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8年前 (8)
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「兄さん、何やってんの。」
「あっ……」
ヴァルトが病室のドアを開けると、ちょうどアルフェンがベッドから上半身を起こして本を読んでいるところだった。
「しばらく安静にって言われてただろう。」
少し呆れた顔をしながら、ヴァルトは両手を組みながらベッド横の椅子に腰掛けた。
ザルツマンによって薬品をかけられた背中の火傷は少しずつ回復しているが、しばらくは安静にするようにと医師から告げられていた。
「まぁ~……うん。ちょっと気になることがあって調べものしてたんだよ。」
「調べものって?」
「コレだよ。」
そう言うと、自分がいま読んでいた本の1ぺージをヴァルトに見せた。
「……死者再生における法則……屍人形の錬成法か。」
屍人形 その名のとおり死人の亡骸を錬成させ蘇生された存在である。
「でもこの研究って『死者への冒涜』だって言われて教会とか周りに色々批判されて中止になったんだよね。何で急にこれを?」
「ホラッ、前にリュークが話していただろう。あの人から変な匂いがするって。」
「あ~、あの時か!!」
「屍人形の特徴として、動物並みの鋭い嗅覚を持っているのと同時にその身体から時折、腐ったような匂いを放つことがあるんだ。リュークやシシイ、それに他の錬金術師達が腐った匂いがするって言っていたのは多分、それだと思うよ。それと生前と比べて攻撃的な性格になったりする」
「そういえば副ギルド長、アイツが子供の頃に事故にあってから性格が変わったって言っていたな……兄さんはアイツが屍人形じゃないかって思っているの?」
「……屍人形の特徴とあの人がまったく一致しているし、それに屍人形は特定の人物に対して異常なまでに執着し、酷いときは傷つけることも厭わないこともある。あの人の僕に対する悪意も、もしかしたらそれなのかも知れない。」
「……この前、副ギルド長から聞いたんだけど、アイツ両親と出かけた先で馬車の事故にあったんだって。」
その事故はあまりにも惨く、先代領主は即死、夫人と御者は顔を潰され死んでいた。ザルツマンも重傷を負ったが助かったらしい。
「もし兄さんの仮説が本当ならあの事故でアイツはもう……」
「おそらく…………あの事故ですでに死んでいた。けれど、屍人形となって蘇った。」
「蘇ったって、誰が?何のために?」
分からない。そう言うようにアルフェンは横に振った。
「ただ……屍人形には重大な欠陥があるんだ。」
「欠陥?」
「ココだよ。」
そう言ってアルフェンは自分の左胸を指差した。
「心臓……?」
ヴァルトのつぶやきにコクリと頷くと心臓が動いていないんだよ。と告げた
「本来、人間の心臓は生まれてから死ぬまで片時も休まずに動き続けている。そんな当たり前のようで、膨大なエネルギーと耐久力を持った器官を簡単に作るなんてできやしない。」
「でも……俺達は……」
「僕達は人間の細胞の中にある遺伝子という情報を基に人間の胎児と同じ行程を得て産み出されている。」
元々、アルフェン達ゴーレムは王族や高位貴族達が怪我や重い病気になったとき臓器や身体のパーツを提供するために産み出されているが、屍人形は違う。死骸を寄せ集めただけに過ぎないため心臓が不完全なのである。
「そのため心臓の代用としてエリクシル剤や大量の血液を摂取しないと生きられないんだけど……」
「摂取しなければどうなるんだ?」
「………体は段々と腐敗していき、やがてもとの骸に戻る。」
「あっ……」
ヴァルトが病室のドアを開けると、ちょうどアルフェンがベッドから上半身を起こして本を読んでいるところだった。
「しばらく安静にって言われてただろう。」
少し呆れた顔をしながら、ヴァルトは両手を組みながらベッド横の椅子に腰掛けた。
ザルツマンによって薬品をかけられた背中の火傷は少しずつ回復しているが、しばらくは安静にするようにと医師から告げられていた。
「まぁ~……うん。ちょっと気になることがあって調べものしてたんだよ。」
「調べものって?」
「コレだよ。」
そう言うと、自分がいま読んでいた本の1ぺージをヴァルトに見せた。
「……死者再生における法則……屍人形の錬成法か。」
屍人形 その名のとおり死人の亡骸を錬成させ蘇生された存在である。
「でもこの研究って『死者への冒涜』だって言われて教会とか周りに色々批判されて中止になったんだよね。何で急にこれを?」
「ホラッ、前にリュークが話していただろう。あの人から変な匂いがするって。」
「あ~、あの時か!!」
「屍人形の特徴として、動物並みの鋭い嗅覚を持っているのと同時にその身体から時折、腐ったような匂いを放つことがあるんだ。リュークやシシイ、それに他の錬金術師達が腐った匂いがするって言っていたのは多分、それだと思うよ。それと生前と比べて攻撃的な性格になったりする」
「そういえば副ギルド長、アイツが子供の頃に事故にあってから性格が変わったって言っていたな……兄さんはアイツが屍人形じゃないかって思っているの?」
「……屍人形の特徴とあの人がまったく一致しているし、それに屍人形は特定の人物に対して異常なまでに執着し、酷いときは傷つけることも厭わないこともある。あの人の僕に対する悪意も、もしかしたらそれなのかも知れない。」
「……この前、副ギルド長から聞いたんだけど、アイツ両親と出かけた先で馬車の事故にあったんだって。」
その事故はあまりにも惨く、先代領主は即死、夫人と御者は顔を潰され死んでいた。ザルツマンも重傷を負ったが助かったらしい。
「もし兄さんの仮説が本当ならあの事故でアイツはもう……」
「おそらく…………あの事故ですでに死んでいた。けれど、屍人形となって蘇った。」
「蘇ったって、誰が?何のために?」
分からない。そう言うようにアルフェンは横に振った。
「ただ……屍人形には重大な欠陥があるんだ。」
「欠陥?」
「ココだよ。」
そう言ってアルフェンは自分の左胸を指差した。
「心臓……?」
ヴァルトのつぶやきにコクリと頷くと心臓が動いていないんだよ。と告げた
「本来、人間の心臓は生まれてから死ぬまで片時も休まずに動き続けている。そんな当たり前のようで、膨大なエネルギーと耐久力を持った器官を簡単に作るなんてできやしない。」
「でも……俺達は……」
「僕達は人間の細胞の中にある遺伝子という情報を基に人間の胎児と同じ行程を得て産み出されている。」
元々、アルフェン達ゴーレムは王族や高位貴族達が怪我や重い病気になったとき臓器や身体のパーツを提供するために産み出されているが、屍人形は違う。死骸を寄せ集めただけに過ぎないため心臓が不完全なのである。
「そのため心臓の代用としてエリクシル剤や大量の血液を摂取しないと生きられないんだけど……」
「摂取しなければどうなるんだ?」
「………体は段々と腐敗していき、やがてもとの骸に戻る。」
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