隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき

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隣の席のイケメンに懐かれた

トラウマ

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「それでは、美化委員会会議を始めます。」


3年生の美化委員長の言葉で委員会が始まった。
俺の隣には高峰がぼぉっと座っている。ちゃんと話は聞いているのだろうか。
委員会を決める時、美化委員は仕事が少ない、というのを高峰に教えてもらい、2人で美化委員をすることになったのだ。


「美化委員では1ヶ月に一度、集まって掃除をする、というのが仕事です。それぞれのクラスの委員に掃除場所が割り当てられるので、同じクラスの委員の人と一緒に掃除を行なってください」


委員長はテキパキと仕事をこなしている。慣れているんだろうなぁ。


「やばい高峰くんと一緒の委員会とか、え、夢?」
「隣の男子誰?普通に場所変わってほしいんだけど」
「たまたま一緒になったとか?」


周りの女子がヒソヒソと話している。当然の反応だ。
高峰は……相変わらず無反応だ。目もくれない。


「黒板に割り当て表を貼っておくので、自分のクラスの担当の場所を確認して向かってください」


委員長の合図で一斉に立ち上がる。俺も隣の高峰に声をかけた。


「高峰、俺たちも行こ」
「おー」


高峰はやる気なさそうに立ち上がる。その瞬間、周りを女子が取り囲む。


「高峰くん!一緒の委員会とか驚いた!私隣のクラスの……」
「自己紹介とかどうでもいいから、早く掃除行きなよ」


シッシッと女子をあしらう。こんな対応しても女子に声をかけられるなんてよっぽどだなぁ、と感心する。


「柴野?なにぼぉっとしてんの、早く行こ」
「あ、うん」


割り当てられた場所を確認する。俺たちは体育倉庫らしい。運動場から少し離れたところにある、あまり人の出入りのない倉庫だ。


「体育倉庫とか初めて入る」
「俺も高校のは初めて」


高峰の言葉に同意しながら倉庫に向かう。
校舎を出て少し歩くと、倉庫に着いた。

ガラガラと扉を開ける。


「うわ、なんか体育倉庫、って感じの匂いする。なぁ、柴野」


高峰が入っていくのと反対に、俺は入り口で立ち止まる。


「柴野?」


高峰が俺の顔をのぞき込む。
大丈夫、ここは“あそこ”とは違う。自分にそう言い聞かせて倉庫に入った。

呼吸をすると、倉庫の匂いが鼻につく。

“アイツ”との記憶が匂いと共に、頭に流れこむ。

思い出したくないと願う気持ちとは裏腹に、記憶は鮮明に頭に流れこんできた。


「っは、ひゅ、」


だんだんと、自分の呼吸が浅くなるのがわかる。

呼吸を戻そうとして息を吸い込むと、また匂いが体に入っていく。


“芹くん。オレ芹くんのこと大好きなんだよ”
“だからさ、いいよね?”


ここにはいないはずの“アイツ”の声がして、思わず耳を塞いで座り込む。


「ひゅ、は、っは、あっ」


呼吸が狂いだして苦しい。グッと目を閉じる。


「……ばの、しばの、柴野!」


耳元で声がして、ハッと目を開ける。
心配そうでどこか慌てている高峰がこちらを見つめている。


「……った、かみ、ね」


喉がヒューヒューとなりだして、咳き込む。俺は手を高峰に伸ばす。


「柴野、俺はここにいるから、大丈夫。落ち着いて」


高峰は俺の手を取って引き寄せた。高峰の匂いだ。


「かはっ、あっ、ひゅ、あ」
「柴野、息を吐くことに集中してみな」


高峰に言われた通りにする。ゆっくりと、呼吸は元に戻っていく。高峰はずっと背中をさすってくれていた。
おかげで少しずつ、冷静を取り戻す。


「柴野、一旦外出よう」


俺が落ち着くと、高峰に手を引かれて倉庫の外に出た。
少し段差になっているところに腰かける。


「大丈夫?」


高峰の手が伸びてくる。俺の目の下を優しく拭った。
泣いてたみたいだ。自分では気づかなかった。


「体調悪かった?」


首を横に振る。どう誤魔化そうか。


「…………ちょっと匂いが気持ち悪くて」
「嘘。柴野の嘘、わかりやすいよ」


すぐに見破られた。
高峰は言いづらそうに口を開いた。


「……昔、なんかあった?」


ここで首を振っても、多分信じてもらえないよな。
俺は大人しく頷いた。


「それって、前言ってた、手出されたとかのやつ?」


高峰は前の俺の嘘に気づいてたのか。鋭い高峰に、俺は頷くことしかできない。


「その話、聞けたりする?」
「……まだ、言えない」


高峰が頼りないとか、信用できないとか、そういうことではない。

ただ自分に、これを高峰に言う勇気がないだけだ。


「無理に言わなくていいよ。柴野が言いたくないんだったら。でも、言いたくなったら、いつでも聞くから」
「ごめん……ありがとう」
「ん。委員会の教室戻ろ」


そう言って高峰は立ち上がる。


「掃除は?」
「多分しなくてもバレないよ。行こ」


高峰に差し出された手を取って立ち上がる。いつもよりも強く、握ってくれた気がする。


この時、俺は思ってもいなかった。


まさか、また“アイツ”に会うことになるなんて。
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