放浪戦記

幼少期 盗賊団時代

どうしても撃てないハンナ

一応、お金の話をしておきます。
鉄貨10枚 = 銅貨1枚
銅貨100枚 = 銀貨1枚 (半銀貨1枚 = 銅貨50枚)
銀貨100枚 = 金貨1枚 (半金貨1枚 = 銀貨50枚)
鉄貨1枚で100円くらいと思っていてください。銅貨1000円、銀貨十万円、金貨一億円です。

細かい設定は覚えていなくても読めるように作っていますので、あんまり気にしなくていいです。

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ハンナの風の玉で打撲をしたところは、治療士の回復魔術のおかげで仕事からみんなが帰ってきた頃には痛みもないくらいに治っていた。

回復魔術はおとぎ話のように傷を一瞬で治すことは出来ない。１日～数週間の長い時間をかけて治す。
それでも、放置するより何十倍も早い。打撲くらいなら普通は2～3週間はかかるのだが、魔術のおかげで１日で治るのだ。

「まだ慣れねぇな、この大剣」

先日壊れてしまった大剣を新調したアルトが軽く振りながら話しかけてきた。
始めての仕事の時に剣を振り回すなとリーダーに怒られていたのに、覚えていないらしい。
…半年以上経ってるし、この馬鹿頭じゃあ無理もないか。

「そんなもんでしょ。それで、怪我はもういいの?」

ぐるぐると右肩を回して見せる。

「おう!ラヴィも治ったんだろ?」

ハンナとの練習のことはリーダーと副リーダー、そしてアルトしか知らない。

「うん」

「…そういやよ。ハンナの奴、また失敗したらしいぜ」

え?練習では躊躇無く撃ててたのに。やっぱり本番だとダメなのかな。

「どうしたら魔術が撃てるようになるんだろ」

そういうと、アルトは首を振って否定した。

「いんや、魔術は撃ててたらしいぜ」

「じゃあ、また当てられなかったの?」

ハンナの風の刃が盾や地面や空に向かうシーンが思い浮かぶ。

「俺も詳しいことは知らないんだけど、突然敵が仰け反ったりしてたから多分風の刃じゃなくて風の玉しか撃てなかったんだと思う。
今またリーダーに呼び出し食らってるぜ」

ミスが長く続くとリーダーが直接処罰を下すと言うのはよく聞く話だが、そういえば処罰って具体的になんなんだろう。

「そろそろ罰が下されるかもなー、あいつ」

「同じこと考えてた。でも具体的に罰ってなんなのか知ってる?」

「この前、見張り役がミスってランク3パーティと戦ったろ?あの後、そんときの見張り役は罰金食らってたのは知ってる。たしか、銅貨30枚だな。」

銅貨30枚とは、わたしに当てはめると仕事3回分の報酬に相当する。結構高い。
ハンナが罰金されるとしたら…まぁ、銀貨何枚とかかな?ハンナはそんなにお金持ってないと思うけど、わたしとアルトが立て替えてあげてもいいと思ってる。
ハンナは真面目だから、お金を返そうと必死になるだろう。そうしたら風の刃も撃てるようになるかもしれない。

ちなみにアルトは立て替えてもいいとは思ってないかもしれないけど、そこは強制的に払わせる。わたしが。
ハンナがわたしの指示を無視したりした時はイラッとしたけど、ハンナのことは普通に好きだから。