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発情してはいけない 3
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彼が言うには、犯人は以前から光斗に密かに想いをよせていたアルファで、襲う機会をずっとうかがっていたということだった。
「駅のホームで光斗さんを押したのも、その男でした。押して同時に助けて、信頼を得ていたようです。陽斗さんを家の前で襲ったのも彼でした。それは、警察に提出された画像で同一人物と確認されました。顔は不明瞭でしたが、服装が一致していましたので。仲のいい親友ということで光斗さんを油断させていたのでしょう、今日の午後、学校内の資料室に光斗さんを言葉巧みに連れこんで、無理矢理行為に及ぼうとしたのです。それを、察したボディガードが踏みこんで現場を押さえました」
「そんな……」
「男は、光斗さんが明日、番候補と会うと聞いて、焦ったようでした」
「そうだったんですか」
陽斗は光斗の肩を抱きよせた。
「怖かっただろ」
「……うん。でも、すぐに助けてもらえたから。首輪をペンチで切られただけですんだ」
「よかったよ。何もなくて」
陽斗は改めて鷺沼に礼を言った。高梨が帰ってきたら、彼にも感謝の言葉を伝えなければならない。
「男は暴行罪と器物損壊罪で逮捕されました。これでストーカー規制法が適用されれば、もう光斗さんのもとにくることはないでしょう。これからのことは、社長が弁護士も手配しますので、そちらを通じて解決していけばいいと思います」
「何から何まで、すみません」
「構いませんよ。我々も役に立ててよかったです」
ストーカー騒ぎはこれで一段落するようで、陽斗もずっと胸に抱えていた重荷がひとつおりて安心した。明日、光斗が津久井と番になり、渡米すれば二度とこんなことは起きないだろう。
そうしていたら鷺沼のスマホが鳴った。画面を確認して、鷺沼が申し訳なさそうに言う。
「すみません、急ぎの用事を放り出してきてしまったもので、戻らなければならなくなりました。おふたりで大丈夫でしょうか?」
「あ、はい」
忙しいところを、わざわざ光斗のために奔走してくれたらしい。
「もうしばらくしたら社長が帰宅されると思いますので」
「わかりました。本当にありがとうございます」
玄関先まで陽斗だけが鷺沼を見送りに出て、彼が去った後、厳重に施錠した。ストーカーはもうこないだろうが、用心に越したことはない。
リビングに戻ると、光斗が疲れた顔でぼんやりと部屋を見渡していた。
「光斗、何か、飲み物でも用意するか」
「うん、大丈夫。バッグにペットボトルあるから。……それより、このお屋敷すごいね。陽斗、ここで治療を受けてたの?」
「えっ。あ、ああ」
騒動で忘れていたが、光斗は治療のことを何も知らない。
「実は、まあ、話せば長いことなんだけど。その、治療の件で、世話になってるのが高梨さんで、この家の主人なんだ」
「その人が、陽斗のつきあってるアルファなの?」
「えっ。ち、違うよっ」
いきなり核心に触れられて、焦った陽斗は反射的に否定してしまった。
「え? 違うの? オレはそうだと思ってたんだけど」
光斗が傍らにおいていたバッグからペットボトルを取り出しながら言う。
「オレのことにしたって、ここまで世話をしてくれるのは、陽斗のことを大事にしてるからなんだと思ってた」
光斗の言葉に、陽斗はハッとさせられた。
「駅のホームで光斗さんを押したのも、その男でした。押して同時に助けて、信頼を得ていたようです。陽斗さんを家の前で襲ったのも彼でした。それは、警察に提出された画像で同一人物と確認されました。顔は不明瞭でしたが、服装が一致していましたので。仲のいい親友ということで光斗さんを油断させていたのでしょう、今日の午後、学校内の資料室に光斗さんを言葉巧みに連れこんで、無理矢理行為に及ぼうとしたのです。それを、察したボディガードが踏みこんで現場を押さえました」
「そんな……」
「男は、光斗さんが明日、番候補と会うと聞いて、焦ったようでした」
「そうだったんですか」
陽斗は光斗の肩を抱きよせた。
「怖かっただろ」
「……うん。でも、すぐに助けてもらえたから。首輪をペンチで切られただけですんだ」
「よかったよ。何もなくて」
陽斗は改めて鷺沼に礼を言った。高梨が帰ってきたら、彼にも感謝の言葉を伝えなければならない。
「男は暴行罪と器物損壊罪で逮捕されました。これでストーカー規制法が適用されれば、もう光斗さんのもとにくることはないでしょう。これからのことは、社長が弁護士も手配しますので、そちらを通じて解決していけばいいと思います」
「何から何まで、すみません」
「構いませんよ。我々も役に立ててよかったです」
ストーカー騒ぎはこれで一段落するようで、陽斗もずっと胸に抱えていた重荷がひとつおりて安心した。明日、光斗が津久井と番になり、渡米すれば二度とこんなことは起きないだろう。
そうしていたら鷺沼のスマホが鳴った。画面を確認して、鷺沼が申し訳なさそうに言う。
「すみません、急ぎの用事を放り出してきてしまったもので、戻らなければならなくなりました。おふたりで大丈夫でしょうか?」
「あ、はい」
忙しいところを、わざわざ光斗のために奔走してくれたらしい。
「もうしばらくしたら社長が帰宅されると思いますので」
「わかりました。本当にありがとうございます」
玄関先まで陽斗だけが鷺沼を見送りに出て、彼が去った後、厳重に施錠した。ストーカーはもうこないだろうが、用心に越したことはない。
リビングに戻ると、光斗が疲れた顔でぼんやりと部屋を見渡していた。
「光斗、何か、飲み物でも用意するか」
「うん、大丈夫。バッグにペットボトルあるから。……それより、このお屋敷すごいね。陽斗、ここで治療を受けてたの?」
「えっ。あ、ああ」
騒動で忘れていたが、光斗は治療のことを何も知らない。
「実は、まあ、話せば長いことなんだけど。その、治療の件で、世話になってるのが高梨さんで、この家の主人なんだ」
「その人が、陽斗のつきあってるアルファなの?」
「えっ。ち、違うよっ」
いきなり核心に触れられて、焦った陽斗は反射的に否定してしまった。
「え? 違うの? オレはそうだと思ってたんだけど」
光斗が傍らにおいていたバッグからペットボトルを取り出しながら言う。
「オレのことにしたって、ここまで世話をしてくれるのは、陽斗のことを大事にしてるからなんだと思ってた」
光斗の言葉に、陽斗はハッとさせられた。
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