黄金の檻 〜高慢な貴族連中を裏から支配するんでよろしく〜

とんでもニャー太

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蛇蝎の涙①

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俺は窓辺に立ち、上層街の景色を眺めていた。
ローレン家の顧問として、今や俺はこの豪華絢爛な邸宅で暮らしている。
だが、この華やかな世界の裏で蠢く闇を、俺は決して忘れない。

「カイン」

背後から聞こえた声に振り返ると、そこにはセリアが立っていた。
彼女の瞳には、以前には見られなかった深みがある。

「どうしたんだ? セリア」
「父のことなんだけど……最近、様子がおかしいの」

俺は内心で笑った。
ついに来たか――。

「どんなふうに?」

セリアは躊躇いがちに話し始めた。

「深夜に……誰かと密会しているみたいなの。それで、その後すぐにガリウス家やマーキュリー家の人間と接触して……」

俺は真剣な表情を装った。

「それは確かに気になる話だな。調べてみよう」

セリアは安堵の表情を浮かべた。

「ありがとう、カイン。あなたならきっと真相を突き止めてくれると信じてるわ!」

俺は優しく微笑んだ。
だが、その裏で冷たい笑みを浮かべていた。

愚かな女だ……。
ローレンの動きなど、とうの昔に把握している。

そして今、それを利用する時が来たのだ。


* * *


数日後、俺は下層街に足を運んでいた。
かつての仲間、ファラントとの密会のためだ。

「よう、カイン。いや、カイン様か? ハッ、随分と偉くなったもんだぜ」

薄暗い路地裏で、ファラントが不敵な笑みを浮かべて現れた。

「よせよ」俺は軽く答えた。
「で、例の件はどうだ?」

ファラントは周囲を確認してから、小声で話し始めた。

「ガリウス家の内部情報、手に入れたぜ。だがな、お前にゃ悪いが、もっと高く買ってくれる相手が現れてなぁ……」

俺は一瞬、目を細めた。
裏切り、か――。

だが、俺はすぐに冷静さを取り戻した。
ファラントは頭が回る。
別にこうなったところで、何ら不思議はない。
それに……手は打ってある。

「そうか。誰に売る?」
「それは言えねえな。秘密厳守ってやつよ」

ファラントは薄ら笑いを浮かべた。
だが、その目は笑っていなかった。

俺は静かに笑った。

「分かったよ。お互い、商売だからな」

ファラントは少し驚いたように俺を見た。

「随分とあっさりしてるな。昔のお前なら、すぐにキレてたもんだが……」

俺は肩をすくめた。

「まあ、立場が変われば考え方も変わるさ」

そう言いながら、俺は内心で冷笑を浮かべていた。
お前の裏切りは想定内だと。

「そうか。じゃあ、これでお別れだな」

ファラントが立ち去ろうとした時、俺は彼を呼び止めた。

「ああ、そうだ。ファラント、最後に一つ忠告がある」
「なんだよ?」

「ヴィクターに気をつけろ」

ファラントの表情が凍りついた。
ヴィクター―― ジャッカルのNo.2であり、ファラントの右腕だ。

「どういう意味だ?」
「さあな。ただの忠告さ」

俺はそう言って、その場を立ち去った。

* * *

その夜、俺は下層のとある酒場の一室で人を待っていた。
しばらくすると、褐色で顔にタトゥーの入った男が入って来た。

「ヴィクター、お前が来たってことは……話はついたようだな」

俺はにやりと笑った。

「ああ、ファラントはもういない。これからはこの俺がジャッカルの頭だ」

ヴィクターは冷たい目で俺を見た。

「いいか、カイン、勘違いするなよ? おまえの言った通りにするのは、これで最後だ」

「そうか」俺は軽く頷いた。
「お前の野心は分かる。だが、お前がファラントを倒せたのは、俺の情報があったからだ」

俺はファラントが部下に渡す報酬を着服していた事実を証拠付きで教えてやっていた。
お陰でヴィクターは内部の支持を得ることがたやすかったはずだ。

「くっ…分かってるさ」
ヴィクターは歯ぎしりした。

「良い心掛けだ」俺は満足げに言った。
「で、例の情報は?」

ヴィクターは小さな封筒を差し出した。

「これだ。ガリウス家の内部情報のすべてだ……」

俺は封筒を受け取り、中身を確認した。
そこには、ガリウス家の秘密の取引や、後継者争いの内幕が詳細に記されていた。

「よくやった。これで、ジャッカルの新しい頭としての地位は磐石だな」

ヴィクターは少し緊張した様子で頷いた。

「ああ。だが、これから俺達は対等な関係だ、カイン」

俺は薄く笑った。

「もちろんだ。互いに利用し合う関係さ」

その言葉に、ヴィクターは少し安心したように見えた。

――馬鹿め。
対等だと? 所詮、お前も俺の駒の一つに過ぎないのだ。

ファラントはまだ自分で考える頭があった。
だがヴィクター、お前は違う。
欲望と場当たり的な対応しかできない、粗暴な盗人だ。

俺はヴィクターと別れ、上層街へ戻る。

「ローレン当主、お前も俺の思い通りに踊るがいい」

夕陽が沈みゆく帝都を赤く染めていた。
それは、まるで俺の野望が世界を飲み込んでいくかのようだった。

俺は再び冷笑を浮かべた。
ファラントの裏切り、ヴィクターという新たな手駒、そしてこれから操るローレン当主。
全てが俺の掌の上で踊っている。

この世界は、俺のためにある舞台に過ぎないのだ。
そして俺は、その舞台を思いのままに操る影の演出家。

蛇蝎の涙など誰も気に留めはしない。

俺は頂点への階段を登っていく。
ゲームを始めたのは俺だ。

他の誰にも止められはしない。
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