deep trap ―awakening―

あおい

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Story2-awakening- 生贄の男

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 きっかけは、劉社長直々の電話を受けたにも関わらず、それをきちんと伝達出来ていなかった俺の初歩的なミス。
 
 しかし、その後も、配送スケジュールの見直しや謝罪と説明などにことごとく手間取ったのはあまりにお粗末だった。
 
 社長肝いりの新商品にも関わらず、明日どころか3日先でも、全ての施設への納品が間に合わない事態に、社内は騒然となった。
 
 とにかく全てにおいて、後手後手となった我が社の対応が、先方の怒りをさらに何倍にも増幅させたのだ。
 
 その怒りはすさまじく、営業部や配送管理部の上長では、劉社長だけではなく先方担当者とさえ面会すら許されないほどだという。
 
「お前の会社との取引は、一切取り止めだ!今後二度と使わん!明日にでも、今後配送予定の保管商品を全て引き上げるからそのつもりで手配しろ!」
 
 ブチ切れた劉社長からの怒声が、出張先から急遽帰社した支社長のスマホから轟々と響いていた。
 
 本当に全てが白紙になったら、損害額は、果たして幾らになるのだろうか。恐ろしくて正気ではいられない。
 
(お前のせいだ!)
(ふざけるな!)
(この出来損ないが!)
 しんと冷えた沈黙のなかに、俺への怒りが怨念のように渦巻く。
 
 俺はといえば「すみません、すみません」とひたすら念じることしかできない役立たずっぷり。
 
 他部署の担当らが殺気立って睨みつける視線を一身に集め、こみ上げる吐き気にえずきながら、半泣きでかたかた震えていた。
 
 もはや俺だけの責任ではない。
 とはいえ、この発端は間違いなく俺だ。

 がちゃ切りされたスマホをスーツの内ポケットにしまい、血の気のない、真っ白な顔の支社長が、集まった社員たちを見渡した。
 
「今から、劉社長とお会いしてくる。張、お前が運転しろ」

「…はいっ、!」
 
 ひやりと尖った声で名指しされ、背筋が凍る思いで返事をすると同時に、支社長の社用セダンの鍵を手に駆け出しそうな俺に、さらに、ぽつりと言葉を重ねた。
 
 「謝罪には、広森を連れて行く」
 
 「………………………えっ?」
 
 その場にいた全員が目を見張った。
 
 さすがに、それはおかし過ぎる。
 だって、彼はただの派遣で、いくら懇意にしているとはいえ、この不祥事には全く関係ないのだから。
 
「あいつに謝らせればいい」
 
 王支社長が、目線を飛ばす先に、いつの間にか広森くんが立っていた。

「広森、準備しろ」

 殺気立つ室内で、ただ一人口元に笑みを浮かべた広森くんが、ちいさく「分かりました」と頷くのを、皆が息を呑んで見つめた。

「張さんのためなら仕方ありませんね」
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