それって私が悪いんですか?

keima

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「………それって私が悪いわけではありませんよね。」

貴族の子息や平民の学生が通う学院の学生食堂の中でそんな声が響き渡る。 
 
 声の主である伯爵令嬢は冷ややかな瞳で数分前に自分に婚約破棄を告げた婚約者ーー否、婚約者の公爵子息に言い放った。 その元婚約者の腕には庇護欲のある少女がくっついている。

友人同士だった父親によって幼少期に婚約を結んでいたが、元婚約者の男は初対面のころから伯爵令嬢を蛇蝎のごとく嫌っており、逢うたびに暴言を吐いたり、読書をしていたら読んでいた本を取り上げられたりと、歩み寄ろうとするたびにさけられていたが学院に入学してからは下位貴族の令嬢や平民の女子生徒を取っかえ引っかえして遊ぶようになってしまい、今腕に引っ付いている少女は元婚約者のことを本気で好きになったらしく数か月前から
「自分は彼と愛し合っている」「彼を解放しろ」
などと言って絡んでくるが、令嬢が正論で諭すたびに
「彼に愛されたくて必死ね」
「可哀そう」
などと的外れな事ばかり言うので無視してきたのだが……

 

「真実の愛を見つけた!!お前は身分を笠に彼女をいじめた。そんな女はこの俺に相応しくない。よってお前との婚約を破棄する!!」

 

と昼食で賑わう学生食堂の中で堂々と宣言したあと、元婚約者は
「この女は可愛げが無い」
 だの
「婚約者であった俺を立てなかった」
と伯爵令嬢に対する文句を周囲に言いふらしていたが、その時今まで黙っていた伯爵令嬢が口を開いたのが冒頭の言葉だった。

 

「どう考えても私、別に悪いことしてませんよね。これ」

 
「っ・・・きさ・・「貴方は身分を笠にって言いましたけど、その言葉そっくり貴方に返しますわ。それと貴女も。」


冷ややかだが冷たい伯爵令嬢の目に元婚約者の 「真実の愛」の相手である少女はビクッと肩が跳ねた。

「貴女もこの人に気に入られているのをいいことに「愛されていなくて可愛そう」だの何だの虎の威を飼う狐のごとく私にからんできましたが、貴女のソレ不敬にあたりますよ。それは貴族でも平民でもですが常識ですよ。」

 

「ひっ、ひどい・・・・」

 

ポロポロと涙を流す少女に元婚約者の男はギリッと伯爵令嬢を睨むが周囲の令嬢は口々に
「何様のつもりかしら?」
「礼儀がないわね」 
「酷いのはどちらかしら」
とひそひそと囁きあう。

 

「貴方は可愛げがない、自分を立てろと申しますが可愛げがないのは貴方が原因なんですよ。」

 

「はっはあ!?」

 

「貴方が昔、『笑うな。その顔が不愉快だ』なんて言うから、笑顔で話しかければ貴方は私の髪を引っ張り殴りつけた。だから私は笑うのを止めたんですよ。」

 

 伯爵令嬢のその発言に「うわっ、最低」と誰かが呟いた。

 

「自分を立てろと言いますが、私は充分貴方を立てたつもりです。貴方は私が公爵夫人としてのマナーを学んでいる間何をしていましたか?公爵家の次期当主としての勉強もせず遊び回り逃げ回り女性を侍らせて、貴方はただ逃げているだけではありませんか。」



「うっ、うるさ「それなのに私の文句ばかり言って自分に愛されていない私が悪い?おまけに私は貴方を愛しているから必死なんだですって」


ツカツカと早足で元婚約者の前に近づくとその胸倉を掴んだ。

 

「巫山戯んじゃないわよ、貴方みたいなクズ野郎大っ嫌いよ!!」

 

淑女らしくない、けれど怒りを孕んだその声が食堂に響き渡った。

シンッ・・・と周囲が静かになると伯爵令嬢が掴んでいた手を離し、その拍子に元婚約者はドサリと床に座り込むと、腰を抜かしたのかそのまま動かなかった。

言いたいことを全て言った伯爵令嬢は石の様に固まったままの周囲に対し美しいカーテシーをとるとこう言って去っていった。

 

「お見苦しいところを見せて申し訳ありません。けれど、皆様にも問います。今の話を聞いてもあなた達はそれでも私が悪いと言うのですか。」

 

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