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Story2-awakening- 罰せられる男
Ⅰ
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「第三倉庫で男がデキている 社内風紀が乱れている」
匿名のタレコミは1ヶ月前、私のメールアドレスに突然届いた。
名刺には記載しているアドレスだから別に隠しているわけではないが、かと言って、社内外の誰しもに公表しているわけではない。
送付主は誰だ?
いったいどこで私のアドレスを知り、何故こんな内容を直接送りつけてきたのか。
総務や人事など、相談窓口なら、もっと身近にあるはずだ。他意があるとしか考えられない。
発信元は倉庫の近所にある漫喫のデスクトップPCだと早々に特定したものの、自社の社員や派遣スタッフの利用も多く、内々の調査では人物までは掴めなかった。
真偽を不審に思いつつも、懇意にしているセキュリティ会社に急遽依頼して、例の倉庫内の死角になり得る全てに、監視カメラを増設したのだった。
男同士がヤリまくろうが、知ったことではない。
ただ社内恋愛中の恋人が盛った程度なら、行き過ぎた行為として鼻で笑い、厳重注意くらいで済ませたかも知れない。
場所が、あの倉庫「D8エリア」でなければ。
ただの度が過ぎた破廉恥な逢瀬かもしれない。
しかし、もしもそれを理由に内部を嗅ぎ回る鼠だったとしたら……、見逃すわけにはいかない。
あの倉庫は、我が社がこの先も安定安泰のビジネスを行っていく上で絶対に欠かせない場所だ。
監視カメラに映る無人の倉庫画像を睨みながら、思わず舌打ちをする。
とんだ経費と手間を掛けさせやがって。
………………………………………………
母国・中国と各国の輸出入貨物を取扱う物流倉庫会社の日本支社長として、私が赴任したのは5年前。
兄である社長から命じられた任務は、事業を軌道にのせ、増収に繋げることだが……、それはあくまで企業としての表向き。
その内実は、地元有力議員とツテをつくり、輸出入担当官にコネをつくることだった。
善良な新参者の顔で商工会に加入し、地域行事に参加しながら、地域貢献の名目で、金にものを言わせて貢いできた。
時に無理難題を呑み、オンナを宛てがい、汚い仕事も笑顔で受け負いながら、ゆっくりゆっくり真綿で首を絞めるように弱みを握ってきたのだ。
船を介した輸出入の窓口となるこの街で、密輸や土地開発、移民受入など、多様な条件を呑ませられるような「土壌」を作らねばならない。
それが、母国で国を司る方々からのお達しであり、その条件を呑むことが他国への事業拡大を認可する前提でもある。
5年目で、それがやっと…!やっと実を結びつつあるのだ。
倉庫には、法をかい潜って持ち込んだ物品が、正規の輸入食材や衣類などに紛れて保管されている。
敷地内の奥まった位置に建つ第3倉庫、なかでもD8エリアは、まさにその保管場所だった。
…………………………………………
防犯カメラに獲物が掛かるのは時間の問題、と思ってはいたが、まさか仕掛けた当日から、第3倉庫D8エリアで、ふたりの男のセックスが録画されるようになるとは思わなかった。
しかも、強姦にもとれるような、激しく手荒いセックスが毎日毎日……!
その生々しい性交は、エロ動画など比ではなく、思わず息を呑むほどサディスティック。
…………なにはともあれ、匿名のタレコミは事実だった、ということだ。
そのうちのひとりは、すぐに分かった。
自社の社員で倉庫管理主任者の李張楊。容姿も能力も平凡に足る男で、性格も凡庸との社内評に、その扱いやすさから日本支社に異動させた。
仕事面は実直だが、さして要領がいいタイプではなく、飛び抜けた功績も、才があるわけでもない。
余計なことを詮索したりするような狡賢さもないことが利点とも言われるような、そんな男だ。
………と、理解していたのだが。
「まさか、同志(ゲイ)だったか」
あの李が、実は男が好きだった、とは面白い。しかも、あれほど傲慢なセックスが好みとは…。
呼び付けた李に、己の性行為中の録画を見せた時の真っ青な顔も面白かったが……、相手が、まさかセンター長とまでヤッている好色と知った時の呆然とした顔色といったらなかった。
その場で、李を本国へ送り返す手筈を進めながら、震える李を尋問する。
相手の派遣が「ヒロモリ」であることは既に特定していた。勤怠も仕事覚えも悪くない。誰に聞いても良い評判しか出てこないのだが……、その私生活を知る者は見当たらない。
ヒロモリについて問い質すと、李は釈明するように、つるつると何でも喋った。
その言葉に嘘は無さそうだ。なぜなら、とっさに嘘を捻り出すような芸当など、この男には出来ないだろうから。
どうやら、逢引にあの倉庫を提案したのは相手の派遣らしい。
だから、聞き出したのだ。
相手の派遣が、何者かを。
派遣社員の顔をして、我が社の社員を手玉にとった売り専の本性を、私がじっくり暴いてやる。
匿名のタレコミは1ヶ月前、私のメールアドレスに突然届いた。
名刺には記載しているアドレスだから別に隠しているわけではないが、かと言って、社内外の誰しもに公表しているわけではない。
送付主は誰だ?
いったいどこで私のアドレスを知り、何故こんな内容を直接送りつけてきたのか。
総務や人事など、相談窓口なら、もっと身近にあるはずだ。他意があるとしか考えられない。
発信元は倉庫の近所にある漫喫のデスクトップPCだと早々に特定したものの、自社の社員や派遣スタッフの利用も多く、内々の調査では人物までは掴めなかった。
真偽を不審に思いつつも、懇意にしているセキュリティ会社に急遽依頼して、例の倉庫内の死角になり得る全てに、監視カメラを増設したのだった。
男同士がヤリまくろうが、知ったことではない。
ただ社内恋愛中の恋人が盛った程度なら、行き過ぎた行為として鼻で笑い、厳重注意くらいで済ませたかも知れない。
場所が、あの倉庫「D8エリア」でなければ。
ただの度が過ぎた破廉恥な逢瀬かもしれない。
しかし、もしもそれを理由に内部を嗅ぎ回る鼠だったとしたら……、見逃すわけにはいかない。
あの倉庫は、我が社がこの先も安定安泰のビジネスを行っていく上で絶対に欠かせない場所だ。
監視カメラに映る無人の倉庫画像を睨みながら、思わず舌打ちをする。
とんだ経費と手間を掛けさせやがって。
………………………………………………
母国・中国と各国の輸出入貨物を取扱う物流倉庫会社の日本支社長として、私が赴任したのは5年前。
兄である社長から命じられた任務は、事業を軌道にのせ、増収に繋げることだが……、それはあくまで企業としての表向き。
その内実は、地元有力議員とツテをつくり、輸出入担当官にコネをつくることだった。
善良な新参者の顔で商工会に加入し、地域行事に参加しながら、地域貢献の名目で、金にものを言わせて貢いできた。
時に無理難題を呑み、オンナを宛てがい、汚い仕事も笑顔で受け負いながら、ゆっくりゆっくり真綿で首を絞めるように弱みを握ってきたのだ。
船を介した輸出入の窓口となるこの街で、密輸や土地開発、移民受入など、多様な条件を呑ませられるような「土壌」を作らねばならない。
それが、母国で国を司る方々からのお達しであり、その条件を呑むことが他国への事業拡大を認可する前提でもある。
5年目で、それがやっと…!やっと実を結びつつあるのだ。
倉庫には、法をかい潜って持ち込んだ物品が、正規の輸入食材や衣類などに紛れて保管されている。
敷地内の奥まった位置に建つ第3倉庫、なかでもD8エリアは、まさにその保管場所だった。
…………………………………………
防犯カメラに獲物が掛かるのは時間の問題、と思ってはいたが、まさか仕掛けた当日から、第3倉庫D8エリアで、ふたりの男のセックスが録画されるようになるとは思わなかった。
しかも、強姦にもとれるような、激しく手荒いセックスが毎日毎日……!
その生々しい性交は、エロ動画など比ではなく、思わず息を呑むほどサディスティック。
…………なにはともあれ、匿名のタレコミは事実だった、ということだ。
そのうちのひとりは、すぐに分かった。
自社の社員で倉庫管理主任者の李張楊。容姿も能力も平凡に足る男で、性格も凡庸との社内評に、その扱いやすさから日本支社に異動させた。
仕事面は実直だが、さして要領がいいタイプではなく、飛び抜けた功績も、才があるわけでもない。
余計なことを詮索したりするような狡賢さもないことが利点とも言われるような、そんな男だ。
………と、理解していたのだが。
「まさか、同志(ゲイ)だったか」
あの李が、実は男が好きだった、とは面白い。しかも、あれほど傲慢なセックスが好みとは…。
呼び付けた李に、己の性行為中の録画を見せた時の真っ青な顔も面白かったが……、相手が、まさかセンター長とまでヤッている好色と知った時の呆然とした顔色といったらなかった。
その場で、李を本国へ送り返す手筈を進めながら、震える李を尋問する。
相手の派遣が「ヒロモリ」であることは既に特定していた。勤怠も仕事覚えも悪くない。誰に聞いても良い評判しか出てこないのだが……、その私生活を知る者は見当たらない。
ヒロモリについて問い質すと、李は釈明するように、つるつると何でも喋った。
その言葉に嘘は無さそうだ。なぜなら、とっさに嘘を捻り出すような芸当など、この男には出来ないだろうから。
どうやら、逢引にあの倉庫を提案したのは相手の派遣らしい。
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相手の派遣が、何者かを。
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