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本編
そして二人は(1)
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朝の鐘が鳴り響く。
いつも通り私は濡らした布巾で顔を拭き、安い化粧水をつける。
最近肌のモチがいい。人は環境に適応する生き物らしく、私の肌もすっかり強くなったものだ。高級化粧品で甘やかすのは逆に肌の自己再生能力を弱めるということがよくわかった。
伸びた髪の毛を簡単に結び一つにまとめると、メイド服に着替えて食堂へと向かう。
年が明けて早二週間。
建国祭で毎日お祭り騒ぎが繰り広げられていたが、すっかり日常へと、戻り、私は相も変わらず女中の仕事をしている。
食堂へ入り、定番の一番隅のテーブルに座る。
今日のメニューは鶏肉の煮込みと温野菜のサラダだった。もちろん有無を言わさずプレートに山盛にされ、ずっしりと重い。
朝からこんなに食べられないとずっと思っていたけど、すっかり身体が慣れてしまい、今では時間はかかるが全て食べれるようになった。
「おはよ、サトゥ。相変わらず早いわね」
ルーシー達が声をかけてきて、私を囲んで座る。いつの間にか、四人で食べるのが当たり前になっていた。
食べながらいつものように三人の会話を聞いていると、ふいに私に話が振られた。
「ねっ、サトゥもそう思うでしょ!?」
「?ごめん聞いてなかった。何の話?」
「もうっ。だから、結婚する時は真っ赤なドレスが一番可愛いよねって話!やっぱり花嫁が一番目立たないと」
「ふんだんに刺繍で飾り付けて、お揃いの頭飾りをつけるのもいいわね!」
「私はいっぱいの花冠をするのが夢だわ!だから起の節に結婚したいの!」
彼女たちはどうやら結婚するときの衣装について盛り上がっていたらしい。年相応の可愛いらしい話題だ。
「サトゥは東の国から来たんでしょ?向こうはどういう衣装を着るの?」
「私のところは花嫁は白い衣装を着ていたかな。ドレスでも、民族衣装でも」
「白!?それってすごく地味じゃないの!?何かパッとしないわね」
さっきまでキラキラと瞳を輝かせていたケイトが、あからさまに残念そうな顔をする。
「何で白なの?」
「うーん。本当かどうかわからないけど、白って純粋とか無垢とかっていう印象があったから。その、清らかな身体をあなたに捧げるって、ことなんじゃない?あとは、あなた色に染めてって意味とか」
自分で言っておきながら、何だか気恥ずかしくってどんどん小声になる。
私の言葉にルーシー達は一瞬固まり、みるみるうちに頬を赤く染めた。
「………何、それ」
「………すっごく素敵じゃない!!ちょっとエッチな所がまたいいわ!」
「きゃー!素敵!私も白にしようかしら!」
「ちょっといい布地使って、ほんの少し刺繍を加えるのも可愛いわね!」
「やだー!夢が膨らむわ!」
三人はどんどん話が盛り上がり、興奮しているようだ。
喜んでくれたのなら、まあ良かった。
キャイキャイ話に花を咲かせていたが、不意にケイトがため息を吐き、それを合図に二人も口を閉じた。
「…?どうしたの?」
私が尋ねるとルーシーが困ったような顔をして答えた。
「ケイト、今度お見合いするのよ。話が進めば転の節の始めにはここを辞めて、実家で花嫁修業をしないといけないの」
「!!そうなの!?それは、その、おめでとう!………と言っていいのかな」
女中は皆ここで行儀見習いとして何年か過ごし、その後結婚して辞めるのが通例だ。
この屋敷に二十歳以上の女中がほぼいないのもそういう理由で、むしろ二十歳以上の人は私を含め、所謂訳ありの人たちだ。
彼女たちは初めこそ仕事に対してやる気の欠片も感じられなかったが、最近はとても楽しそうに積極的にやっている。なので、このタイミングで辞めるのは少し勿体ないなと思う。
「………ありがとう。勿論おめでたいことなんだけど、私もうちょっとここで、皆と働きたかったわ」
少し寂しそうにケイトが笑う。
さっきまでの少女のような笑顔ではなく、大人の哀愁を滲ませた笑顔だった。
「私たちだって、いつまで居られるかわからないわ。結婚してしまったらもうこうやって集まることも難しいだろうし。寂しいわ」
アリスが俯いて鼻をすすり始め、四人の間に重苦しい空気が流れる。
「…………っもう!皆朝から暗くならないの!まだ先の話じゃない。それまで楽しく働きましょうよ!それより、話は戻るんだけど、サトゥの結婚式では白のドレスじゃなくてセイミ色がいいと思うの」
ルーシーが明るい声を出し、話を切り替える。彼女はこうやって皆をまとめるのが上手だ。
「そうね!それがいいわよ!と、言うよりも他の色なんて多分許されないわ」
さっきまで沈んでいたケイトが、一転しニヤニヤしながら私を見て言う。言っている意味が分からず「なんで?」と尋ねると、隣にいたアリスに肩をバシバシ叩かれた。
「っもーーー!言わせないでよ!もう私はあなた色に染まってますってことでしょ!」
「二人の結婚式には是非呼んでね!」
セイミ色と言われ、それがジョセフの瞳の色だと言うことにようやく気付いた。じわじわと頬に熱が集まり、頭がぽんっと爆発する。
「んな な、何を!い、言ってるの!?」
「見てたらそんなのすぐ分かるわよ。サトゥは隠したがってるみたいだから言わなかったけど、最近は二人の空気が甘くて甘くて。見てるこっちが胸焼けしちゃうわよ」
なななな、何だって!!!???
それってジョセフとのこと言ってるんだよね!?
動揺が隠しきれずスプーンを思わず落としてしまった。驚きすぎて言葉が出ず、私は馬鹿みたいにパクパクと口を動かすことしか出来なかった。
「ぷっ。サトゥ顔真っ赤。可愛い。やっぱ二人はいい仲なのね」
「ジョセフさんの態度は見ててバレバレだったけど、サトゥは普段と変わらなかったし、いまいち確証が得られなかったんだけど」
「これでわかったわね。おめでとうサトゥ!すごくお似合いよ!」
代わる代わるお祝いの言葉をかけられるも私の口からは、うっ、とか、あっ、しか出てこない。
「ジョセフさんって他の人にはすごくぶっきらぼうで全然話もしないのに、サトゥにだけすごく優しいし」
「他の男の人がサトゥに近付こうとすると、物凄い睨んで牽制してたしね」
「建国祭の時は凄かったわね!サトゥがあんまり綺麗だからって怒り出すんだから!独占欲強すぎてサトゥも大変ね」
そ、そうだったんだ……全然知らなかった。
そこまで話すと、ルーシーはニヤニヤさせた顔を急に神妙な面持ちに変えた。
「それに。ミシェル達と一緒にいた時、私達も言われたわ。サトゥを傷つけたらただじゃおかないって。それが凄く怖くって、私達は踏みとどまったんだけど。……ミシェルには逆効果だったみたいで、あんなことになって。……本当にあの時はごめんなさい」
ルーシー達が私に頭を下げる。そうなんだ。あの時、そんなことが……。
私が知らなかっただけで、ジョセフは私のことずっと守ってくれてたんだ。私、ずっとジョセフに守られてたんだ。
動揺していた頭が落ち着き、今度は痛いくらいに心臓が締め付けられる。
「………もう、いいってば。本当に何も思ってないから」
三人の会話が私の心をじんわりと温めていく。
ジョセフが好き。好きな気持ちが溢れてくる。
どうしよう、本当にどこまで好きになるんだろう。
気持ちに終わりが見えなくて、ちょっと怖くなる。
◇
あれからどうなったかと言うと、レイフォードさんに勉強を教えてもらうと言いつつも、あの人も伯爵について王都に行く事が多くいないことがほとんどなので、結局いつものようにジョセフと二人で勉強している。ただし、場所はジョセフの部屋ではなく第一会議室で。
広い会議室のテーブルの隅に、二人で並んで座り勉強をする。
三冊の本のうち、一番簡単そうな『創世記』から読み進めることにした。所謂、神話と歴史を組み合わせたようなもので、この国の根底にあるものだ。
ちなみに、他の二冊は『国法』と『領地法』という法律の本だ。
園芸と料理の本を読んでいたのに、一気にレベルが上がりすぎじゃない!?
まだ字だってうまく書けないのに。伯爵はスパルタでドSだと思う。結婚できない理由は絶対それだ。間違いない。
「一番上の神様がドラクス、その奥さんが豊穣の神マリオネス」
「これは……頭、深い、神?んー、ノルキャミオス?」
「知識の神ノルカモスね」
「なるほど、そう訳せるのか。やっぱり難しくてなかなか進まないな。理解が遅くてジョセフも嫌になってない?」
「なるわけないよ。創世記なら、こんなわざと難しく書いたような本じゃなくて、子供用の絵本もあるんだ。それだと物語性があって、もっと面白いよ。今度書庫を探してみようか」
「………ありがとう。私の勉強に付き合ってくれて」
「うん。レイフォードと二人になんてできないし、それに俺も頑張るって決めたから。サトゥだけが勉強してるんじゃないよ。なんか上手く兄さん達に乗せられたような気もするけど」
ジョセフはふぅとため息を吐いた。
「それはわかる。伯爵はやっぱりジョセフにこの領地を任せたいんだね。私との結婚だって、ジョセフをやる気にさせるためにわざと言ったんだろうし。ちょっとやり方が押し付けがましくて解りづらいけど、ジョセフのこと凄く期待してるんじゃないのかな?それに応えないといけないって事はないけど、ジョセフがやるって言ってくれて、内心喜んでると思うよ」
私がそう言うとジョセフはちょっと照れたように頭を掻いた。
「そうかな。兄さんの考えてることはよく分かんなくて。でも、サトゥと結婚するって言ったのは結構本気だったよ!あんな笑ってる兄さん、見たことなかったし。本当に兄さんには気を付けてね。絶対に二人っきりになっちゃ駄目だよ」
「いや、だからそれは冗談だって。そんなわけないよ。ジョセフ心配しすぎ」
笑ってそう返すと、ジョセフは真剣な目で私を見つめていた。
決して冗談ではないという真剣な眼差しは僅かに怒りを帯びていて、ジョセフと目が合うとビクッと身体が震えた。
「……本当に。俺の言うことわかってないよね」
そう言うと身体の向きをかえ、私と向き合い肩を両手で抑えられる。
「こうやって掴まれたらどうするの?抵抗してみて」
口調は優しいが、表情は硬い。途端に怖くなって身を捩るが、全然動かせそうにない。
「っや、ちょっと、離して。痛いよ」
「ほら。そんなんじゃ全然駄目だよ。本気で嫌がってるの?」
いつもは穏やかなスカイブルーの瞳が、伯爵のアイスブルーの瞳と重なる。ジョセフと伯爵を似てるなんて思ったことない。血を分けた実の兄弟だと知った後だって、全然似てないなって思ってた。なのに、今のジョセフは伯爵によく似ていて、ジョセフなのにジョセフじゃない別の誰かみたいで。そう思ったら、サアーっと一気に血の気が引いて行った。
肩を抑えられたままゆっくりと顔が近づき、唇が触れるギリギリの所でぎゅっと目をつむる。怖い、っていうよりも、嫌だと思った。
でも、一向に予想していた温もりは訪れなかった。
「ねえ、このままじゃキスしちゃうよ。いいの?」
少しでも動けば唇が触れてしまう程の至近距離。ジョセフの冷たい言葉とは反対に、肌にかかる吐息はひどく熱い。そっと目を開けると、ジョセフらしくない冷え冷えとしたアイスブルーの瞳が、私を真っすぐに射抜いていた。
頭が混乱して、必死にもがくもびくともしない。その絶対に抗えない男の力に、一瞬であの時がフラッシュバックする。
無表情のジョセフが怖くて、本当に伯爵のようで、歯がカタカタと震え涙が溢れた。
すると、ジョセフは肩を掴んだ手を緩めそっと抱き締め、私の肩に頭を乗せてきた。
「……やりすぎた。怖い思いさせてごめん。でも、サトゥは女の子なんだから、力で男には敵わないんだよ。お願い、もっと危機感持って。俺、もう二度とあんな思いするの嫌だ」
ジョセフが私の耳元で、小さく呟く。今にも泣き出しそうな、ううん、今まさに泣いている様な震えた声で。
ーー私はバカだ。
今朝ルーシー達に、どれだけジョセフが私を守ってくれていたか聞いたばかりだったのに。ボブに襲われた時も、ジョセフはあんなにも自分を責めていたのに。
何にも学習しないで、また同じ事を繰り返すとこだった。
相手が私のことをどう思っているかは関係ないんだ。もっとしっかりしないと!優しいこの人を悲しませないためにも。
ジョセフは私を抱き締めたまま、少しだけ身体を離して私の顔を覗きこんできた。
「……ごめんね、ちょっとやりすぎた。でも、お願い。俺以外に触れさせないで。」
そう言って、ぎゅっと両手を包まれる。
「まだ怖い?」
そう私を上目遣いで思案気に見つめるジョセフの瞳は、いつもの、私の大好きなセイミ色をしていた。
緩く首を横に振ると、ジョセフが安心したようにフッと表情を弛めた。
そしてそのまま顔が近付き、そっと唇が重ねられる。チュッチュッと音を立てて吸い付き、私の涙もペロッと舐められる。
「私も、ごめん。もっと気を付ける。ジョセフとしか、したくない。ジョセフが、いい」
今度は私の方から唇を重ねる。
たくさん、たくさんキスはした。だけど、私からするのは、多分これが初めてだ。慣れなくて恥ずかしい。けど、一生懸命キスを繰り返す。
ジョセフにありがとうって、好きだって伝えたくて夢中だった。
少しするとジョセフも舌を差し込んできて、お互いに絡めあい深いキスになる。
呼吸が荒くなって苦しい、けど止めたくない。
ジョセフの頬を両手で包んで、離れないように舌を突きだす。優しく歯で挟まれて、ぴりりと震えた。
私の下腹部がきゅんきゅん締まり、ジョセフの硬く立ち上がったものを感じる。
前戯のような濃厚なキスを繰返し、お互いに下半身を押し付け合う。
はぁはぁと荒い呼吸のまま至近距離で見つめ合えば、ジョセフは熱を帯びた野性的な眼差しで私を見ていた。ドキンと一回大きく胸が跳ね、そのままドッキンドッキンとリズムを刻む。
どうしよう…………もう、止まらない。
そう思った時、急に扉がノックされた。
トントン
「お茶をお持ちしました」
執事長のマイルズがガチャリと扉を開ける前に 慌てて二人で離れて座る。
何とか平然を装って、勉強の続きをするが、呼吸は荒く顔は真っ赤なままだ。
マイルズがテーブルにお茶を置き、部屋から出ていくのをドキドキしながら待つ。良かった。どうやらマイルズにはバレてないみたい。ホッと肩を下ろすと、マイルズは扉の前で止まりこちらを向いた。
「お二方。オルレイン様より、不埒な行為はさせないようにと申し使っておりますので、一応言わせていただきますが。勉強中は我慢していただいて、続きはお部屋の方でお願い致します」
そう言って苦笑しながらマイルズは部屋を後にした。
……ば、バレてる!バレてるよ!
二人で顔を真っ赤にして俯く。
死にたい!恥ずかしい!!えっ!?みんな私達がどういう関係か知ってるの!?
一人悶えていると、長いため息が隣から聞こえた。
「兄さんめ、余計なことを。とりあえず、鐘がなるまで勉強して、それから俺の部屋に行こ。明日サトゥ休みでしょ。今夜はずっと一緒にいたい」
手をギュッと握られ、スカイブルーの瞳で見つめられると嫌とは言えず、私は素直に頷いた。
いつも通り私は濡らした布巾で顔を拭き、安い化粧水をつける。
最近肌のモチがいい。人は環境に適応する生き物らしく、私の肌もすっかり強くなったものだ。高級化粧品で甘やかすのは逆に肌の自己再生能力を弱めるということがよくわかった。
伸びた髪の毛を簡単に結び一つにまとめると、メイド服に着替えて食堂へと向かう。
年が明けて早二週間。
建国祭で毎日お祭り騒ぎが繰り広げられていたが、すっかり日常へと、戻り、私は相も変わらず女中の仕事をしている。
食堂へ入り、定番の一番隅のテーブルに座る。
今日のメニューは鶏肉の煮込みと温野菜のサラダだった。もちろん有無を言わさずプレートに山盛にされ、ずっしりと重い。
朝からこんなに食べられないとずっと思っていたけど、すっかり身体が慣れてしまい、今では時間はかかるが全て食べれるようになった。
「おはよ、サトゥ。相変わらず早いわね」
ルーシー達が声をかけてきて、私を囲んで座る。いつの間にか、四人で食べるのが当たり前になっていた。
食べながらいつものように三人の会話を聞いていると、ふいに私に話が振られた。
「ねっ、サトゥもそう思うでしょ!?」
「?ごめん聞いてなかった。何の話?」
「もうっ。だから、結婚する時は真っ赤なドレスが一番可愛いよねって話!やっぱり花嫁が一番目立たないと」
「ふんだんに刺繍で飾り付けて、お揃いの頭飾りをつけるのもいいわね!」
「私はいっぱいの花冠をするのが夢だわ!だから起の節に結婚したいの!」
彼女たちはどうやら結婚するときの衣装について盛り上がっていたらしい。年相応の可愛いらしい話題だ。
「サトゥは東の国から来たんでしょ?向こうはどういう衣装を着るの?」
「私のところは花嫁は白い衣装を着ていたかな。ドレスでも、民族衣装でも」
「白!?それってすごく地味じゃないの!?何かパッとしないわね」
さっきまでキラキラと瞳を輝かせていたケイトが、あからさまに残念そうな顔をする。
「何で白なの?」
「うーん。本当かどうかわからないけど、白って純粋とか無垢とかっていう印象があったから。その、清らかな身体をあなたに捧げるって、ことなんじゃない?あとは、あなた色に染めてって意味とか」
自分で言っておきながら、何だか気恥ずかしくってどんどん小声になる。
私の言葉にルーシー達は一瞬固まり、みるみるうちに頬を赤く染めた。
「………何、それ」
「………すっごく素敵じゃない!!ちょっとエッチな所がまたいいわ!」
「きゃー!素敵!私も白にしようかしら!」
「ちょっといい布地使って、ほんの少し刺繍を加えるのも可愛いわね!」
「やだー!夢が膨らむわ!」
三人はどんどん話が盛り上がり、興奮しているようだ。
喜んでくれたのなら、まあ良かった。
キャイキャイ話に花を咲かせていたが、不意にケイトがため息を吐き、それを合図に二人も口を閉じた。
「…?どうしたの?」
私が尋ねるとルーシーが困ったような顔をして答えた。
「ケイト、今度お見合いするのよ。話が進めば転の節の始めにはここを辞めて、実家で花嫁修業をしないといけないの」
「!!そうなの!?それは、その、おめでとう!………と言っていいのかな」
女中は皆ここで行儀見習いとして何年か過ごし、その後結婚して辞めるのが通例だ。
この屋敷に二十歳以上の女中がほぼいないのもそういう理由で、むしろ二十歳以上の人は私を含め、所謂訳ありの人たちだ。
彼女たちは初めこそ仕事に対してやる気の欠片も感じられなかったが、最近はとても楽しそうに積極的にやっている。なので、このタイミングで辞めるのは少し勿体ないなと思う。
「………ありがとう。勿論おめでたいことなんだけど、私もうちょっとここで、皆と働きたかったわ」
少し寂しそうにケイトが笑う。
さっきまでの少女のような笑顔ではなく、大人の哀愁を滲ませた笑顔だった。
「私たちだって、いつまで居られるかわからないわ。結婚してしまったらもうこうやって集まることも難しいだろうし。寂しいわ」
アリスが俯いて鼻をすすり始め、四人の間に重苦しい空気が流れる。
「…………っもう!皆朝から暗くならないの!まだ先の話じゃない。それまで楽しく働きましょうよ!それより、話は戻るんだけど、サトゥの結婚式では白のドレスじゃなくてセイミ色がいいと思うの」
ルーシーが明るい声を出し、話を切り替える。彼女はこうやって皆をまとめるのが上手だ。
「そうね!それがいいわよ!と、言うよりも他の色なんて多分許されないわ」
さっきまで沈んでいたケイトが、一転しニヤニヤしながら私を見て言う。言っている意味が分からず「なんで?」と尋ねると、隣にいたアリスに肩をバシバシ叩かれた。
「っもーーー!言わせないでよ!もう私はあなた色に染まってますってことでしょ!」
「二人の結婚式には是非呼んでね!」
セイミ色と言われ、それがジョセフの瞳の色だと言うことにようやく気付いた。じわじわと頬に熱が集まり、頭がぽんっと爆発する。
「んな な、何を!い、言ってるの!?」
「見てたらそんなのすぐ分かるわよ。サトゥは隠したがってるみたいだから言わなかったけど、最近は二人の空気が甘くて甘くて。見てるこっちが胸焼けしちゃうわよ」
なななな、何だって!!!???
それってジョセフとのこと言ってるんだよね!?
動揺が隠しきれずスプーンを思わず落としてしまった。驚きすぎて言葉が出ず、私は馬鹿みたいにパクパクと口を動かすことしか出来なかった。
「ぷっ。サトゥ顔真っ赤。可愛い。やっぱ二人はいい仲なのね」
「ジョセフさんの態度は見ててバレバレだったけど、サトゥは普段と変わらなかったし、いまいち確証が得られなかったんだけど」
「これでわかったわね。おめでとうサトゥ!すごくお似合いよ!」
代わる代わるお祝いの言葉をかけられるも私の口からは、うっ、とか、あっ、しか出てこない。
「ジョセフさんって他の人にはすごくぶっきらぼうで全然話もしないのに、サトゥにだけすごく優しいし」
「他の男の人がサトゥに近付こうとすると、物凄い睨んで牽制してたしね」
「建国祭の時は凄かったわね!サトゥがあんまり綺麗だからって怒り出すんだから!独占欲強すぎてサトゥも大変ね」
そ、そうだったんだ……全然知らなかった。
そこまで話すと、ルーシーはニヤニヤさせた顔を急に神妙な面持ちに変えた。
「それに。ミシェル達と一緒にいた時、私達も言われたわ。サトゥを傷つけたらただじゃおかないって。それが凄く怖くって、私達は踏みとどまったんだけど。……ミシェルには逆効果だったみたいで、あんなことになって。……本当にあの時はごめんなさい」
ルーシー達が私に頭を下げる。そうなんだ。あの時、そんなことが……。
私が知らなかっただけで、ジョセフは私のことずっと守ってくれてたんだ。私、ずっとジョセフに守られてたんだ。
動揺していた頭が落ち着き、今度は痛いくらいに心臓が締め付けられる。
「………もう、いいってば。本当に何も思ってないから」
三人の会話が私の心をじんわりと温めていく。
ジョセフが好き。好きな気持ちが溢れてくる。
どうしよう、本当にどこまで好きになるんだろう。
気持ちに終わりが見えなくて、ちょっと怖くなる。
◇
あれからどうなったかと言うと、レイフォードさんに勉強を教えてもらうと言いつつも、あの人も伯爵について王都に行く事が多くいないことがほとんどなので、結局いつものようにジョセフと二人で勉強している。ただし、場所はジョセフの部屋ではなく第一会議室で。
広い会議室のテーブルの隅に、二人で並んで座り勉強をする。
三冊の本のうち、一番簡単そうな『創世記』から読み進めることにした。所謂、神話と歴史を組み合わせたようなもので、この国の根底にあるものだ。
ちなみに、他の二冊は『国法』と『領地法』という法律の本だ。
園芸と料理の本を読んでいたのに、一気にレベルが上がりすぎじゃない!?
まだ字だってうまく書けないのに。伯爵はスパルタでドSだと思う。結婚できない理由は絶対それだ。間違いない。
「一番上の神様がドラクス、その奥さんが豊穣の神マリオネス」
「これは……頭、深い、神?んー、ノルキャミオス?」
「知識の神ノルカモスね」
「なるほど、そう訳せるのか。やっぱり難しくてなかなか進まないな。理解が遅くてジョセフも嫌になってない?」
「なるわけないよ。創世記なら、こんなわざと難しく書いたような本じゃなくて、子供用の絵本もあるんだ。それだと物語性があって、もっと面白いよ。今度書庫を探してみようか」
「………ありがとう。私の勉強に付き合ってくれて」
「うん。レイフォードと二人になんてできないし、それに俺も頑張るって決めたから。サトゥだけが勉強してるんじゃないよ。なんか上手く兄さん達に乗せられたような気もするけど」
ジョセフはふぅとため息を吐いた。
「それはわかる。伯爵はやっぱりジョセフにこの領地を任せたいんだね。私との結婚だって、ジョセフをやる気にさせるためにわざと言ったんだろうし。ちょっとやり方が押し付けがましくて解りづらいけど、ジョセフのこと凄く期待してるんじゃないのかな?それに応えないといけないって事はないけど、ジョセフがやるって言ってくれて、内心喜んでると思うよ」
私がそう言うとジョセフはちょっと照れたように頭を掻いた。
「そうかな。兄さんの考えてることはよく分かんなくて。でも、サトゥと結婚するって言ったのは結構本気だったよ!あんな笑ってる兄さん、見たことなかったし。本当に兄さんには気を付けてね。絶対に二人っきりになっちゃ駄目だよ」
「いや、だからそれは冗談だって。そんなわけないよ。ジョセフ心配しすぎ」
笑ってそう返すと、ジョセフは真剣な目で私を見つめていた。
決して冗談ではないという真剣な眼差しは僅かに怒りを帯びていて、ジョセフと目が合うとビクッと身体が震えた。
「……本当に。俺の言うことわかってないよね」
そう言うと身体の向きをかえ、私と向き合い肩を両手で抑えられる。
「こうやって掴まれたらどうするの?抵抗してみて」
口調は優しいが、表情は硬い。途端に怖くなって身を捩るが、全然動かせそうにない。
「っや、ちょっと、離して。痛いよ」
「ほら。そんなんじゃ全然駄目だよ。本気で嫌がってるの?」
いつもは穏やかなスカイブルーの瞳が、伯爵のアイスブルーの瞳と重なる。ジョセフと伯爵を似てるなんて思ったことない。血を分けた実の兄弟だと知った後だって、全然似てないなって思ってた。なのに、今のジョセフは伯爵によく似ていて、ジョセフなのにジョセフじゃない別の誰かみたいで。そう思ったら、サアーっと一気に血の気が引いて行った。
肩を抑えられたままゆっくりと顔が近づき、唇が触れるギリギリの所でぎゅっと目をつむる。怖い、っていうよりも、嫌だと思った。
でも、一向に予想していた温もりは訪れなかった。
「ねえ、このままじゃキスしちゃうよ。いいの?」
少しでも動けば唇が触れてしまう程の至近距離。ジョセフの冷たい言葉とは反対に、肌にかかる吐息はひどく熱い。そっと目を開けると、ジョセフらしくない冷え冷えとしたアイスブルーの瞳が、私を真っすぐに射抜いていた。
頭が混乱して、必死にもがくもびくともしない。その絶対に抗えない男の力に、一瞬であの時がフラッシュバックする。
無表情のジョセフが怖くて、本当に伯爵のようで、歯がカタカタと震え涙が溢れた。
すると、ジョセフは肩を掴んだ手を緩めそっと抱き締め、私の肩に頭を乗せてきた。
「……やりすぎた。怖い思いさせてごめん。でも、サトゥは女の子なんだから、力で男には敵わないんだよ。お願い、もっと危機感持って。俺、もう二度とあんな思いするの嫌だ」
ジョセフが私の耳元で、小さく呟く。今にも泣き出しそうな、ううん、今まさに泣いている様な震えた声で。
ーー私はバカだ。
今朝ルーシー達に、どれだけジョセフが私を守ってくれていたか聞いたばかりだったのに。ボブに襲われた時も、ジョセフはあんなにも自分を責めていたのに。
何にも学習しないで、また同じ事を繰り返すとこだった。
相手が私のことをどう思っているかは関係ないんだ。もっとしっかりしないと!優しいこの人を悲しませないためにも。
ジョセフは私を抱き締めたまま、少しだけ身体を離して私の顔を覗きこんできた。
「……ごめんね、ちょっとやりすぎた。でも、お願い。俺以外に触れさせないで。」
そう言って、ぎゅっと両手を包まれる。
「まだ怖い?」
そう私を上目遣いで思案気に見つめるジョセフの瞳は、いつもの、私の大好きなセイミ色をしていた。
緩く首を横に振ると、ジョセフが安心したようにフッと表情を弛めた。
そしてそのまま顔が近付き、そっと唇が重ねられる。チュッチュッと音を立てて吸い付き、私の涙もペロッと舐められる。
「私も、ごめん。もっと気を付ける。ジョセフとしか、したくない。ジョセフが、いい」
今度は私の方から唇を重ねる。
たくさん、たくさんキスはした。だけど、私からするのは、多分これが初めてだ。慣れなくて恥ずかしい。けど、一生懸命キスを繰り返す。
ジョセフにありがとうって、好きだって伝えたくて夢中だった。
少しするとジョセフも舌を差し込んできて、お互いに絡めあい深いキスになる。
呼吸が荒くなって苦しい、けど止めたくない。
ジョセフの頬を両手で包んで、離れないように舌を突きだす。優しく歯で挟まれて、ぴりりと震えた。
私の下腹部がきゅんきゅん締まり、ジョセフの硬く立ち上がったものを感じる。
前戯のような濃厚なキスを繰返し、お互いに下半身を押し付け合う。
はぁはぁと荒い呼吸のまま至近距離で見つめ合えば、ジョセフは熱を帯びた野性的な眼差しで私を見ていた。ドキンと一回大きく胸が跳ね、そのままドッキンドッキンとリズムを刻む。
どうしよう…………もう、止まらない。
そう思った時、急に扉がノックされた。
トントン
「お茶をお持ちしました」
執事長のマイルズがガチャリと扉を開ける前に 慌てて二人で離れて座る。
何とか平然を装って、勉強の続きをするが、呼吸は荒く顔は真っ赤なままだ。
マイルズがテーブルにお茶を置き、部屋から出ていくのをドキドキしながら待つ。良かった。どうやらマイルズにはバレてないみたい。ホッと肩を下ろすと、マイルズは扉の前で止まりこちらを向いた。
「お二方。オルレイン様より、不埒な行為はさせないようにと申し使っておりますので、一応言わせていただきますが。勉強中は我慢していただいて、続きはお部屋の方でお願い致します」
そう言って苦笑しながらマイルズは部屋を後にした。
……ば、バレてる!バレてるよ!
二人で顔を真っ赤にして俯く。
死にたい!恥ずかしい!!えっ!?みんな私達がどういう関係か知ってるの!?
一人悶えていると、長いため息が隣から聞こえた。
「兄さんめ、余計なことを。とりあえず、鐘がなるまで勉強して、それから俺の部屋に行こ。明日サトゥ休みでしょ。今夜はずっと一緒にいたい」
手をギュッと握られ、スカイブルーの瞳で見つめられると嫌とは言えず、私は素直に頷いた。
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