2 / 11
エウリーカ
2
しおりを挟む「これ、使えば?」
びしょ濡れの身体を拭くためにタオルを渡すと、幼馴染みは少しだけ躊躇してからそれを受け取った。私に対して遠慮しているのか。申し訳ないと思っているのか。その一歩引いたような態度にムカッとする。
「てゆうか風呂入って」
「え、いや。流石にそれは」
「アンタさ、自分がどれだけ汚いか分かってる?雨と泥で全身ぐしょぐしょだし、そんなんでウチの中に入られても私が迷惑なの」
「あ…そ、そうだよね。ごめん、やっぱ─」
「風呂。入ってこい」
幼馴染みが踵を返して出て行こうとするので、ドンと扉を叩きそれを防ぐ。
そうじゃない。そうじゃないでしょ。
この家に来たというだけでもう十分に私は迷惑をかけられているというのに。幼馴染だってそれは百も承知で来たはずなのに、それでも来た。だというのにまた私から逃げようとする。私を置いて行こうとする。
冗談じゃない。
萎えた怒りが再燃する。
ユラユラと不安定に揺れる幼馴染の瞳を真っ向から見返して、その怒りをぶつける。出てこない言葉の代わりに、瞳に思いを込める。伝える。何を伝えたいかなんて自分でもよくわからないけど、届け届けと念を込めて見つめていると、幼馴染みは少ししてからようやく「うん」と頷いた。
よろよろと覚束ない足取りでバスルームへと向かう幼馴染みの後ろ姿を見ていると、なんとも言えない感情に包まれる。
あれは─
アレは私の知っている幼馴染みではない。なのにどうしようもなく、私の知っている幼馴染みで。そのことが、酷く私の胸を締め付ける。
タオルを受け取るために差し出した幼馴染の手。そこに付着していたのは、雨や泥だけじゃなかった。
「…ヴィクトル」
静かに閉められた扉を見つめ、私はその場に座り込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる