【R18】異世界でもキャリアアップを望む

遙くるみ

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本編

いきさつ(3)

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 人選は困難を極めた。

 まず、必要最低限の教養があること。あればあるほどいいけれど、基礎さえ学べれば文句は言わない。そこから先は自分の力でどうにかできるだろう。
 そして、誰彼構わずやるようなヤリチンじゃないこと。万が一病気なんて移されてしまったら、この世界ではまともな治療もできない。
 さらに、暴力的威圧的でないこと。秘密はちゃんと守ること。できれば若い方がいいし、顔も不細工じゃない方がいい。体臭もなく、不潔でなく、デブよりは細めのほうがいい。
 セックスはしたいけど娼館に通う金はなく、結婚はまだしたくないから恋人はいらない。
 そんな、割りきったセックスができるような男が良かった。

 ちょっと理想が高すぎかと半分以上諦めていたんだけど、全ての条件に当てはまる稀有な男が一人だけいた。

 ーー庭師見習いのジョセフだ。

 ジョセフは二十歳で、見習いになってまだ二年目の新米だ。勤務態度は真面目で、性格も控えめ。というか存在感が薄い。暴力沙汰はもちろん、喧嘩などのトラブルも一切なく、筆頭庭師のアークさんに連れて来られ、今は屋敷に住み込みで働いている。らしい。全部又聞きなので、本当かどうかはわからないけれど。
 薄い茶色の髪にブルーの瞳、顔も不細工ではなく一般的な外国人の顔をしていて(ていうか、日本人の私からしたら余裕で格好良い部類に入る)、生理的に受け付けない所は一切なかった。

 なにより、童貞臭いのがいい。
 これならちょっと提案を持ちかければ、すぐに乗ってきそうだ。



「ジョセフ。ちょっと今いいかな」

「サトゥ」

 庭の植え込みを手入れしているジョセフに声をかけると、ゆっくりと振り返り目が合った。

「ここじゃ、ちょっと。そこの温室で」

 不思議そうな顔をしながらも、「いいよ」とジョセフが立ち上がる。そして手袋を取り、腰に掛けていた布巾で手を拭ってから歩き出した。
 そういうきれい好きな所も合格だな、と私は更にこの選択が正解であると確信を深める。

「で、どうしたの?」

 温室に着くとすぐにジョセフが聞いてきた。周囲に誰もいないことを確認してから、私は覚悟を決めて口を開く。

「私に字を教えて欲しいんだけど、ジョセフは書ける?」

「字?書けるよ。あんまり難しい単語とかはわかんないけど、必要最低限なものは」

 やった!当たりだ!

「おねがい!私、実は字が書けないし、あんまり読めないの。でもそれが他の女中仲間にバレるといじめられそうで、他の子には頼めなくて。だから私に教えて欲しいの!もちろん、ただとは言わない!でも、知っての通りここのお給料だとあんまり手持ちがなくて、だからー」

 一気に捲し立ててずいっと詰め寄り、ジョセフの手を握って自分の胸に誘導する。

「えっ!?ぅえっ!!!??」

 ジョセフは急なことに対応できないまま、オロオロと目を泳がせ、みるみるうちに顔が真っ赤に染め上がっていった。

 このまま行けばイケる!

 そう確信し、前ボタンをそっと外し、ジョセフの手を服の中に導いて胸を包む。
 庭仕事をしていた手はひんやりとしていて、ピクッと身体が震えたが、そのまま胸を揉むように上から両手で押さえる。

「私、処女じゃないの。結婚する気もない。だから、大丈夫。責任取れなんて言わない」

 コクりと喉をならし、勿体ぶって口を開く。

「セックスさせてあげるから、その代わりに勉強を教えてほしいの」

 やわやわと胸を揉ませながら、上目遣いでスカイブルーの瞳をじっと見つめる。
 なんだこれ、めっちゃ恥ずかしい。でも負けるな。我慢よ、我慢。
 今までこんな男目当ての肉食女子のやるようなことは嫌悪していたけど、仕方ない。生きていくためだ。羞恥心を捨てて女優になるのよ、映見!

「……う、で、でも」

 ジョセフが何かを言おうとしたところに勢いよく抱きついて、そのまま唇を塞ぐ。否定の言葉を言わせてたまるか!
 超至近距離で、驚いて目を真ん丸にしたジョセフと目が合う。その顔がなんだか可愛くって可笑しくって、少し笑ってしまう。
 すると、ジョセフも目を少し細めて笑ったように見えた。

「ん?あ、う」

 急にスイッチが切り替わったのか、ジョセフはさっきまでの受け身キスから一転、積極的に私の唇を貪り始めた。角度を変えて唇を食み、服の中の手も不埒に動きだす。もう片方の手でぐっと腰を掴まれてしまい、逃げようにも逃げられない。いや、逃げるつもりなんて毛頭ないのだけど、まさか急にこんなに積極的になるなんて。でも自分から仕掛けておいて待ってなんて言えるわけもなく、結局されるがままになってしまった。

「っあ…」

 ジョセフのキスは巧みだった。激しく吸ったかと思うと、優しく舌を入れて絡められる。歯列を舌でなぞられ、そして唇を啄まれる。
 胸をまさぐる手つきもまた、しかり。やわやわと弾力を確かめるように揉みながらも、乳首をこりこりとつまんだり、きゅうっときつく引っ張ったり。
 だんだんと息が上がってきて、頭が霞んでボーッとしてきた。
 あれ。なんだかすごく上手じゃない?なんか慣れてる?もしかしてもしかして、童貞じゃないとか?

 このままだとなし崩しに本番まで行きそうで、胸を叩いて待ったをかけると、ジョセフはゆっくりと唇を離し私の顔を覗きこんできた。その顔は壮絶な色気を帯びていて、とてもじゃないけど童貞臭さなんて感じられない。

「どうしたの?」

「…っあ、ちょっと、待って。あの………じゃあ、オッケーてことでいいの?」

「…………うん、そだね」

 よし、やった!
 望んでいた言葉を引き出せて、ぐっと心の中でガッツポーズをきめる。

「じゃあ!私契約書書けないから今から言うこと、約束して! まず、勉強は仕事後か休みの日でお互いの時間が合うとき。勉強の内容は字が主だけど、その他にもあなたの知っている歴史だとかマナーだとか、その他の教養も含むこと。セックスは私がオッケーを出した日だけ。私以外の人とはやらないこと。あなたに好きな人や恋人ができたらこの関係は終わりにする。以上、五つを守ってくれる?」

「……………」

 何か考える素振りをするジョセフを丸め込むため、そっと手を股間に当てる。冷静に考える時間を与えてはいけない。こういうのは雰囲気と勢いが大事なのだと、新川が聖女になった一連の件で学んだ。

「……守れるなら、今から入れてもいいから」

 そっと囁いてまた目を見つめると、ジョセフの喉がゴクっと大きく上下した。ちなみに触れた手の下にある塊も、ビクンと跳ねた。

「………わかった」

 ジョセフはそう言うやいなや、目をぎらつかせて唇を重ねてきた。
 さっきよりも深く、そしてねっとりとした舌遣いに、身体から力が抜けていく。

 そのまま温室で立ったままするなんて、童貞にはレベルが高いんじゃないかと心配だったけど、ジョセフの愛撫は(童貞だとは思えない位)とても巧みで、私が今まで経験したことのある二人の倍はありそうな巨大なモノも、なんとか入った。

 所謂立ちバックでガンガン腰を振られ、今まで誰の侵入も許していない奥の奥の方までガツガツ突かれ。私は声を出さないようにするのに必死で、何がなんだか分からないまま初めてのセックスは終わった。そう、気がついたら終わっていたのだ。

 私の予定では、突然の色仕掛けに混乱してる童貞ジョセフを年上で経験豊富な私がリードしながら、なかば強引に事を進めるはずだったんだけど、まさか全く逆になっていまうとは。

 でも結果、目的は果たせたのでまあ良しとしよう。と思うと同時に、毎回こんなに激しかったらどうしようと不安もよぎる。

 はあはあと肩で息をしながら後ろを振り返ると、全然余裕そうな爽やかな顔をしたジョセフと目が合った。そして、やっぱり爽やかな笑みを浮かべ、ちゅっと軽く唇を合わせられる。

 全然童貞臭くない。むしろ経験豊富な気さえするけど……まあ、いいか。達成感と久々の行為による疲労感で、私は深く考えることを早々に放棄した。



 こうして、異世界でキャリアアップを望む私とジョセフとの関係は始まったのだった。

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