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エウリーカ
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「─やあ、久しぶり」
大嵐の深夜。突然の訪問者は、昔からよく知った、でもここ数年は全く会っていなかった幼馴染みだった。
最後に別れた日からずっと、コイツに次会ったら言ってやろうと思っていた台詞があった。ずっと何て言ってやろうかばっかり考えてきた。あれも、これも。たくさん、たくさん。
『ふざけんな馬鹿調子に乗るなあり得ない馬鹿野郎だから言ったのにどうしてアンタがふざけんな何で私もどうしてこんなこと、馬鹿バカバカ』
ありとあらゆる罵詈雑言を並べて、何ならパンチやキックも一緒に浴びさせてやろうって思ってた。もし、この先、どこかで会うことができたなら絶対そうするんだ、って。
ずっとずっと、そう硬く心に決めていたのに。
「……とりあえず、入ったら?家に雨入ってくるの、やなんだよね」
数年ぶりに目にした幼馴染みの顔は酷く憔悴していて。
頬がこけて、髪はボサボサで。似合わない無精ひげに、充血した目の下には真っ黒な隈。
私の記憶の中にいる幼馴染とはまるで別人だった。
そんな幼馴染みの顔を見たら、言葉にならなかった。いっぱい考えて、たくさん用意していたのに、なんにも出てこない。
そればかりか、ここ数年燻ぶり続けてきた幼馴染への怒りはあっという間に萎えて消えて。怒りよりも哀れみの方が強くなって。つい、招き入れてしまった。
そのつもりで来訪してきたはずなのに、幼馴染みは私の言葉に一瞬だけ瞳を揺らし、顔を伏せ、小さな声で「…と」と呟いた。
捻り出したその声はとてもとても小さくて、家に吹き付ける雨粒や激しく揺れ擦れ合う雑木林の音にかき消されてしまう程で。
私はそのことにまた、悲しくなった。
大嵐の深夜。突然の訪問者は、昔からよく知った、でもここ数年は全く会っていなかった幼馴染みだった。
最後に別れた日からずっと、コイツに次会ったら言ってやろうと思っていた台詞があった。ずっと何て言ってやろうかばっかり考えてきた。あれも、これも。たくさん、たくさん。
『ふざけんな馬鹿調子に乗るなあり得ない馬鹿野郎だから言ったのにどうしてアンタがふざけんな何で私もどうしてこんなこと、馬鹿バカバカ』
ありとあらゆる罵詈雑言を並べて、何ならパンチやキックも一緒に浴びさせてやろうって思ってた。もし、この先、どこかで会うことができたなら絶対そうするんだ、って。
ずっとずっと、そう硬く心に決めていたのに。
「……とりあえず、入ったら?家に雨入ってくるの、やなんだよね」
数年ぶりに目にした幼馴染みの顔は酷く憔悴していて。
頬がこけて、髪はボサボサで。似合わない無精ひげに、充血した目の下には真っ黒な隈。
私の記憶の中にいる幼馴染とはまるで別人だった。
そんな幼馴染みの顔を見たら、言葉にならなかった。いっぱい考えて、たくさん用意していたのに、なんにも出てこない。
そればかりか、ここ数年燻ぶり続けてきた幼馴染への怒りはあっという間に萎えて消えて。怒りよりも哀れみの方が強くなって。つい、招き入れてしまった。
そのつもりで来訪してきたはずなのに、幼馴染みは私の言葉に一瞬だけ瞳を揺らし、顔を伏せ、小さな声で「…と」と呟いた。
捻り出したその声はとてもとても小さくて、家に吹き付ける雨粒や激しく揺れ擦れ合う雑木林の音にかき消されてしまう程で。
私はそのことにまた、悲しくなった。
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