放浪戦記

アブナイ羊

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幼少期 盗賊団時代

説教

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「ハンナ④」を読んでからこの話を読むことを推奨します


ーーーーーーーーーー


仕事は無事終わった。先週のような敵が想定以上に強いなどと言うアクシデントもなく、アルトがいなくても無事終わった。

「ハンナ、君と話したいことがある。ちょっと来てくれ」

そして、視界の端でハンナがリーダーに呼び出される。
仕事の時にチラチラとハンナの方を見ていたのだが、昨日とまったく同じ様子で魔術が撃てず、強く言われると撃つが魔術は対象から逸れて地面や空を切る。

「それからラヴィ。君もだ」

え…?わたしなんかしたかな?特に失敗はしてないと思うんだけど。
アジトの廃倉庫を出て、裏に回った。ここは盗賊団員でもほとんど通ることはなく、よく説教に使われる。

「ハンナ、君はなぜまともに攻撃ができないんだい?今までずっと魔術の練習をしてきていたんだ。まさか魔術が使えないということはないだろう?何度か風の刃を出していたし、空気中の魔素がないなんてことも無いはずだ」

木箱に腰かけたリーダーが問い詰める。

「えっと、その」

ハンナは、理由を話すには長くなるからどこから話せばいいのか分からずに言い淀んだのだが、リーダーのケルヴィンは何か言いたくない理由があるのだと思った。

「答えろ!理由次第によっては、その首を斬る!!」

凄んだリーダーの姿なんて始めてみた。いつも明るいリーダーから一転、盗賊団の親分へとなっている。

そんなリーダーの剣幕に、ハンナは驚いて泣き出す。
そして、ゆっくりとだがポツポツと理由を話し始めた。










「ふむ。理由は分かったよ。衛兵に何か吹き込まれたとかじゃなくてよかった。
だが、どんな理由であれ働けないのは看過できないな」

それからリーダーは、ハンナに次の仕事までにその恐怖を克服しておくこと、と言ってハンナを帰らせた。

「さてラヴィ。君には頼みがある」

「頼み、ですか」

「あぁ。今週から始まる作物の収穫には参加しなくていいから、ハンナの魔術の的になって欲しいんだ。
もちろん、使う魔術は風の刃じゃなくて風の玉だ。当たったところで小突かれた程度にしか感じないはずだ。できるなら剣で防いでもいい」

確かに風の玉なら攻撃力はほぼ皆無。みぞおちや喉笛にさえ当たらなければ痛みはない。それどころかマッサージのように気持ちいい可能性すらある。
それに、収穫は面倒だから参加しなくていいのは嬉しい。

「やります!」

「そうか、ありがとう。明日から倉庫の中でやっていてくれ。どうか、ハンナが仕事に参加できるようにしてあげて欲しい」

あまり見ないリーダーの真面目な顔で言われると、なかなか断れない。というか、もとより依頼は受けるつもりだったのだが。

「わかりました」
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