【R18】大好きな幼馴染が勇者になったので

遙くるみ

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妹だと思っていた幼馴染が無理矢理ついてきたので

ヒューゴ(2)

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 村を出る前に、アンに連れていけとごねられて、軽い気持ちで性欲処理係としてなら連れてってもいいと言ったら、本当についてきてしまった。

 アンは小さい時からずっと一緒に育った妹みたいなものだったので、はっきり言ってそういう対象で見たことはなかった。
 諦めさせるつもりで言ったものの、やっぱり嘘と言う前に強引に押しきられ、まあいいかと俺の方が諦めてしまった。
 本当にそういうことをするつもりはなかったし、危険なことからも俺が守ってやればいいだろうと思っていた。

 その考えが甘かったことに気付いたのは直ぐだった。

 世界はとても広かった。俺はちっぽけな井の中の蛙だった。

 初めて訪れた王都は、今まで行ってもせいぜい隣町までだった俺の想像を遥かに越えていた。本当に同じ国なのかというくらい、そこは栄えていた。
道はきちんと整備され、そこかしらに着飾った人で溢れ活気があったし、建物はどれも大きく、とても豪華だった。夜だというのにあちこちに灯された火によって明るく、昼とはまた違った雰囲気で街は盛り上がりを見せていた。

 ごくごく普通の何もイベント事のない日だというのに、はっきり言って村の祭りの日よりも盛り上がっていた。

 そして、一緒に旅をするという3人。
 国内最強の戦士ライオス、国内最強の魔術師エルヴィス、神殿の巫女サラ。
 彼らもまた、俺とは次元が違かった。

 村の周辺一帯では剣の腕は一番だった俺が全くライオスの足元にも及ばず、頭がいいと思っていたのにエルヴィスの話す単語の意味も全然分からず、サラの治癒魔法に頼る日々。

 はっきり言って俺の自尊心はボッコボコに殴られ、ぐっちゃぐちやに握りつぶされ、ボッロボロの粉々に打ち砕かれてしまった。

 それでも何とか頑張れたのは、伝説の剣に選ばれた勇者だという事実と、アンが俺のことを一番凄い一番格好いいと、毎日言い続けていたからだ。
 あいつは慰めや励ましとかではなく、本心からそう言っていた。あいつの俺に向けるキラキラとした眼差しが、そう訴えていた。

 あいつを連れてきて良かった、心の底からそう思った。

 魔物を倒しながら魔王の根城を目指す毎日。
 王都からいくつか町を訪れ、俺は気付いてしまった。

ーーあれ、アンって可愛くないか?

 はっきり言って村に若い女なんて少なかったし、そもそも比較対象があまりいなかった。容姿の造作なんて特に気にしたこともなかったが、よくよく見ると凄く可愛い、気がする。

 亜麻色の緩くウェーブのかかった艶やかな長い髪に、丸い大きな碧の瞳。長いまつ毛、控え目な唇とキメの細かい肌。柔らかくて女らしい身体つき。
 町の女は皆着飾っていて、遠目で見ると華やかで綺麗だったが、近くで見ると、化粧が凄いし香水臭い。顔だって不細工ばかりだ。

 はっきり言って服が可哀想で、それを脱がせてアンに着せてやりたい位だった。絶対アンが着た方が似合う。
 何となく認めるのは悔しかったが、アンは美少女だった。しかも、かなりの。
 だからと言ってそれを本人に言うことはなかったし、態度だって特に変えはしなかった。アンが美少女だからと言って、何が変わるわけでもない。

 しかし、ライオスがアンにちょっかいをかけ始めたことで、俺の置かれた状況は一転する。

 最初は俺に対して、アンへの態度を改めろと言ってきたが、もちろん俺はライオスの言うことを素直に聞くつもりなんて毛頭ない。
 すると、俺に何を言っても無駄だと悟ったのか、ライオスはアンに対して諭すようなことを言い始めた。
 要約すると、俺は碌な男じゃないから目を覚ませ、だ。
 それだけならまだよかったが(本当は全然よくないが)、ライオスは必要以上に至近距離で話しかけ、必要以上にアンの肩や腕に触るようにもなった。

 アンは相変わらず俺以外の男には冷たい態度を取っていたが、ライオスらそれにもめげず(もしかしたら気づかず?)アンのご機嫌を取ろうとする毎日。

 はっきり言って苛ついた。腹ん中が気持ち悪くなるくらい、ムカついてしょうがなかった。

 アンが好きなのは俺なんだ。お前なんて眼中にないの分かるだろ?
 アンは俺のものなのに勝手に触るな、話しかけるな。むしろ、見るのだって許せないくらいだ。

 そんなことを言うと面倒な事になりそうなのは分かっていたから言わなかったけど、俺は毎日苛々していた。
 ライオスの態度にもだが、そんなライオスに未だ勝てない自分に一番、腹が立って仕方なかった。


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