猫貴族ウル・カウネールの華麗なる猫(ニャン)生

とんでもニャー太

文字の大きさ
9 / 20

猫貴族の逆襲!青き薔薇と月光の密議

しおりを挟む
「リリア、どうしてここに?」
 僕は驚きを隠せずに尋ねた。尻尾が少し揺れている。

「ウル、あなたが危ないところに足を踏み入れようとしているって感じたの」
 リリアの瞳には真剣な光が宿っていた。

 ハーバート卿が不審そうな目で僕たちを見ている。

「おや、ムーンブルーム令嬢。これは思わぬ再会ですな」

「ハーバート卿」リリアが優雅にお辞儀をする。「ウルと大切な話があるので、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか」

「ほう……」ハーバート卿は少し躊躇した後、「わかりました。では、失礼します」と言って去っていった。

 二人きりになると、リリアが小声で話し始めた。

「ウル、クロフォード皇子の本当の狙いがわかったわ。教育改革案の裏に隠された真の目的が……」

「僕も聞いたんだ。アルフレッド皇子から」
 僕は耳をぴくぴくさせながら周囲を警戒する。

「そう……じゃあ、あなたも危険を承知で動いているのね」
 リリアの表情に、心配と感心が混ざっている。

「うん。僕の提案が思わぬ方向に利用されそうだから、何とかしなくちゃ」

 リリアが僕の手を取った。
「一緒に立ち向かいましょう。私たちにしかできないことがあるはず」

 その瞬間、僕の心臓が大きく跳ねた。
 リリアの手の温もりが、勇気を与えてくれる。

「そうだね。でも、どうすれば……」

 リリアが周囲を見回してから、さらに声を潜めた。
「ねえウル、明日の夜、カウネール邸の裏庭で会えない? いくつか思いついたことがあるの」

「わかった。青い薔薇の下で待ってるよ」


 ――翌日の夜。
 月明かりに照らされた庭で、僕はリリアを待っていた。
 青い薔薇が、銀色に輝いている。

「ウル、来たわ」
 リリアが静かに近づいてきた。

「よく来てくれた。誰にも気づかれなかった?」

「ええ、大丈夫よ」
 リリアが僕の隣に座る。

「それで、どんなアイデアなの?」
 僕は好奇心いっぱいの目でリリアを見つめた。

「まず、クロフォード皇子の教育改革案の詳細を把握する必要があるわ。それから……」

 リリアの説明を聞きながら、僕は次第に興奮してきた。
 彼女のプランは大胆でありながら、緻密だった。

「なるほど! つまり、僕たちが……」

「そう、私たちが本当の教育改革案を作るの。クロフォード皇子の案の問題点を指摘しつつ、より良い代替案を提示するのよ」

「でも、それだけで大丈夫かな?」
 僕は少し不安そうに耳を傾けた。

 リリアが優しく微笑んだ。
「ここからが重要なの。あなたの影響力と、私の家柄。それに、アルフレッド皇子の協力があれば、きっと道は開けるはず」

「そっか……」
 僕は深く考え込んだ。

 突然、近くの茂みがサワサワと揺れた。
 僕とリリアは驚いて振り向く。

「誰かいるの?」リリアが小声で言った。
「見てくる」

 僕は静かに茂みに近づいた。
 そして、中を覗き込むと――

「にゃっ!?」

 そこには、アルフレッド皇子が身を潜めていた。

「や、やあ、ウル君、リリアさん。素晴らしい夜だね」
 アルフレッド皇子が、照れくさそうに言った。

「皇子殿下、どうしてここに?」リリアが驚いて尋ねる。

「実は……二人の動きが気になってね。そして、今の会話も聞いてしまった」

 僕とリリアは顔を見合わせた。

「心配しないで」アルフレッド皇子が続ける。「むしろ、君たちの計画に協力したい。この国のためにも、兄上の暴走を止めなければならない」

 僕は尻尾をピンと立てて言った。
「本当ですか? それなら、私たちの計画はもっと……」

「ウル」リリアが僕の言葉を遮った。「まずは皇子殿下に、詳しい話を聞いてみましょう」

 アルフレッド皇子は頷いた。
「ああ、全てお話しよう。そして、これからどう動くべきか、一緒に考えよう」

 月明かりの下、青い薔薇に囲まれて、三人の密議が始まった。
 猫貴族、才女、そして良心的な皇子。

 彼らの新たな戦いの幕が、今まさに上がろうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...