理由なき悪意

keima

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8年前 (9)

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注意:今回、ちょっとグロテスクな描写があります。 
もし読んで気分が悪くなったらUターンを。 




「うわあぁっ!!」

アルフェンとヴァルトがザルツマンが屍人形ではないかと話し合っていたちょうどその頃、、自警団の詰所の地下にある留置場の中で見張り役をしていた若い団員の悲鳴が響き渡っていた。
その叫び声を聞いた団長と団員数名が駆けつけると、生物か何かが腐ったような匂いが充満した留置場に腰を抜かして動けない団員がいた。

「何だ?どうしたんだ!?」

「あっ……ああ………」 

カタカタと震える若い団員の指さす方向を見ると、
ザルツマンが収容しはいっていたハズの牢のなかにはザルツマンの姿はなく、木乃伊ミイラのように痩せ細り骨と皮だけの小柄な体格の、顔に泥を塗りたくった白髪の男がブツブツと何かをつぶやきながら牢屋の中にいた。

「誰だお前は!?ザルツマンはどこだ?」

団長は白髪の男に向かって叫ぶが男の耳には入ってこない。 

「バッしなければ……アレをバッしなければ。」

「?……何を言っているんだ。」


すると俯いていた男が顔を上げ、目をギョロリと動かすとスッと立ち上がりユラユラと体を揺らしながら鉄格子に近づいた。男が歩くたびに顔に塗りたくった泥がボトリ、ボトリと落ちたその泥から思わず顔を顰めてしまうほどの生臭い匂いに誰もが気をとられた時だった。 

ガシャンという音を立て男は鉄格子に近づき、牢の外にいる団長達を睨み咆哮した。 

「金髪ぅぅ~!!金髪は罪人!!金髪はダンザイしなければならない!!」

「ひぃぃっ!!」

ガンガンと鉄格子を叩きつける男の剣幕に金髪の若い団員は恐怖から腰が引けている。 
ガンッ、ガンッと鉄格子を叩きつけていると、やがて鉄格子が勢いよく壊され、男はボタボタと地面に落ちる泥と腥い匂いを放ちながら牢屋の外に出てきた。


「なっ………!?」


「金髪はぁぁ~~バッしなければぁ~~!!」

「ひぃぃっ!!」

「やめろ!!」

男が若い団員に襲いかかろうとした瞬間、団員が手に持っていたランプがフウッと宙を舞い、男の頭の上に落ち、ボウッと白髪から炎があがった。 

「あ“あ“あ”あ”ぁ”ぁぁっっ!!!」

火は勢いをましていき、やがて男の全身に燃え広がった。 




ー何故だ!?どうして俺がこんな目にあわなければならないんだ。俺は悪くない。
だってが言っていたんだ。俺は英雄だって。英雄の生まれ変わりなんだって。だからこの町を出て「悪」を断罪してきたのに何で誰もわかってくれないんだ!! 
が……アルフェンアレがいなければこんなことにならなかったんだ。 
あの日、10年ぶりに町に戻ったとき、幼なじみだった男と話していた蜂蜜色の髪のアレの姿を見つけたとき本能的に感じたんだ。アレは「悪」だと、長年俺が探し求めてきた「悪」の生まれ変わりだと、その証拠にアレの身に纏う香りにベッタリと別の匂いが混じっていたし、アレの隣に黒髪のヴァルトチビガキがはりついている。
気にくわないのと同時にあのお高くとまったあの表情かおを怯えと恐怖で歪ませたらどうなるのだろうと想像してゾクゾクした。 
だから事あるごとにアレに近づいて罵詈雑言を吐いたり、時には気にくわないあの匂いを消すためにワザとぶつかったりした。それなのにアレは怯えるどころか、どこか冷めた目をしていて、いつもそばにいる黒髪のガキも俺を睨みつけて「兄さんに近づくな」と生意気に率先してくる。アレから仕事を握りつぶしても、下宿先に押し入ったりと色々してきたのにアレは思い通りに動いてくれずただただ苛々した。

アレを断罪し、あの顔を歪ませる。 そしてあのベッタリとはりついた匂いを一掃して俺の所有物思い通りにするはずだったのに……

「あ“つ“い“ぃ“~、だれ“か“ぁ“~」

ザルツマンはその場にいる自警団員らに助けを求めるが、全身を包む炎によって泥のような肉片がボロボロと流れ落ち、骨だけの姿になって咆哮するザルツマンの姿に恐れて、その場にいた誰もが動くことができなかった。

「だれか、たすけ……」

やがて火が完全に燃え尽きると、小さな子供の頭部の骨がカラカラと回っていたが、やがてカランと音を立て静かに止まった。





「ほぉ、ザルツマンは土に還ってしまったか。」

町から離れた王都のとある屋敷の一室でその人物はザルツマンの報告を受けていた。 


「せっかく「あの日の約束」自分の協力者に頼みこんで忠実な手駒となるよう蘇らせたのだが……所詮は只の骸………このに相応しくなったということか。」




その後、ザルツマンの遺骨は、異母兄である領主が引き取りを拒否したため数週間以上放置され、町の外れにある共同墓地に投げ捨てられるように埋葬されたのは、アルフェン達兄弟が町を旅立ってから1ヶ月後のことだった。

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