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8年前(5)
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注意:今回、少し痛い描写があります。
事件が起こったのはザルツマンの「ヒバリ亭」襲撃から1ヶ月後のことだった。
「あ~、つっかれたぁぁ~!!」
「そうだね、納品に間に合わないんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたよ。」
グーッと背伸びをするヴァルトに同意する様にアルフェンはうんうんと頷いた。
この日、錬金術ギルドの薬品棚から職人ギルドや土木ギルドに卸す予定だった薬品が何本かなくなっていることが判明した。アルフェンやヴァルト、他の錬金術師やギルド長ら職員も必死に探しているが見あたらなかった。
そのため、ギルド長が新しく薬品を作り直すこととなり、完成してすぐ副ギルド長の手伝いとしてアルフェンとヴァルトは納品先の職人ギルドと土木ギルドに薬品を納品してきたところだった。
「2人ともありがとな。助かったよお~。」
副ギルド長も無事に薬を納品出来て安堵の表情だ。
「・・・・アルフェン、その後どうだ?アイツ・・・ザルツマンに何かされたか?」
副ギルド長の問いにアルフェン苦笑しながらも答えた。
「あ~・・・大丈夫です。 なるべく逢わないようにしています。」
シシイの助言に従い、ここ数日ザルツマンに逢わないように避けてきたし、最近は所用で忙しかったのもあったので姿を見る事は無かった。
「大丈夫だよ。もし、アイツが兄さんにちょっかいを掛けてきたら俺が追い返すから。」
フンッと腰に手を当て宣言するヴァルトの姿にアルフェンと副ギルド長は苦笑した。
「ふざけるな!!」
ギルドに戻ってきたアルフェン達が見たものは、自分より大柄なギルド長に掴みかかるザルツマンだった。
何があったのかわからず困惑していると、「兄さん」と後ろから聞き慣れた声がして振り向くと弟のリュークがすぐそばにかけよってきた。
「リューク!!来てたのかい。」
アルフェンの問いかけにリュークはコクンと頷いた。
「なあリューク、ザルツマンのヤツ何であんな怒っているか知っているか?」
ヴァルトは膝を曲げ、弟と同じ目線になるとザルツマンを指差してたずねた。
「あのおにいさん、ギルドのおくすりのあるそうこからドロボウしてたんだよ。」
「「「えっ!!!」」」
数分前、ギルド職員が薬の在庫整理のため地下にある薬品庫に入ったところ、薬品を盗もうとしていたザルツマンを発見し、ギルド長に連絡し、その場で取り押さえた。
「ギルド長さん、あの人を自警団につき出すって言ったら、おこりだしたの。」
「要するにあの変態野郎が逆ギレしてきたわけだな。」
瞬間、ギャアアッと悲鳴があがり声のする方を見ると、シシイに腕を捻られているザルツマンの姿があった。
「痛い痛い痛い痛いぃぃ~!!何をするんだこの……………………デカい女装男は!!」
ハアアッ?とシシイことシルベスター・バーモン(生物学上♂ 身長190cm)は少しドスのある声をあげた。
「悪かったわねデカくて!!て言うか、こんな美女つかまえて女装男って何よ!?」
「つかまえてない!!お前が俺をつかまえているんだろが!!」
「……………確かに今つかまっているのはあの人だね。」
「……兄さん、笑えないから。」
ーー確かに……。
アルフェンとヴァルトの兄弟のやりとりを聞いていた他の錬金術師達は心の中で突っ込んだ。
「っ……………!?」
ギッとアルフェンを睨んでいたザルツマンはある人物を見つけ目を見開き驚愕した。
「この匂い、そうかお前か……ょくもよくもよくもぉぉおっ~~!!」
突然叫びはじめたザルツマンが勢いよくシシイの拘束を振りほどくと血走った目でアルフェン達のもとへと走りだした。
「死ねぇぇぇえ~~~!!」
懐からガラス瓶を取り出し蓋を開けると、その人物ーーーリュークに向かってガラス瓶に入った薬をふりかけようとした。
「リューク!!」
アルフェンがザルツマンとリュークの間にすべり込み、リュークに覆いかぶさる。
薬がアルフェンの背中にこぼれ落ちた瞬間、ブワッと青い炎が上がった。
「ぅぁあっ………!!」
ーー熱い。痛い……
背中に燃えあがった炎が皮膚を侵食していき、肌の焦げる匂いと激しい痛みがアルフェンの心身を支配していく。
ーー痛い。誰かこの痛みを……
「兄さん!!」
バシャッと冷たい水がかけられアルフェンの背中に燃えあがっていた炎は一瞬で消えたが、それと同時にアルフェンの身体はバランスを崩しグラリと床に倒れ込む。
薄れゆく意識の中でアルフェンが最後に見たのは、涙目で自分の名を呼ぶヴァルトと泣きじゃくるリュークの弟達。混乱するギルド長やギルド職員達。そして何故か泣きそうな顔でシシイや他の錬金術師達に取り押さえられた状態で呆然としているザルツマンの姿だった。
事件が起こったのはザルツマンの「ヒバリ亭」襲撃から1ヶ月後のことだった。
「あ~、つっかれたぁぁ~!!」
「そうだね、納品に間に合わないんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたよ。」
グーッと背伸びをするヴァルトに同意する様にアルフェンはうんうんと頷いた。
この日、錬金術ギルドの薬品棚から職人ギルドや土木ギルドに卸す予定だった薬品が何本かなくなっていることが判明した。アルフェンやヴァルト、他の錬金術師やギルド長ら職員も必死に探しているが見あたらなかった。
そのため、ギルド長が新しく薬品を作り直すこととなり、完成してすぐ副ギルド長の手伝いとしてアルフェンとヴァルトは納品先の職人ギルドと土木ギルドに薬品を納品してきたところだった。
「2人ともありがとな。助かったよお~。」
副ギルド長も無事に薬を納品出来て安堵の表情だ。
「・・・・アルフェン、その後どうだ?アイツ・・・ザルツマンに何かされたか?」
副ギルド長の問いにアルフェン苦笑しながらも答えた。
「あ~・・・大丈夫です。 なるべく逢わないようにしています。」
シシイの助言に従い、ここ数日ザルツマンに逢わないように避けてきたし、最近は所用で忙しかったのもあったので姿を見る事は無かった。
「大丈夫だよ。もし、アイツが兄さんにちょっかいを掛けてきたら俺が追い返すから。」
フンッと腰に手を当て宣言するヴァルトの姿にアルフェンと副ギルド長は苦笑した。
「ふざけるな!!」
ギルドに戻ってきたアルフェン達が見たものは、自分より大柄なギルド長に掴みかかるザルツマンだった。
何があったのかわからず困惑していると、「兄さん」と後ろから聞き慣れた声がして振り向くと弟のリュークがすぐそばにかけよってきた。
「リューク!!来てたのかい。」
アルフェンの問いかけにリュークはコクンと頷いた。
「なあリューク、ザルツマンのヤツ何であんな怒っているか知っているか?」
ヴァルトは膝を曲げ、弟と同じ目線になるとザルツマンを指差してたずねた。
「あのおにいさん、ギルドのおくすりのあるそうこからドロボウしてたんだよ。」
「「「えっ!!!」」」
数分前、ギルド職員が薬の在庫整理のため地下にある薬品庫に入ったところ、薬品を盗もうとしていたザルツマンを発見し、ギルド長に連絡し、その場で取り押さえた。
「ギルド長さん、あの人を自警団につき出すって言ったら、おこりだしたの。」
「要するにあの変態野郎が逆ギレしてきたわけだな。」
瞬間、ギャアアッと悲鳴があがり声のする方を見ると、シシイに腕を捻られているザルツマンの姿があった。
「痛い痛い痛い痛いぃぃ~!!何をするんだこの……………………デカい女装男は!!」
ハアアッ?とシシイことシルベスター・バーモン(生物学上♂ 身長190cm)は少しドスのある声をあげた。
「悪かったわねデカくて!!て言うか、こんな美女つかまえて女装男って何よ!?」
「つかまえてない!!お前が俺をつかまえているんだろが!!」
「……………確かに今つかまっているのはあの人だね。」
「……兄さん、笑えないから。」
ーー確かに……。
アルフェンとヴァルトの兄弟のやりとりを聞いていた他の錬金術師達は心の中で突っ込んだ。
「っ……………!?」
ギッとアルフェンを睨んでいたザルツマンはある人物を見つけ目を見開き驚愕した。
「この匂い、そうかお前か……ょくもよくもよくもぉぉおっ~~!!」
突然叫びはじめたザルツマンが勢いよくシシイの拘束を振りほどくと血走った目でアルフェン達のもとへと走りだした。
「死ねぇぇぇえ~~~!!」
懐からガラス瓶を取り出し蓋を開けると、その人物ーーーリュークに向かってガラス瓶に入った薬をふりかけようとした。
「リューク!!」
アルフェンがザルツマンとリュークの間にすべり込み、リュークに覆いかぶさる。
薬がアルフェンの背中にこぼれ落ちた瞬間、ブワッと青い炎が上がった。
「ぅぁあっ………!!」
ーー熱い。痛い……
背中に燃えあがった炎が皮膚を侵食していき、肌の焦げる匂いと激しい痛みがアルフェンの心身を支配していく。
ーー痛い。誰かこの痛みを……
「兄さん!!」
バシャッと冷たい水がかけられアルフェンの背中に燃えあがっていた炎は一瞬で消えたが、それと同時にアルフェンの身体はバランスを崩しグラリと床に倒れ込む。
薄れゆく意識の中でアルフェンが最後に見たのは、涙目で自分の名を呼ぶヴァルトと泣きじゃくるリュークの弟達。混乱するギルド長やギルド職員達。そして何故か泣きそうな顔でシシイや他の錬金術師達に取り押さえられた状態で呆然としているザルツマンの姿だった。
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