放浪戦記

アブナイ羊

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幼少期 盗賊団時代

ハンナとラヴィ

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斧使いと戦ったときと同じ構え、つまり右手に長剣、左手に短剣を持った構えで5メートルほど離れたハンナと対峙する。
ハンナには撃つそぶりは見せずに準備が整い次第いきなり風の玉を撃てと言ってある。
だがハンナはもう何分も杖をわたしに向けた状態で固まっている。


「何をしているんだ、撃て!」


「っ!!」


みかねたリーダーが発破をかける。それでようやく意を決したのか杖を握る手に力が入るのが離れた場所からでも分かった。
背中からハンナに向かってフッと風が吹いた瞬間、肩に衝撃を感じてわたしは仰け反った。
…攻撃が全然わからなかった。これが本番だったら玉ではなく刃が飛んでくるだろう。わたしは死んでいた。


そんな事実に内心ゾッとしていると、ハンナから声がかかった。


「あ、あの、お怪我は……」


「全然大丈夫、衝撃を感じただけだよ。それよりもっと撃って!」


「は、はい!」


それからハンナは風の玉での攻撃に慣れたのか、迷うこと無く魔術を撃ち始めた。
また背中に風が吹く。
そして魔術が今度は足に当たった。また見極められなかった。


だがそれより…


「ねぇ、ハンナ。さっきから風が吹いた時だけ魔術を撃ってない?それじゃ分かりやす過ぎるよ」


それにハンナはキョトンとした反応を返した。
まるで、何を言っているのか分からないと言う風に。


「……えっと、なんのことですか?倉庫の中なので風はないと思うんですけど…」


「そうだね、僕も風なんて無かったと思うよ」


どういうこと?確かに何度も風が吹いていたはずなんだけど。


「遮ってごめん。続けて」


そういうと、また風が吹いた。
次の瞬間今度は腕に衝撃を感じ、体が引っ張られて傾いた。


絶対に風が吹いた。
なんだかよく分からないけれど、風が吹くと魔術が飛んでくるということは分かった。
風が吹いた瞬間によく目を凝らせば、飛んでくる魔術が見えるかもしれない。


風が吹く。来るッ!!肩だ!
そう思った瞬間、肩に風の玉が当たった。
攻撃が見えただけ。だが、それでも成長した。その分かりやすい実感に震えた。








その後何日も練習を続けたが、ついぞ風の玉を避けたり弾いたりすることは出来なかった。
何度も攻撃を受けた場所は、一回一回が小さいダメージでもそれが蓄積して赤黒い打撲になっていた。
それはハンナには黙っておくべきだろう。
明日は仕事だが、リーダーに言って今回だけ休ませて貰うことにした。アルトも復帰するし、特に問題は無いだろう。


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「小説家になろう」からコピペして投稿しているせいか、無駄に改行されて見辛くなっていたので直しました
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