SEVEN TRIGGER

匿名BB

文字の大きさ
225 / 361
月下の鬼人(ワールドエネミー)下

at gunpoint (セブントリガー)7

しおりを挟む
 雑に整備されたギリギリ道と呼べる道を、闘牛のような獰猛さでバイクが駆ける。
 フロスロットル入れっぱなしのエンジンが唸り続け、林道に適さないオーバースピードを生み出していた。
 それでも何とか走れているのは、自宅の帰路として使っていたこの道をよく知っているからだろう。
 少しでも気を取られれば一瞬でクラッシュするスピードだ。
 それが理解できていても、俺は右手のスロットルを戻さない。戻せない。
 仲間のあんな表情見ちまったらな……
 トリガー3。
 アイツは多分……隊長に恋をしている。
 鈍感な俺でも、あそこまであからさまだと嫌でも勘付いちまう。
 性格が半年前から激変したのも、元はといえば隊長がよく異性の中ではベルと気さくに話していることが多いところからだ。
 見た目やファッションセンスは、貴族育ちのリズから。
 彼女はそれらを真似たのだろう。
 別にお前はお前なんだから……そう思っていたが、彼女自身はそう思っていないらしく、一歩でも半歩でも隊長に近づきたいという意思が成す、努力の表れなのだろう。
 おかげで、実はそっちのけがあるトリガー5が煮え湯を飲まされていることは置いておくとして……
 そんなトリガー3が怯えていた。
 ここ半年、隊長の前では絶対に外さなかったその虚勢化粧が見る影も無かった。
 それくらい今回の件は、俺が思っている以上にヤバいのだろう。
 他の連中も表に出していないだけで、内心では相当不安を募らせていたはずだ。
 あの状況で、フォルテが抜けるのは得策ではない。
 気づけば俺の身体は勝手に動いていた。
 最近少しづつ使えるようになっていた、ある魔術まで使って。

「一分でも、一秒でも早く、ベアードのところに行かねえと……」

 この情報を大統領に伝え、副隊長として皆が安心する知らせを持ち帰る。
 焦燥に駆られた俺の心はそれしか考えることができなかった。
 ノーフォークの街中へと続く、最後のカーブへと差し掛かる。
 時間帯的にもこのままいけば、僅か二時間でホワイトハウスに着けるかもしれない。
 土石を彼方へと蹴散らし、街に入る直線をヘッドライトが示した瞬間。
 俺の僅かな油断が形となって姿を見せた。

 ガガンッ!!

「えっ?」

 前輪が急停止し、つんのめるように前へと傾いたバイクから、俺は投げ出された。
 まるで、闘牛士が吹っ飛ばされるたのと同じように夜闇を舞う。
 一体何が起きたのか……?
 それを考えるよりも先に、身体が勝手に受け身の姿勢へと入っていた。

「……っ」

 反転した世界で重力に叩きつけられる。
 幸い背にはオートクレールがあって多少のクッション代わりになってくれた。
 とはいえ、生身の人間が百キロメートル近い速度から放り出されれば、良くて大怪我、悪くて死だ。

 バルンンンンン!!!!ドゴンッ!!!ブロロロロ……

 身軽な俺から遅れて、巨躯のバイクが回転しながら俺の微かに左側を通り過ぎて行った。
 あと数十センチずれていたらと考えるとゾッとする。
 ダメージが抜けきらない俺の眼前でバイクが跳ね、最後はスピンするように横転した車体を回転させつつ停止。
 なんとか軽症で済んだのは、日ごろの努力もあったが運も関与していた。
 なんで倒れたかはさておき、咎人である俺のことを神様はまだ見捨てていなかったらしい。
 全身が軋むように痛む。
 それでも、普段の鍛錬に比べれば……
 苦悶の表情を浮かべながらも、俺はひんやりとした地面に手を付いて身を起こした。
 数メートル先に転がったバイク。
 よく見ると、そのスポークホイールの前輪に棒状の何かが突出していた。

「かた……な……?」

 タイヤの回転を妨げる形で一振りの刀が挿入されていた。
 あれはうちの隊員達の物ではない。
 と、するならば……!
 軽い脳震盪でクラクラする頭を軽く振り、即座に戦闘態勢に入ろうとするも……

「がはッ……!?」

 意識を断つ一撃が延髄へと走り────視界が暗闇へと吸い込まれていく。
 ただでさえ気絶寸前だった俺に、それを耐えるほどの力は残されておらず、

「く…そ……が……」

 漏らした悪態と一緒に身体から力が抜け落ちた。
 最後に視界に映ったのは、紅い革靴と白い獣脚。
 無様な姿でバイクに伸ばした自分の指先だけが微かに映っていた。
 結局俺は、走っていたバイクの前輪に刀を投げ入れられたことも、誰がそんなことをしたのかも知ることの無いまま、意識を完全に失った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

処理中です...