鈍感なオメガは3兄弟に溺愛される

キルキ

文字の大きさ
4 / 15

4

しおりを挟む
発情も収まり、足取りがしっかりしてきたので自室に戻ることにした。水を持ってきた紘一はまだ心配そうな顔をしていたが、いつものことだからと言えば納得してくれた。

「今日くらいは俺の部屋にいてほしいんだけどな」
「すぐ隣の部屋にいるんだから大丈夫だって」
「もー……春斗のヒートが短いのは知ってるけど、心配だったから休みは明日も取ってるからね。いつでも呼んで」

紘一がいつものように髪を手で撫でてくる。薬を飲んだはずなのに、触れられたところが熱くなってきた。

また発情してしまっては薬を飲んだ意味がない。これはまずいとそそくさと部屋を出る。

体液を流すために浴室に入る。シャワーを浴びながら、ふと、自分の後ろに手をやった。まだ潤みが残るそこを指の腹で押してみて、ぞっと肌が鳥肌立つ。発情時に後が疼くのはいつもの事だが、なんだか怖くて自分でも中に何かをいれたことがない。越えてはいけない一線のように感じて、紘一が触れる時も思わず緊張してしまうのだ。

情欲がぶり返しそうなので早々に指を離して、シャワーの水の勢いを強めた。







「あのさ……兄貴といちゃついた後に、この部屋に来るのやめてくれる?」

黒縁眼鏡をかけた男が、デスクチェアにだらしなく腰掛けたまま、呆れたように言った。
首元の伸びたTシャツに、色の褪せたスウェットパンツ。色白で、腕は細く、いかにも外に出ていませんといった風貌。井原家の三男である、和馬だ。

和馬は俺より1つ年上で、第二の性はベータ。
井原家の兄弟の中で、彼だけが唯一のベータなのだ。兄である双子は二人ともアルファで、そのせいで幼い頃から劣等感を感じているようだった。

シャワーを浴びた足でそのまま和馬の部屋に押しかけ、今は二人でゲームをしている最中だ。ソファベッドに転がり、慣れ親しんだコントローラーを握って、画面のキャラを操作する。長い間二人で遊んでいる対戦ゲームだが、俺は一向に負けっぱなしだった。それでも楽しくて、何度もこの部屋に通っている。対戦ゲームをしたり、RPGゲームで一緒に考察しながら攻略したりするのが楽しくて、ゲームをするのが幼い頃からの習慣みたいになっていた。

「まだ顔、赤いよ。自室で休んでた方がいいんじゃないの」

頬に手のひらが触れた。気がつくと和馬が椅子から立ち上がり、俺を見下ろしていた。温度を確かめるように頬を撫でられ、皮膚が冷たくて気持ちいい。

「んー……別にもう平気だし」
「薬でどうにかしてるだけなんでしょ?完全に収まってるかどうかはわかんないじゃん」
「大丈夫だって。今の俺には息抜きの時間が必要なの!」
「息抜きって、ゲームすること?俺は楽しいけどさ、お前はボコされてるだけじゃん。楽しいわけ?」
「ボコされてないって!小さい頃と一緒にしないで……あ!」

画面の中で自分のキャラがふっ飛ばされる。和馬がよそ見をしてる隙に……と思っていたのに負けてしまった。悔しすぎる。

「はい勝ち~。お前さ、突っ込みすぎなんだよ。このキャラは性能的には待ちが強いんだから。無理に前出る必要ないの。相変わらず雑魚だな」
「煽らないでよ。性格悪いぞ。それに俺だって一応、性能と状況を考えたうえで操作してるし。少しは成長してるし、雑魚じゃねえし」
「はいはい、怒るなって。じゃ、ガキはもう部屋に戻りな。満足したでしょ」

和馬がけらけらと笑い声をあげた。くたっとした部屋着を着てる男に馬鹿にされてるが、彼とは本気で喧嘩になったことはない。

「俺の事情、知ってるの、和馬さんだけなんだしさ。もう少し遊んでよ」
「……いいよ。でも後一戦だけね。こっちだってお前に無理をさせたくないからさ」

仕方ないなぁと言いながら再びコントローラーを握ってくれる。こういう、何だかんだで面倒がいいところが好きだ。

初対面の頃はやたら偉そうな小学生だった。まだ幼児だった俺にさん付けを強要するような人で、最初は怖い印象を持っていた。
けれど今思えば、あれは彼なりに緊張していたせいなのだと分かる。何気にプライドが高いところや照れ屋なところも含めて、人付き合いが不器用であることも今では知り尽くしている。

そして、そんな和馬さんに、俺は密かに恋心を抱いていた。

物心がついた頃から、俺はやたらと探究心が強い子どもだった。
わからない言葉や文字を知りたがったり、本をたくさん読みたがったり、おもちゃをすぐに分解してしまったり、星はどうして光るのか、なんてことも。

井原家の三兄弟とよく遊んでいたあの頃、双子のアルファたちに聞いても、春斗にはまだ難しいんじゃないかな?とか、それより外で遊んだほうが楽しいよ、とか。そもそも話を無視されたりとか。

でも、和馬さんだけは違った。

面倒くさそうな顔をしながらも、俺の質問を遮らず、分かるところまできちんと噛み砕いて説明してくれた。
本の話も、ゲームの設定も、宇宙の仕組みも。

俺が知りたいと言えば、彼は仕方ないなと言いながら、必ず付き合ってくれた。度々、彼も知らないような質問をしてしまって困らせたこともあるけど、その度に図書館に行って調べてくれていた。
その背中がやけに大人びていて――子どもだった俺にはかっこよく見えた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

告白を全部ドッキリだと思って振ったら、三人のアイドルが壊れかけたので彼氏役をすることになりました

海野(サブ)
BL
大人気アイドルヘイロー・プリズムのマネージャーである灯也はある日、その担当アイドル 光留 輝 照真 に告白されるが、ドッキリだと思い、振ってしまう。しかし、アイドル達のメンタルに影響が出始めてしまい… 致してるシーンと受けが彼氏役を引き受けるとこしか書いてませんので悪しからず。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...