左右する、俺の大脳辺縁系が、匂いに影響されてクラクラする。判断力、理性が掻き乱され、正常な思考が回らなくなってくる。
今ここにはロナはいない。横に居るアイリスは深い眠りについている。
つまりこの狭い空間に二人っきり。
────いっそのこと、キスしてしまえばいいんじゃないか……?
そんな、悪魔の囁きが聞こえたような気がした。
「フォルテ……?」
俺の異変に気付いたように、セイナが訝し気な表情を浮かべる。そんな、彼女の無垢で愛くるしい顔が、さらに俺の心情を煽ったような気がした。
がッ────!
詰め寄ってきていたセイナの肩を、俺の左手が不意に掴んでいた。
「えっ……!?」
唐突なことに驚いたセイナが、状況を読み取れず、可愛いおめめをパチパチ瞬かせた。
俺はそんな様子など気にせずに、ゆっくりと顔を近づけていく。
「ちょっ……!フォ、フォルテ……!?」
何をしようとしているのか察して、頬を桃色に染めたセイナが、無言の俺の前であたふたと後づさりしようとする。
冷静さを失い、軽いパニック状態だったセイナを逃がさないように、俺はもう片方の手を彼女の背中へと、蛇のようにスルリ……と回す。男としての本能が、全細胞がこの美しき少女を求めている。そんな気さえした。
「っっっ~~~」
指先に伝わる滑らかな髪の感触、薄いブラウス越しに感じる彼女の高鳴る鼓動。逃げ場を失ったセイナが、声にならない声を上げる中、さらに距離を詰める俺。不思議なことに、普段は乱暴なセイナが、俺の強引なその行動を前に、それ以上逃げようとしなかった。
見下ろす宝石のような青い瞳に映るのは、肉に飢えた獣だ。さっきと違って鼻同士は触れ合い、唇から漏れる荒い吐息が頬に当たってくすぐったい。それでもセイナは逃げない。頬を真っ赤に染めては小さく震えているが、何かを受け入れたかのように、ギュッと瞳を固く閉じている。
健気にも気丈に振舞うその態度に俺は高揚感を覚えつつ、小さく舌なめずりしてから意を決して、二枚の桜の花びらへと唇を近づけた────
0
あなたにおすすめの小説
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる