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大輝side 番外
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住宅街の片隅にお行儀よく座っていたあの猫に、目を奪われた。
空の色と同じ青色の瞳を見て、なにか運命のようなものを感じたのだ。もしもあの子がみきちゃんの腕で眠らず、連れていけなかったとしても。俺は何度でもあの猫を探しにあの路地を訪ねたと思う。
あのか弱そうな猫のことを、見捨てたくないと思ったのだ。
身体を洗い病院でノミ取りしてもらって、すっかり普通の家猫になったとらまるはとても美しい白い毛並みを持っていた。雲のように白くてふわふわしてて、目に入ると思わず手が伸びた。撫でると嬉しそうに目を細めてくれるからいっぱい撫でたくなってしまう。本当に可愛い子だ。
随分人馴れしている猫だったけど、抱っこは頑なに嫌がった。もしかして、昔悪い人間に連れ去られそうになったことがあったりするのだろうか。とらまるはとにかく、俺に主導権を渡すのを恐れているように見える。彼が安心して暮らせるように、俺は彼が嫌がることを極力しないように努めた。
・
・
・
まさかとらまるが人間になった挙げ句、俺のお嫁さんになりたいと言い出すなんて誰が予想できただろうか。そんなことがあるなんて、夢の中くらいじゃないと起きないと思っていたけれど、夢じゃなかった。本当にびっくりした。
そもそもあの子、お嫁になるとか言ってるけど、自分が男の子だってちゃんとわかっているのだろうか?
動物って生まれた環境次第では自分のことでも勘違いしてしまうことがあるらしいから、とらまるも自分のことを女だと思っているのかもしれない。男同士でどうこうなりたいとか気軽に言う事じゃないって、あの子はわかっていないんだろうな。
……でも、男であるとらまるにああいうこと言われても、不快な気持ちは一ミリも湧いてこなかった。
・
・
・
ある日洗濯物を干していると、とらまるが背中にくっついてきた。俺が家事をしているときに甘えてくるなんて珍しい、と思い振り返ると、彼は俺に何かを手渡してきた。
これは……、四つ葉のクローバー?
そういえばうちの庭には、シロツメクサが咲く場所があるんだった。きっとそこから探してきてくれたのだろう、けど。
猫って四つ葉とか知っているのか?
「だいきー」
無邪気に笑うとらまるに、何を言えばいいかわからなくなってしまった。聞きたいことは山ほどあるんだけどなぁ。
でも、彼が俺のためにクローバーを摘んできてくれたということは間違いない。優しく笑ってお礼を言うと、とらまるは機嫌良さそうに身体を揺らした。
「すーき!ふははっ」
幼子のように笑いながらどこかに走っていく彼の背中を見届けながら、彼の気まぐれを愛おしく思った。
……うん。本当にあの子は、出会ったときからずっとかわいいやつだ。
空の色と同じ青色の瞳を見て、なにか運命のようなものを感じたのだ。もしもあの子がみきちゃんの腕で眠らず、連れていけなかったとしても。俺は何度でもあの猫を探しにあの路地を訪ねたと思う。
あのか弱そうな猫のことを、見捨てたくないと思ったのだ。
身体を洗い病院でノミ取りしてもらって、すっかり普通の家猫になったとらまるはとても美しい白い毛並みを持っていた。雲のように白くてふわふわしてて、目に入ると思わず手が伸びた。撫でると嬉しそうに目を細めてくれるからいっぱい撫でたくなってしまう。本当に可愛い子だ。
随分人馴れしている猫だったけど、抱っこは頑なに嫌がった。もしかして、昔悪い人間に連れ去られそうになったことがあったりするのだろうか。とらまるはとにかく、俺に主導権を渡すのを恐れているように見える。彼が安心して暮らせるように、俺は彼が嫌がることを極力しないように努めた。
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まさかとらまるが人間になった挙げ句、俺のお嫁さんになりたいと言い出すなんて誰が予想できただろうか。そんなことがあるなんて、夢の中くらいじゃないと起きないと思っていたけれど、夢じゃなかった。本当にびっくりした。
そもそもあの子、お嫁になるとか言ってるけど、自分が男の子だってちゃんとわかっているのだろうか?
動物って生まれた環境次第では自分のことでも勘違いしてしまうことがあるらしいから、とらまるも自分のことを女だと思っているのかもしれない。男同士でどうこうなりたいとか気軽に言う事じゃないって、あの子はわかっていないんだろうな。
……でも、男であるとらまるにああいうこと言われても、不快な気持ちは一ミリも湧いてこなかった。
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ある日洗濯物を干していると、とらまるが背中にくっついてきた。俺が家事をしているときに甘えてくるなんて珍しい、と思い振り返ると、彼は俺に何かを手渡してきた。
これは……、四つ葉のクローバー?
そういえばうちの庭には、シロツメクサが咲く場所があるんだった。きっとそこから探してきてくれたのだろう、けど。
猫って四つ葉とか知っているのか?
「だいきー」
無邪気に笑うとらまるに、何を言えばいいかわからなくなってしまった。聞きたいことは山ほどあるんだけどなぁ。
でも、彼が俺のためにクローバーを摘んできてくれたということは間違いない。優しく笑ってお礼を言うと、とらまるは機嫌良さそうに身体を揺らした。
「すーき!ふははっ」
幼子のように笑いながらどこかに走っていく彼の背中を見届けながら、彼の気まぐれを愛おしく思った。
……うん。本当にあの子は、出会ったときからずっとかわいいやつだ。
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えっ…!やばいです( ´›ω‹`)
可愛いすぎて…私の中の感情が暴走しております…!幸せです…(*´˘`*)♡
感想ありがとうございます〜!とても嬉しいです!
幸せを感じていただけたようで何よりです⸜(* 'ᵕ' *)⸝