41 / 52
安田
game(4)
しおりを挟む
小林と別れ教室へ戻ると、入り口の所にナミちゃんがいた。壁にピタリと身体をくっつけ、少しだけ開いた扉から中を伺う姿はどこかの家政婦を連想させ、見るからに怪しい。
「なーに見てんの?」と声を掛けるとナミちゃんが振り返り、人差し指を唇に当てた。思った以上に真剣な眼差しに、素直に従い口を閉じる。ナミちゃんは俺が口をつぐんだ事を確認してから、その手で中を指差した。促され室内を覗いてみると、神成とオサムがこちらに背を向けて一つのタブレットを見ている。
特に不穏な所は見受けられない。よくある普通の光景だ。……距離が近くて面白くないとは思うけれど。
小声で「あれがどーかした?」と囁くと、ナミちゃんはチラリと視線を向け、呆れた様に息を吐いた。
「余裕ですね、安田さん。見ててムカつきません?」
「べっつに。あいつらが仲良いのは前からだし。何、ナミちゃん嫉妬?」
「当たり前ですよ。顔近すぎません?それに神成さんなんて身を乗り出しちゃって。おっぱいわざと机の上に乗せてオサムくん誘ってるんですよ、あれ。まだオサムくんに未練があるのか、それとも欲求不満だとか?安田さん、しっかりしてくださいよ。ちゃんとヤッて発散させてます?」
揶揄ったつもりが反撃を喰らい、思わず笑顔が引きつった。
今の彼女はどうやら外向けの仮面を外しているらしい。皆の人気者の可愛いナミちゃんは完全になりを潜め、そこに一切の遠慮もない。だったらと、俺も無駄に取り繕う真似はやめ、笑顔を消した。
「ノーコメント。自分の性事情を人に教えて悦に浸る趣味はないんだ。つーか、そんなに嫌なら邪魔すりゃいいじゃん。なんで隠れて静観してんの?」
「そりゃ今すぐ二人の間に無理くり割り込んで引き剥がしてやりたいですけど、このままオサムくんが神成さんの色仕掛けに引っかかって何かしでかすまで待って、現行犯逮捕してやろうと思ってるんです」
「なんだそりゃ。未然に防ぐのが警察だろ」
「はあ。全然分かってませんね、安田さん。いいですか?現場を押さえて言い逃れできない様にするんですよ。可能なら物的証拠も。で、後でねちねち、たあっぷりお仕置きするんです」
目を輝かせニヤリとほくそ笑むナミちゃんに、「はあ」とだけ相槌を打つ。
「お仕置きって悪いことしなきゃできないのに、オサムくんってば絵に描いたようないい子ちゃんだから。まあ、そこがいいんですけど。やりたいお仕置きいっぱいあるのに、まだちょっとしかできてなくて。ふふ、安田さんが神成さんの犬に成り下がった日なんて、それはもう最高でしたよ。ああ、また虐めたい」
うっとりと頬を染める姿は一見いじらしいが、言ってる内容はとんでもない。これを相手にするオサムが憐れすぎる。
「そういうプレイすりゃいーじゃん」
「だーかーら!プレイじゃなくて本物のお仕置きがしたいんです!!オサムくんが神成さんの誘惑に揺らいでるのを見たくないけどめちゃくちゃ見たい、私のこの気持ち。安田さん分かります!!?って……あ」
興奮しすぎて大きくなったナミちゃんの声にオサムが振り返り、すぐに俺たちに気付いた。つられて神成も振り向き、俺とナミちゃんがいるのを見て、僅かに眉を顰める。
「ナミちゃん」眉を下げ、目尻を下げ、オサムが穏やかに笑う。
「待ってたんだ。一緒に帰ろう」
オサムがすっと立ち上がり素早く帰り支度を済ませる。ナミちゃんの隣に立つ姿に違和感はない。そのことに違和感を感じる。
こんなに背筋を伸ばして、こんな風に笑う男だっただろうか。
帰る二人に軽く手を振ると、ナミちゃんは恥ずかしいんだか嬉しいんだかどっちつかずの顔をして、ぺこりと頭を下げた。そんな殊勝な態度に、さっきまでの勢いはどこへ行ったと言ってやりたい。オサムはそんなナミちゃんを満足そうに見下ろしている。
ナミちゃんがリードしているように見えて、実際に手綱を握ってるのはオサムなのかもしれない。
まあ、この二人の関係がどんなものかなんてどうでもいいけど。
「神成も俺のこと待っててくれたとか?」
冗談半分にそう言えば、神成が不貞腐れたようにフイっと顔を背けた。
理由は分からないが、どうやらご主人様はご機嫌ナナメらしい。
さっきまでオサムの座っていた椅子につき、置かれたままのタブレットを覗き込むと、そこには色んな窓の画像が画面いっぱいに映し出されていて、次の課題の資料探しだとすぐに分かった。そのことに、どこか救われた気になる。
「そんな訳ないじゃない。その自己中心的な考えどうにかした方が良いわよ」
俺の軽口を神成がバッサリ切り捨てる。その口調は初めて話した時と多分何も変わらない。だけど、その表情は若干柔らかい。そして、距離も近い。
俺を拒絶せず、受け入れている。
そのことに顔が緩みそうになり、へらりと笑って誤魔化した。
「ふーん、そ。で、神成はまだやってくの?それとも帰る?」
「……あんたは?」
「神成が残るなら残る。帰るなら帰る。俺は自己中なんじゃなくて、神成中心なんだよ。……だろ?ご主人様」
最後神成にだけ聞こえるように耳元で囁くと、神成はきっと眉根を寄せて俺を睨みつけてきた。教室内にはまだ何人かいる。彼らの目を気にして、反論したいのにできないのだろう。無言の抗議に気付かないフリをしてると、神成は悔しそうに口を尖らせ、「帰る」と呟いた。
「……今日はあんたん家行く」
「りょーかい」
素っ気ない言い方。でもやっぱり、確実に、そこには甘さが含まれていた。
外へ出るともう辺りは真っ暗で、ごうごうと強い風が吹いていた。実際の気温よりも体感温度はかなり低いだろう。自然と身体が縮こまり、外気に触れる面積を小さくしようとする。
「うわー、外めっちゃ寒いな。冬将軍まじ半端ねえ、ラスボスクラスじゃん」
「ラスボスがどんだけ強いのかわかんないけど、確かに寒い」
「早足でいこーぜ。マジ無理、寒すぎ」
肩を若干寄せて歩き始めると、神成が俺の方を見ないままボソリと呟いた。
「ねえ……手」
「ん?」
「手袋あるから離して」
「ああ、手ね」と言いながら小さい手に力を籠めた。神成は俺の意図に気付いたのか下から睨みつけてきたが、俺はそれを受け流す様に笑って見せた。
「お前こんなに寒いのに手袋なんてつける気?普通に考えて羊から切り離したタンパク質より、三十六度の熱を常に放出してる俺の手握ってた方が温かくて合理的だろが。」
そう言うと神成がきょとんと目を丸くする。
「……ふ、ふふ。何それ。でも確かにそうかも」
そして、気が抜けたかのように、ふわっと笑った。その顔を見たら何かくすぐったい気持ちになって、今度は俺が目を逸らした。前方にある信号機が点滅をはじめ、神成の手を引っ張って急いで横断歩道を渡る。
「生きてる安田温かい」
「それはどうも。生きてる神成もな」
そう返すと、神成は声を上げて笑った。
そんな神成に対して、何だよこいつ可愛いすぎだろ。そう思ってしまうことが、面白くない。
神成がこんな風に笑うなんて、最近まで知らなかった。
知りたくなかった。
神成を堕とすと決めた時は、俺自身こんな風に思うなんて、想像もしていなかった。
◇
あの飲み会の日から俺の地道な努力の甲斐あって、一年後の今ではすっかり神成は俺に対して嫌悪感を露わにしていた。
もう俺は神成にとって、名前も知らないどうでもいい男じゃない。同じゼミのチャラい癖に評価とセンスは高いイケ好かない安田だ。
ようやく神成に俺という男を認識させることができた。無視したくともできない存在になってやった。
が、もちろんこれで満足するわけがない。まだまだ、もっとだ。もっとあいつの中に俺を刻み付けるにはどうしたらいいか。どういうやり方が一番効率的か、一番ダメージを与えられるか。
どう次のアクションを起こそうかと、考えていた時だった。
「安田さんに相談、というかお願いしたいことがあるんです」
そう言ってきたのは新しくゼミに入ってきた四年生の一人、ナミちゃんだった。
「いいよ、どうした?」
社交的な笑みを浮かべ、こっちですと手招きするナミちゃんの方へと向かう。俺としてはよくあるシチュエーション。どうせ告白か、一緒にどっか行こうなどの誘いだろう。
ナミちゃんは小動物を連想させる黒目がちの目が印象的で、普通に可愛いし一回くらいはやってみてもいいかもしれない。俺の身体だけが目的だったなら、だが。
去年宣言した通り、ゼミの仲間内には手を出していない。あまりに手近な存在に手を出すのは逆に面倒臭いからなのだが、でも、この子ならどうだろう。浮かんだ考えに、口角が上がる。
ゼミ内の後輩に手を出したと知れば、潔癖な神成は更に俺に対して嫌悪感を募らせるだろう。あいつの目の前であからさまにイチャつき、反応を見るのも悪くない。あいつは多分、いや確実に、より侮蔑を込めた視線で、俺を睨むのだ。
それを想像しただけで股間が疼く。
しかし、ナミちゃんは予想外の言葉を口にした。
「実は私、オサムさんのことが好きなんです」
「……」
「一目ぼれなんです。安田さんに是非協力してほしくって、こうしてお願いにきたんです!」
「……何で、俺が」
はっきり言って拍子抜けした。彼女がオサムのことを好きだろうと俺には全く関係ない。なぜわざわざ俺に協力を要請する必要があるのか、意味が分からない。
もしかしてそれを理由に俺に近付くとか、そっちが狙いか?
探る様な眼差しを向ければ、彼女はなぜそんな目を向けられるのか全く分からないといった風に、きょとんと首を傾げた。
「?だって安田さんだってその方が好都合じゃないですか?共同戦線ですよ!短期決戦に持ち込みたいんです!それとももう、大体の目星がついてるとか」
「……さっきから、言ってることがよくわからないんだけど」心臓がいやに逸り、耳のすぐ後ろから鼓動が聞こえてくるようだ。
「?だから、私はオサムさんが好きで、安田さんは神成さんが好きなんだから、お互い協力しましょうって話ですよ」
「……は」
面白い冗談だと笑い飛ばすつもりが、一言で言葉が切れ、それ以上何も出てこなくなった。顔がかっと火照り、背筋が冷える。
「そりゃ私だって一人でオサムさんを落とせそうなら落としたいですけど。でも念には念を、というか。完全に二人を引きはがしたいんですよね。だから、神成さんの方を安田さんが攻略してくれると、私としてはとてもありがたいんですけど」
「あの、どうしました?」何の反応もない俺を訝し気に思ったのか、ナミちゃんに下から覗きこまれ、咄嗟に右手で顔を隠す。バクバクと動悸がすごい。嫌な汗をかいてるのが分かる。
胸の中が不穏にさざめき、頭が上手く働かない。
何か言わないと、と焦るも何も言葉が出てこない。本能で笑みを張り付けようとするも、どうやって笑っていたのか分からない。
ーー俺が、神成を、好きだって?
混乱の極みにいる俺に気付いているのかいないのかはわからないが、ナミちゃんは気にすることなく話し続ける。
「最初二人は付き合ってるのかと思ったんですけど、どうやらそんなことはなさそうなんで。だったら先手必勝、くっつく前に強引に手に入れちゃおうかと。あ、両片思いっていうのは把握してますよ?でも、付け入る隙は十分ありそうだし、安田さんがいれば勝算はあるな、と。私、安田さんと違って、短気で思いついたら即実行タイプなんです」
頼むから一回黙ってほしい。一人冷静になって状況を把握したい。なのにナミちゃんは、そんな隙は与えないとばかりにペラペラと喋るもんだから、何一つ考えられない。追い詰めらた獲物の心境だ。
「それで、協力してくれますよね?」
ナミちゃんと視線がかち合う。
ナミちゃんはニコリと、整った、計算しつくされた、どっからどう見ても可愛い笑みを浮かべながらも、俺を見つめるその目は全く、これっぽっちも笑っていなかった。
ーーこいつは俺と同類だ。
そう本能で全てを理解した。
忘れたはずのいつもの笑みが、自然と浮かぶ。
「……ナミちゃんがオサムのことを好きって、本当?あいつのどこが?言っちゃ悪いけどナミちゃんならもっといい男捕まえられるだろうし、あんな童貞地味野郎に一目ぼれとか、ちょっと信じられないんだけど」
「本当ですし、それ以上オサムさんのこと貶したら許しませんよ。それとも、オサムさんの素敵な所を一つずつ安田さんが理解するまで教えてあげましょうか。安田さんにはなくて、オサムさんにはある魅力を。神成さんがどうして安田さんじゃなくオサムさんに惹かれて好きになったのかを。徹底的に比較検証してあげます」
そう言ってナミちゃんはニコリと笑った。小動物を思わせる出で立ちのくせに、中身は超攻撃的で相手を殺すのになんの躊躇いもない肉食獣のような女だなんて。はっきり言って、敵には回したくないタイプだ。
「……言うねえ、ナミちゃん」
「逆のことされたら私も嫌なんで言いませんけど。でも、安田さんも意外と人間なんですね。神成さんとオサムさんを静観してるから何か別の思惑があるのかと思いきや、ただ単純に神成さんのこと好きだって自覚してなかっただけなんて。女遊びの激しいチャラ男の純愛とか、萌えますよね。二次元の話ですけど」
「はあ!?そんなんじゃねえっ!」カッとなって思わず大きな声が出た。
「神成のことを好き!?馬鹿言うな!俺はあいつのことが嫌いで嫌いでしょうがねえんだよ。あいつを虐めて、苦しめてやりたい。あいつの歪んだ顔が見たい。それだけだ。……好意なんて抱いたことない」
「……ふーん。まあ、私としては安田さんの恋愛事情とかどうでもいいんですけど。安田さんには神成さんの心をオサムさんから引きはがしてくれれば十分で、その先はお好きにって感じです。ーーで、どうします?」
多分彼女は俺が協力しようと断ろうと、どっちでもいいのだろう。目的を達成させるために成功率を上げる要因、それが俺だというだけだ。俺が駄目なら他の方法を考える。そう、その眼差しが言っていた。
「いいよ。ナミちゃんに協力してあげる」それを踏まえた上で、俺はニコリと笑って了承した。
「ただし、それはあいつのことが好きだからじゃない。あいつからオサムを奪って、あいつを傷つけたいからだ。俺があいつをどうしようが、口出しはするな。その代わり俺もナミちゃんのすることには口出ししない。それでいいか?」
「もちろんです!!ああ、よかった、断られなくて!安田さんが私の味方になってくれて心強いです。百人力ですね!」
「どーだか」
「ふふ、本心ですよ?という訳で、私はガンガン攻めてオサムさんを落とすつもりなんで、神成さんの方はよろしくお願いしますね。近況報告は逐一、ということで。じゃあ」
邪気のない笑みを浮かべるナミちゃんに、お返しする様に俺もニコリと笑って見せた。
ナミちゃんの提案に乗っかった形になったのは面白くない。だが、これからのことを想像すると、面白くってたまらなかった。
ナミちゃんに言われるまで、どうして思いつかなかったのか。
神成を俺に惚れさせ、そして捨てる。
この上なくあいつを支配し翻弄しうる方法じゃないか。
どうしようか。どうやって俺に惚れさせようか。どうやったら一番楽しいだろう。どうやったら一番あいつを傷つけられるだろう。
どうやったら……
そのことを考え始めると、笑いが後から後から込み上げて止まらなかった。
「なーに見てんの?」と声を掛けるとナミちゃんが振り返り、人差し指を唇に当てた。思った以上に真剣な眼差しに、素直に従い口を閉じる。ナミちゃんは俺が口をつぐんだ事を確認してから、その手で中を指差した。促され室内を覗いてみると、神成とオサムがこちらに背を向けて一つのタブレットを見ている。
特に不穏な所は見受けられない。よくある普通の光景だ。……距離が近くて面白くないとは思うけれど。
小声で「あれがどーかした?」と囁くと、ナミちゃんはチラリと視線を向け、呆れた様に息を吐いた。
「余裕ですね、安田さん。見ててムカつきません?」
「べっつに。あいつらが仲良いのは前からだし。何、ナミちゃん嫉妬?」
「当たり前ですよ。顔近すぎません?それに神成さんなんて身を乗り出しちゃって。おっぱいわざと机の上に乗せてオサムくん誘ってるんですよ、あれ。まだオサムくんに未練があるのか、それとも欲求不満だとか?安田さん、しっかりしてくださいよ。ちゃんとヤッて発散させてます?」
揶揄ったつもりが反撃を喰らい、思わず笑顔が引きつった。
今の彼女はどうやら外向けの仮面を外しているらしい。皆の人気者の可愛いナミちゃんは完全になりを潜め、そこに一切の遠慮もない。だったらと、俺も無駄に取り繕う真似はやめ、笑顔を消した。
「ノーコメント。自分の性事情を人に教えて悦に浸る趣味はないんだ。つーか、そんなに嫌なら邪魔すりゃいいじゃん。なんで隠れて静観してんの?」
「そりゃ今すぐ二人の間に無理くり割り込んで引き剥がしてやりたいですけど、このままオサムくんが神成さんの色仕掛けに引っかかって何かしでかすまで待って、現行犯逮捕してやろうと思ってるんです」
「なんだそりゃ。未然に防ぐのが警察だろ」
「はあ。全然分かってませんね、安田さん。いいですか?現場を押さえて言い逃れできない様にするんですよ。可能なら物的証拠も。で、後でねちねち、たあっぷりお仕置きするんです」
目を輝かせニヤリとほくそ笑むナミちゃんに、「はあ」とだけ相槌を打つ。
「お仕置きって悪いことしなきゃできないのに、オサムくんってば絵に描いたようないい子ちゃんだから。まあ、そこがいいんですけど。やりたいお仕置きいっぱいあるのに、まだちょっとしかできてなくて。ふふ、安田さんが神成さんの犬に成り下がった日なんて、それはもう最高でしたよ。ああ、また虐めたい」
うっとりと頬を染める姿は一見いじらしいが、言ってる内容はとんでもない。これを相手にするオサムが憐れすぎる。
「そういうプレイすりゃいーじゃん」
「だーかーら!プレイじゃなくて本物のお仕置きがしたいんです!!オサムくんが神成さんの誘惑に揺らいでるのを見たくないけどめちゃくちゃ見たい、私のこの気持ち。安田さん分かります!!?って……あ」
興奮しすぎて大きくなったナミちゃんの声にオサムが振り返り、すぐに俺たちに気付いた。つられて神成も振り向き、俺とナミちゃんがいるのを見て、僅かに眉を顰める。
「ナミちゃん」眉を下げ、目尻を下げ、オサムが穏やかに笑う。
「待ってたんだ。一緒に帰ろう」
オサムがすっと立ち上がり素早く帰り支度を済ませる。ナミちゃんの隣に立つ姿に違和感はない。そのことに違和感を感じる。
こんなに背筋を伸ばして、こんな風に笑う男だっただろうか。
帰る二人に軽く手を振ると、ナミちゃんは恥ずかしいんだか嬉しいんだかどっちつかずの顔をして、ぺこりと頭を下げた。そんな殊勝な態度に、さっきまでの勢いはどこへ行ったと言ってやりたい。オサムはそんなナミちゃんを満足そうに見下ろしている。
ナミちゃんがリードしているように見えて、実際に手綱を握ってるのはオサムなのかもしれない。
まあ、この二人の関係がどんなものかなんてどうでもいいけど。
「神成も俺のこと待っててくれたとか?」
冗談半分にそう言えば、神成が不貞腐れたようにフイっと顔を背けた。
理由は分からないが、どうやらご主人様はご機嫌ナナメらしい。
さっきまでオサムの座っていた椅子につき、置かれたままのタブレットを覗き込むと、そこには色んな窓の画像が画面いっぱいに映し出されていて、次の課題の資料探しだとすぐに分かった。そのことに、どこか救われた気になる。
「そんな訳ないじゃない。その自己中心的な考えどうにかした方が良いわよ」
俺の軽口を神成がバッサリ切り捨てる。その口調は初めて話した時と多分何も変わらない。だけど、その表情は若干柔らかい。そして、距離も近い。
俺を拒絶せず、受け入れている。
そのことに顔が緩みそうになり、へらりと笑って誤魔化した。
「ふーん、そ。で、神成はまだやってくの?それとも帰る?」
「……あんたは?」
「神成が残るなら残る。帰るなら帰る。俺は自己中なんじゃなくて、神成中心なんだよ。……だろ?ご主人様」
最後神成にだけ聞こえるように耳元で囁くと、神成はきっと眉根を寄せて俺を睨みつけてきた。教室内にはまだ何人かいる。彼らの目を気にして、反論したいのにできないのだろう。無言の抗議に気付かないフリをしてると、神成は悔しそうに口を尖らせ、「帰る」と呟いた。
「……今日はあんたん家行く」
「りょーかい」
素っ気ない言い方。でもやっぱり、確実に、そこには甘さが含まれていた。
外へ出るともう辺りは真っ暗で、ごうごうと強い風が吹いていた。実際の気温よりも体感温度はかなり低いだろう。自然と身体が縮こまり、外気に触れる面積を小さくしようとする。
「うわー、外めっちゃ寒いな。冬将軍まじ半端ねえ、ラスボスクラスじゃん」
「ラスボスがどんだけ強いのかわかんないけど、確かに寒い」
「早足でいこーぜ。マジ無理、寒すぎ」
肩を若干寄せて歩き始めると、神成が俺の方を見ないままボソリと呟いた。
「ねえ……手」
「ん?」
「手袋あるから離して」
「ああ、手ね」と言いながら小さい手に力を籠めた。神成は俺の意図に気付いたのか下から睨みつけてきたが、俺はそれを受け流す様に笑って見せた。
「お前こんなに寒いのに手袋なんてつける気?普通に考えて羊から切り離したタンパク質より、三十六度の熱を常に放出してる俺の手握ってた方が温かくて合理的だろが。」
そう言うと神成がきょとんと目を丸くする。
「……ふ、ふふ。何それ。でも確かにそうかも」
そして、気が抜けたかのように、ふわっと笑った。その顔を見たら何かくすぐったい気持ちになって、今度は俺が目を逸らした。前方にある信号機が点滅をはじめ、神成の手を引っ張って急いで横断歩道を渡る。
「生きてる安田温かい」
「それはどうも。生きてる神成もな」
そう返すと、神成は声を上げて笑った。
そんな神成に対して、何だよこいつ可愛いすぎだろ。そう思ってしまうことが、面白くない。
神成がこんな風に笑うなんて、最近まで知らなかった。
知りたくなかった。
神成を堕とすと決めた時は、俺自身こんな風に思うなんて、想像もしていなかった。
◇
あの飲み会の日から俺の地道な努力の甲斐あって、一年後の今ではすっかり神成は俺に対して嫌悪感を露わにしていた。
もう俺は神成にとって、名前も知らないどうでもいい男じゃない。同じゼミのチャラい癖に評価とセンスは高いイケ好かない安田だ。
ようやく神成に俺という男を認識させることができた。無視したくともできない存在になってやった。
が、もちろんこれで満足するわけがない。まだまだ、もっとだ。もっとあいつの中に俺を刻み付けるにはどうしたらいいか。どういうやり方が一番効率的か、一番ダメージを与えられるか。
どう次のアクションを起こそうかと、考えていた時だった。
「安田さんに相談、というかお願いしたいことがあるんです」
そう言ってきたのは新しくゼミに入ってきた四年生の一人、ナミちゃんだった。
「いいよ、どうした?」
社交的な笑みを浮かべ、こっちですと手招きするナミちゃんの方へと向かう。俺としてはよくあるシチュエーション。どうせ告白か、一緒にどっか行こうなどの誘いだろう。
ナミちゃんは小動物を連想させる黒目がちの目が印象的で、普通に可愛いし一回くらいはやってみてもいいかもしれない。俺の身体だけが目的だったなら、だが。
去年宣言した通り、ゼミの仲間内には手を出していない。あまりに手近な存在に手を出すのは逆に面倒臭いからなのだが、でも、この子ならどうだろう。浮かんだ考えに、口角が上がる。
ゼミ内の後輩に手を出したと知れば、潔癖な神成は更に俺に対して嫌悪感を募らせるだろう。あいつの目の前であからさまにイチャつき、反応を見るのも悪くない。あいつは多分、いや確実に、より侮蔑を込めた視線で、俺を睨むのだ。
それを想像しただけで股間が疼く。
しかし、ナミちゃんは予想外の言葉を口にした。
「実は私、オサムさんのことが好きなんです」
「……」
「一目ぼれなんです。安田さんに是非協力してほしくって、こうしてお願いにきたんです!」
「……何で、俺が」
はっきり言って拍子抜けした。彼女がオサムのことを好きだろうと俺には全く関係ない。なぜわざわざ俺に協力を要請する必要があるのか、意味が分からない。
もしかしてそれを理由に俺に近付くとか、そっちが狙いか?
探る様な眼差しを向ければ、彼女はなぜそんな目を向けられるのか全く分からないといった風に、きょとんと首を傾げた。
「?だって安田さんだってその方が好都合じゃないですか?共同戦線ですよ!短期決戦に持ち込みたいんです!それとももう、大体の目星がついてるとか」
「……さっきから、言ってることがよくわからないんだけど」心臓がいやに逸り、耳のすぐ後ろから鼓動が聞こえてくるようだ。
「?だから、私はオサムさんが好きで、安田さんは神成さんが好きなんだから、お互い協力しましょうって話ですよ」
「……は」
面白い冗談だと笑い飛ばすつもりが、一言で言葉が切れ、それ以上何も出てこなくなった。顔がかっと火照り、背筋が冷える。
「そりゃ私だって一人でオサムさんを落とせそうなら落としたいですけど。でも念には念を、というか。完全に二人を引きはがしたいんですよね。だから、神成さんの方を安田さんが攻略してくれると、私としてはとてもありがたいんですけど」
「あの、どうしました?」何の反応もない俺を訝し気に思ったのか、ナミちゃんに下から覗きこまれ、咄嗟に右手で顔を隠す。バクバクと動悸がすごい。嫌な汗をかいてるのが分かる。
胸の中が不穏にさざめき、頭が上手く働かない。
何か言わないと、と焦るも何も言葉が出てこない。本能で笑みを張り付けようとするも、どうやって笑っていたのか分からない。
ーー俺が、神成を、好きだって?
混乱の極みにいる俺に気付いているのかいないのかはわからないが、ナミちゃんは気にすることなく話し続ける。
「最初二人は付き合ってるのかと思ったんですけど、どうやらそんなことはなさそうなんで。だったら先手必勝、くっつく前に強引に手に入れちゃおうかと。あ、両片思いっていうのは把握してますよ?でも、付け入る隙は十分ありそうだし、安田さんがいれば勝算はあるな、と。私、安田さんと違って、短気で思いついたら即実行タイプなんです」
頼むから一回黙ってほしい。一人冷静になって状況を把握したい。なのにナミちゃんは、そんな隙は与えないとばかりにペラペラと喋るもんだから、何一つ考えられない。追い詰めらた獲物の心境だ。
「それで、協力してくれますよね?」
ナミちゃんと視線がかち合う。
ナミちゃんはニコリと、整った、計算しつくされた、どっからどう見ても可愛い笑みを浮かべながらも、俺を見つめるその目は全く、これっぽっちも笑っていなかった。
ーーこいつは俺と同類だ。
そう本能で全てを理解した。
忘れたはずのいつもの笑みが、自然と浮かぶ。
「……ナミちゃんがオサムのことを好きって、本当?あいつのどこが?言っちゃ悪いけどナミちゃんならもっといい男捕まえられるだろうし、あんな童貞地味野郎に一目ぼれとか、ちょっと信じられないんだけど」
「本当ですし、それ以上オサムさんのこと貶したら許しませんよ。それとも、オサムさんの素敵な所を一つずつ安田さんが理解するまで教えてあげましょうか。安田さんにはなくて、オサムさんにはある魅力を。神成さんがどうして安田さんじゃなくオサムさんに惹かれて好きになったのかを。徹底的に比較検証してあげます」
そう言ってナミちゃんはニコリと笑った。小動物を思わせる出で立ちのくせに、中身は超攻撃的で相手を殺すのになんの躊躇いもない肉食獣のような女だなんて。はっきり言って、敵には回したくないタイプだ。
「……言うねえ、ナミちゃん」
「逆のことされたら私も嫌なんで言いませんけど。でも、安田さんも意外と人間なんですね。神成さんとオサムさんを静観してるから何か別の思惑があるのかと思いきや、ただ単純に神成さんのこと好きだって自覚してなかっただけなんて。女遊びの激しいチャラ男の純愛とか、萌えますよね。二次元の話ですけど」
「はあ!?そんなんじゃねえっ!」カッとなって思わず大きな声が出た。
「神成のことを好き!?馬鹿言うな!俺はあいつのことが嫌いで嫌いでしょうがねえんだよ。あいつを虐めて、苦しめてやりたい。あいつの歪んだ顔が見たい。それだけだ。……好意なんて抱いたことない」
「……ふーん。まあ、私としては安田さんの恋愛事情とかどうでもいいんですけど。安田さんには神成さんの心をオサムさんから引きはがしてくれれば十分で、その先はお好きにって感じです。ーーで、どうします?」
多分彼女は俺が協力しようと断ろうと、どっちでもいいのだろう。目的を達成させるために成功率を上げる要因、それが俺だというだけだ。俺が駄目なら他の方法を考える。そう、その眼差しが言っていた。
「いいよ。ナミちゃんに協力してあげる」それを踏まえた上で、俺はニコリと笑って了承した。
「ただし、それはあいつのことが好きだからじゃない。あいつからオサムを奪って、あいつを傷つけたいからだ。俺があいつをどうしようが、口出しはするな。その代わり俺もナミちゃんのすることには口出ししない。それでいいか?」
「もちろんです!!ああ、よかった、断られなくて!安田さんが私の味方になってくれて心強いです。百人力ですね!」
「どーだか」
「ふふ、本心ですよ?という訳で、私はガンガン攻めてオサムさんを落とすつもりなんで、神成さんの方はよろしくお願いしますね。近況報告は逐一、ということで。じゃあ」
邪気のない笑みを浮かべるナミちゃんに、お返しする様に俺もニコリと笑って見せた。
ナミちゃんの提案に乗っかった形になったのは面白くない。だが、これからのことを想像すると、面白くってたまらなかった。
ナミちゃんに言われるまで、どうして思いつかなかったのか。
神成を俺に惚れさせ、そして捨てる。
この上なくあいつを支配し翻弄しうる方法じゃないか。
どうしようか。どうやって俺に惚れさせようか。どうやったら一番楽しいだろう。どうやったら一番あいつを傷つけられるだろう。
どうやったら……
そのことを考え始めると、笑いが後から後から込み上げて止まらなかった。
0
あなたにおすすめの小説
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
ウブな契約妻は過保護すぎる社長の独占愛で甘く囚われる
ひなの琴莉
恋愛
大企業の清掃員として働くゆめは、ある日社長室の担当を命じられる。強面と噂される社長の誠はとても紳士的な男性だった。ある夜、ストーカーに襲われかけたところを誠に助けられ、心配してくれた彼に同居を提案される。傷ついた自分を大きな愛情で包み込んでくれる誠に、身分違いと知りつつ惹かれていくゆめ。思いを断ち切ろうと決めたとき、彼から偽装結婚を頼まれ、本当の妻のように甘く接されて……!?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
偽りの婚約者のはずが、極上御曹司の猛愛に囚われています
冬野まゆ
恋愛
誕生日目前に恋人に裏切られた舞菜香は、行きつけの飲み屋で顔見知りだった男性・裕弥と誘われるままに一夜を過ごしてしまう。翌朝も甘く口説かれ、動揺のあまりホテルから逃げ出した舞菜香だったが、その後、彼が仕事相手として再び舞菜香の前に現れて!? すべて忘れてなかったことにしてほしいと頼むが、彼は交換条件として縁談を断るための恋人役を提案してくる。しぶしぶ受け入れた舞菜香だったが、本当の恋人同士のように甘く接され、猛アプローチを受け……!?
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる