SEVEN TRIGGER

匿名BB

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赤き羽毛の復讐者《スリーピングスナイパー》

暁に染まる巨人《ダイド イン ザ ダウン》8

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「チャップリンではない!!ボブ!!ボブ・スミスだ!!全く……CIAのネズミが紛れていたかと思えば、貴様だったかフォルテ・S・エルフィー……!」

 引きつれた兵士六人の後ろで、キーキーと醜い豚のように叫ぶ小太りの男。。その姿に、隣にいたセイナが疑問を浮かべるような視線をこっちに向けてきた。

「どういうこと?フォルテの人違い?」

「いや?FBIの副所長のチャップリンで間違いないはずだが?」

 肩をすくめてそう言う俺。あれ、そうだよな……確かにアメリカではチャップリンって言っていたはずだが……

「それはその男が勝手に言っているだけだ小娘!私は世界で一番偉大な警察機関であるFBIのNO.2ナンバーツーことボブ・スミスだ!よく覚えておけ!!」

 銃をこちらに構える兵士達の後ろから、息を荒げてがなり立てるチャップリン。前会った時もそうだったが、チビなせいで姿が見えにくいため、声だけ聴いてると駄々こねている子供のようにしか聞こえない。
 今すぐその着ているイタリアスーツに謝れと言いたくなる低能な品性に、セイナも察したかのように「ふん」と鼻を軽く鳴らした。

「で?そのFBIのNO.2ナンバーツーのチャップリンが、こんな場所で何をしているのかしら……?」

「き、貴様もこの私を愚弄ぐろうするか!?小娘ぇ!!」

「えぇ!仮にも法の番人ともあろう人物が、このようなことして許されると思っているの!?」

 左の牢屋内にいる鎖や鉄加瀬で繋がれた少女を指さしながら、セイナは上部の位置にいるチャップリンをブルーサファイアの瞳でキッと睨みつける。
 その言葉に俺はきゅうぅ……と胸が締め付けられる思いに駆られた。数日前にCIA長官のジェイクと会話していた内容を思い出したからだ。あの時の俺は、アルシェ・マーリンに拷問するべきと進言していた。たまたまジェイクが乗り気でなかったことや、呪いがあるということで実行こそされなかったが、その二つが無ければ俺はやるべきだという考えをずっと持っていた。心の中では「幼い少女」だから本当はやりたくないなどと、自分に言い繕ってまで……
 だが、この光景を見たことで、それらの思いは跡形あとかたもなく消えていた。
 ジェイクやセイナの言う通り、これは決して人のやっていい行為ではない。どんなに残忍な人物であったとしても、捌く側が人ではなく神であったとしても、拷問というのは許される行為ではない。
 偽善で塗りたくっていた思いは捨て、セイナと共に誠実な思いで俺もチャップリンを睨みつけたが、そんなの意に返さない様子で両手を広げ、小太りのチビはかぶりを振るう。

「お前のような何も知らない生娘きむすめがこの私に説教か?笑わせる!そもそもこの周辺はベトナム政府から立ち入りが禁止されている以上、貴様らの方があくとして裁かれる。立場が分かっていないのは貴様の方だぞ!」

 セイナの凄みにも動じず、腐ってもそこはFBI副長官であるチャップリンが強固な姿勢を崩さない。

「それに、貴様の横に居る人物が誰か分かっているのか?大罪人であるその男が、我がFBIの長官殿に銃口を向け、どれだけの人々を恐怖に陥れ、残虐非道の限りを尽くしてきたか……それを知った上で言っているのか?」

 コイツ……俺がことを知っているのか、好き勝手言いやがって……
 俺達の部隊S . TがFBI長官を襲撃した理由……正直セイナにはもう話しても良かった。それは今日まで一緒に行動してきたことで、セイナが信用できる人物だと俺が認めているからだ。
 しかし、だからと言って話せるほど単純なことではない。理由を知ればセイナの意志に関係なく、絶え間ない火の粉が降りかかることになる。それを彼女が受け入れてくれる保証は何処にも無い以上、どんなにせがまれても簡単には話せないんだ、これは……
 痛いところを突かれ、下手に口出しできない俺は唇を噛む。
 その様子を「図星か」と言わんばかりに、チャップリンがいやしい表情で頬を吊り上げたその時────

「────それが何だって言うの?」

「なに……?」

 迷いのないセイナのその言葉に、チャップリンが眼をすがめる。

「確かにアンタの言う通り、アタシは過去にフォルテが何をしたかなんて知らない。それにこの場所が政府の管轄である以上、領地侵犯であることもまた事実だけど……それでも、これだけはハッキリと分かるわ……」

 セイナが弁護士のようにビシッと指を差し、強烈なその態度に気圧されたチャップリンが、半歩後ろに引きさがった。

「こんなことを平然とやるアンタの方が、フォルテよりも残虐であることは理解できるわ!それに、フォルテが理由なく誰かを傷つける人間じゃないことくらい、アタシは分かっている!アンタみたいな外道と違ってね!」

「……セイナ……」

 嬉しかった。
 事情を知らないのにそう言ってくれたことが、俺のことを信じてくれたことが嬉しかった。

「アンタがここでやってきたことは全て記録してあるわ!武器密造、密売、及び少女暴行……これだけあれば十分アンタを裁くことができるわ!覚悟しなさい!」

 断罪の天使、ウリエルをモチーフにしたメダリオンが描かれたコルト・カスタムを、上部でアサルトライフル……恐らくさっき地上の工場で作っていたAK-47だろう。を向けていた男達に構えるセイナ。犯し難いまでに凛々しくも気高いその姿に兵士達は……

「ぶッ!……クククク……!」

 突如、その姿をさっきまで黙って見ていた兵士達が、みっともなく腹を抱えて笑い出した。
 最初、どうしてコイツらが英語で喋っているのか疑問に思っていたが、その理由がいま何となく分かった。この工場内の機材は、主にアメリカから取り寄せた品を取り扱っていることや、所長がチャップリンであることから、この工場では英語が公用語となっていたのだろう。だから最初、ベトナム人兵士が俺とアイリスに話しかけた時、本当に中国側のコンテナ作業員が迷い込んだと思って英語で話しかけてきたんだろう。
 そして彼らは今、セイナの言葉の意味をハッキリと理解した上でわらっている。まるで、正義を振りかざす人間はダサいと後ろ指を差すような嘲笑に、セイナは眼光を鋭くする。

「裁く?裁くだと?この私を?一体誰が?」

 銃口を向けられたチャップリンも、どこか呆れた様子で失笑を浮かべていた。

「勘違いしているようだから教えてやる、私は裁かれることなんてなにもしてない。何故ならここであったことは全て、誰にも知られることなく貴様達は我々に殺されるのだからな!」

 その言葉と同時に兵士達が再び銃を構えた……が、チャップリンは片手で「待て」と銃口を下げさせる。

「だが……少し気が変わった……そこの大罪人は殺すとして、小娘……貴様は生かして私の奴隷にしよう……」

「だ、誰がアンタなんかの奴隷に────」

 そう反論しかけたセイナにチャップリンは懐からスマートフォンを取り出した。

「コイツを見ろ……これは貴様と同じことを言っていた小娘の映像だ……」

 小さな画面中に表示されたのは、この牢屋の映像だった。
 俺達から見て右側にあった監視カメラの映像……は、左側の牢屋内を映しており、鎖に両腕を繋がれ、着ていた衣類を無造作に引き裂かれた銀髪の少女に、野戦服姿の男が覆いかぶさっていた。
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