アルファ貴公子のあまく意地悪な求婚

伽野せり

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レア・アルファ 4

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「さあ、ここだよ」
 高梨にうながされて、陽斗は車をおりた。彼の後をついてホテルの正面扉をくぐる。
 しがない庶民の自分は足を踏み入れたこともない高級ホテルだ。大きなシャンデリアが飾られた広くて壮麗なホールには、外国人客もちらほら見られる。

 高梨はフロントで何かを話し、カードキーを受け取って戻ってきた。
「さあいこう、こっちだよ」
 陽斗にとっては一歩踏み出すのもおそれ多い空間だが、高梨はまるで自分の家のように歩いていく。

「もしかして、ここ、あんたのホテル?」
「そうだよ。まだ半年前に建てたばかりなんだ」
「へぇ……」

 すごすぎて声も出ない。高梨は陽斗を誘導して、鏡面仕あげ扉のついたエレベーターに乗りこみ、最上階のボタンを押した。

「ホテルの部屋に、見せたいものが?」
「そう。君のために用意したものさ」
「……」

 陽斗は横に立つ男を警戒する目で見あげた。対する高梨は、まるでプレゼントを渡す人のように、ちょっとウキウキした表情をしている。この男は人形のような精緻な顔立ちをしているのに、中身は中々人間くさいようだ。

 やがてエレベータは、涼しげなベル音を響かせて最上階に到着した。ワンフロアに数部屋しかないらしく、隣りあう扉の間隔がとても広い。その一番奥にある、ひときわゴージャスなつくりの両びらきドアを、高梨はカードで解錠した。

「さあどうぞ、中に入って」
 扉を自ら手でおさえ、陽斗を先に部屋に入れる。
 陽斗は何が待っているのかと用心しながらドアをくぐり抜けた。

「――」
 そこには、見たこともないほど豪華な、美しい部屋が広がっていた。

 三十畳はあるかと思われるリビングに、続きのダイニング。十人は座れる大きな布張りソファに、大理石の敷きつめられた床。高級なペルシャ絨毯。上品に配置されたデザイン性の高い家具や照明は、素人の陽斗が見てもわかる一流品ばかりだ。奥には洒落たバーカウンターまである。

「うわ……」
 淡いライトに照らされた室内は、しかし決して派手ではなく落ち着いた雰囲気に造られていた。

「どう? 気に入った?」
 陽斗の後ろから、高梨が声をかける。
「すげー。こんな立派なホテル、初めて入った」
「ロイヤルスイートなんだ。このホテルで一番高級な部屋だよ。ほら、こっちも見て」

 背を押されて連れていかれたのは、南側一面に設えられたガラス窓だ。その外側に、広いバルコニーが見える。バルコニーには植木がならび、きれいな石が敷かれ、真ん中に噴水まであった。所々におかれたランプがオレンジ色の光を放ち、幻想的な空間となっている。視界の先には煌めく都心の夜景。素晴らしい空中庭園だった。

「きれいだな」
「寝室も見て」
 手を取られ、高梨に引っ張られるまま奥にある寝室へと向かう。そこにはダブルベッドがおかれていた。ゲスト用の寝室もありそちらはツインになっている。どちらも美しく、繊細な装飾が施されていた。

 デザインのテーマはアジアンらしい。籐や竹などの自然素材がふんだんに使われている。しかし全体的に洗練されたスタイリッシュな印象を受けた。 
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