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Story2-awakening- 罰せられる男
Ⅱ
しおりを挟む「きみは、広森雄貴《ひろもりゆうき》くんだね?」
神戸の街並みを眼下に見下ろす、高層ホテルの最上階にあるフレンチレストラン。
呼び出した男が、ウェイターの案内のもと私のテーブルまで恐る恐る歩いてくる。
そして、名前を呼ぶ私を見て、呆然と立ち尽くした。
「えっ………………………、なんで俺の名前…………、」
私は座ったまま、男の顔を見上げる。
「私は、きみの派遣先の者で、李の上司にあたる王と言います。このたびは李が迷惑を掛けました」
「……………!」
広森は、その言葉に、ぴしりと固まった。
見かねて、椅子をひいたウェイターが、どうぞ、と声を掛けると、男は青褪めた顔でこわごわと従う。
「あの…………、一体これは………あの、陽、いや、李さんと………、その……あれを……」
縺れる舌、どもる言葉。男はしどろもどろに目線を彷徨わせる。
「きみと李が、毎日会社でしていたセックス。あれがね、ずっと監視カメラに映っていたんだ。もちろん、…………身に覚えがあるね?」
俺が声のボリュームを絞ることもなく、平然と喋りかけると、レストランの空気がきんと冷えた。
カトラリーの音がぴたりと止む。皆が息を殺して、………盗み聞きしている。
「きみは毎日、李に押し倒されていたわけだから、身体も大変だったんじゃないか?まるで、盛りのついた犬みたいだったじゃないか」
心配そうに言葉を重ねると、周りから小さなどよめき。クスクス笑う声も聞こえる。
「本当に申し訳なかったね。もし、痔がひどいようなら、いい肛門科の医師がいるから紹介しようか?」
「………やめて、」
「いや、でも、そうでもないのかな?きみは、光村くんや山下くんとも、しょっちゅう社内でセックスしていたみたいだしね。もしかして、李が遊ばれていたのかな」
「もう、やめてくださいっ」
広森は、小さいけれど鋭い声で叫び、顔を真っ赤にして俯いた。
「男に目がないあたり、さすが売れっ子の売り専なだけあるよ」
「…………………………ううっ、」
俯く広森の顔、強張る肩が震えている。
派遣先からの帰りだろう。くたびれたシャツにリュックを背負い、底の擦り減ったスニーカーを履いている。
豪奢なシャンデリアが光るきらびやかな店内、ドレスアップした客ばかりのなかで、服装だけでも明らかに浮いているのに、さらに、男とセックスばっかりしているド淫乱だと、暗に公表されているに等しいのだから。
「でも李が悪いんだから、きみは気にしなくていい。李は今日付で帰国させたし、もう大丈夫だよ。
だから、お詫びにご馳走しようと思ってね」
ウェイターを呼び、料理を出すよう声を掛けると、広森が泣きそうな声で呟く。
「……………………すみません、俺、もう帰らせて、ください………あのっ、また改めてお詫びに」
私は、ゆっくり水を飲み、とん、とグラスを置いて、男に笑いかける。
「私は今日、本業のきみを予約した客だよね、ゆきくん。仕事放棄とは頂けないな。まして、会社の倉庫を勝手に使っておいて、その態度はどうかな?私はきみに怒ってなんかないが…、許してはないよ」
「…………………そ、その節は…大変申し訳ありませ」
「だからね、付き合って貰うよ」
運ばれてきた前菜の皿に手を付けず、涙目でそれを見つめる広森に、料理を勧める。
「これ美味しいよ。食欲がないのかな?それとも、きみは男を食う方が好きか?」
「……そ、そんな……、、いただき、ます、」
広森がゆっくりとカトラリーを手にする。
フレンチのコースは、まだ始まったばかりだ。
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