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真夜中のおうちごはん 5
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「まだ寝てたほうがいいです。全然睡眠足りてないんでしょう」
肩に手をおくと、男はその手の上に、自分の手のひらを重ねた。
「大丈夫。僕はショートスリーパーだと言っただろう。そういう風に作られているんだ。よく働けるように。だからもう眠りは足りてる」
「……そんな」
作られている、という言葉に胸が痛む。自分のことをそんな風にあらわして欲しくなかった。
眉尻をさげた陽斗に、高梨が穏やかな口調できいてくる。
「それより、お腹すいたな。今は何時なんだろう」
壁にかかったシンプルな時計は、午前一時をさしていた。
「今からでも夕食にします? 一応作ってあるけど」
「ホント? なら食べるよ」
高梨は短い睡眠で元気を取り戻したようで、身軽な様子でベッドからおりた。
そうして部屋を出る陽斗の後をついて、台所までやってくる。
「すごい。これ、君が作ったの?」
大皿に盛られたいなり寿司を見て驚きの声をあげた。
「ん」
陽斗は褒められたのが嬉しいのと気恥ずかしいのとで、短く返事をした。
「芸術品だな」
「さあ、テーブルに持っていきます。あと、俺は湯豆腐とすまし汁を仕あげますから」
ふたりで協力して、深夜に夕食の準備をする。窓の外は真っ暗で、世間の人々は皆眠っているというのに、自分たちだけは起きて活動をしている。それが何だか隠された秘密の、そして大切な時間のような気がして、陽斗の心は知らず弾んでいた。
セッティングされた料理を、いつものように高梨がスマホで写真を何枚も撮る。
「いただきます」
それからふたりで手をあわせた。
「君は本当に手先が器用なんだなあ。こんなに手のこんだ料理を作れるなんて」
いなりの一番上には、型でくりぬいた小さな人参ものっている。可愛い飾りを眺めながら高梨がしみじみと言った。
「俺、こういう細かい仕事、好きなんです。きれいに丁寧に作りあげていくのが楽しくて。だからトリミングの腕も誰にも負けないつもりなんだけど」
陽斗もいなりを頬張りながら話す。実際、専門学校時代も陽斗はクラスで一番優秀な生徒だった。
「どうしてもトリマーがいいのかい? 美容師や、他の技巧的な仕事じゃなくて」
「うん。犬や猫もすごく好きだし」
「そうか」
「動物は裏切らないでしょう。特に犬は、素直で可愛いところが好きなんです」
陽斗がアサリの貝殻を取っていると、ふと、目の前の相手が黙りこくっているのに気がついた。
「……何か?」
「いや」
高梨がじっとこちらを見つめている。陽斗もきょとんと相手を見返した。
「君に飼われる犬は幸せだろうと思ってね」
その言葉に、昔自宅で飼っていた犬のことを思い出す。
「……以前は、柴のミックス犬を飼ってました。けど、老衰で死んでからは飼ってないんです。何か、可哀想で」
「そうか」
高梨は視線をテーブルに一度落とし、それからまた目をあげて言った。
肩に手をおくと、男はその手の上に、自分の手のひらを重ねた。
「大丈夫。僕はショートスリーパーだと言っただろう。そういう風に作られているんだ。よく働けるように。だからもう眠りは足りてる」
「……そんな」
作られている、という言葉に胸が痛む。自分のことをそんな風にあらわして欲しくなかった。
眉尻をさげた陽斗に、高梨が穏やかな口調できいてくる。
「それより、お腹すいたな。今は何時なんだろう」
壁にかかったシンプルな時計は、午前一時をさしていた。
「今からでも夕食にします? 一応作ってあるけど」
「ホント? なら食べるよ」
高梨は短い睡眠で元気を取り戻したようで、身軽な様子でベッドからおりた。
そうして部屋を出る陽斗の後をついて、台所までやってくる。
「すごい。これ、君が作ったの?」
大皿に盛られたいなり寿司を見て驚きの声をあげた。
「ん」
陽斗は褒められたのが嬉しいのと気恥ずかしいのとで、短く返事をした。
「芸術品だな」
「さあ、テーブルに持っていきます。あと、俺は湯豆腐とすまし汁を仕あげますから」
ふたりで協力して、深夜に夕食の準備をする。窓の外は真っ暗で、世間の人々は皆眠っているというのに、自分たちだけは起きて活動をしている。それが何だか隠された秘密の、そして大切な時間のような気がして、陽斗の心は知らず弾んでいた。
セッティングされた料理を、いつものように高梨がスマホで写真を何枚も撮る。
「いただきます」
それからふたりで手をあわせた。
「君は本当に手先が器用なんだなあ。こんなに手のこんだ料理を作れるなんて」
いなりの一番上には、型でくりぬいた小さな人参ものっている。可愛い飾りを眺めながら高梨がしみじみと言った。
「俺、こういう細かい仕事、好きなんです。きれいに丁寧に作りあげていくのが楽しくて。だからトリミングの腕も誰にも負けないつもりなんだけど」
陽斗もいなりを頬張りながら話す。実際、専門学校時代も陽斗はクラスで一番優秀な生徒だった。
「どうしてもトリマーがいいのかい? 美容師や、他の技巧的な仕事じゃなくて」
「うん。犬や猫もすごく好きだし」
「そうか」
「動物は裏切らないでしょう。特に犬は、素直で可愛いところが好きなんです」
陽斗がアサリの貝殻を取っていると、ふと、目の前の相手が黙りこくっているのに気がついた。
「……何か?」
「いや」
高梨がじっとこちらを見つめている。陽斗もきょとんと相手を見返した。
「君に飼われる犬は幸せだろうと思ってね」
その言葉に、昔自宅で飼っていた犬のことを思い出す。
「……以前は、柴のミックス犬を飼ってました。けど、老衰で死んでからは飼ってないんです。何か、可哀想で」
「そうか」
高梨は視線をテーブルに一度落とし、それからまた目をあげて言った。
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