理由なき悪意

keima

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本日、最終回です。
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「………ほんっと、今思い出しても腹立つなぁ~」 

「眉間に皺よってるよ、ヴァルト」

苛々しながら頭をガリガリとかくヴァルトにアルフェンは苦笑しつつ宥める。

「………結局、アイツは何で兄さんを敵視してたのかわからないまま、逝ったんだよな。」

8年前、火傷が完治し退院したアルフェンは、以前から薦められていた錬金術師の中位クラスである天体師の資格を取るためギルド長の師匠のもとで修業するため、弟達とともに旅立った。 
旅立ってから3週間後、彼らのもとに副ギルド長からの手紙が届き、そこには牢屋に収容されていたザルツマンが死んだと書かれていた。 
手紙の内容から、副ギルド長はザルツマンの死因が何なのかを知らない様子だったが、アルフェンはザルツマンの身体の腐敗が進行した末、骸に戻ったのだと悟った。 



「そういえばシシイから聞いたんだけど……あの人、僕の髪の色が気に入らなかったみたいだよ。」

「はあっ?兄さんの髪の色?」

昨日、数年ぶりにシシイと再会し色々と話している際には自分達があの街を旅立った後の出来事を教えてくれた。その際にザルツマンのことを思い出したシシイはそういえば…と

ー当時、アイツを担当していた自警団員の人から聞いたんだけど、アイツ金髪は罰しなければならない~ってものすっごいイッタイ発言していたらしいわよ。

と、初対面で気に入ったレイリーンの髪を弄びながら教えてくれた。 

「……アイツ、金髪に何の恨みがあるんだよ。」

呆れた表情を浮かべるヴァルトにアルフェンは苦笑いだ。

「さぁ………でも、そのあと色々あったらしく……」

ザルツマンが『あの日の約束』の信者だと判明してすぐ、異母兄である領主はすぐに教会の司祭を通して国家中央聖教会機関バスティアンに連絡し、アルフェン達が旅立ったのと入れ違いに聖騎士が街に派遣された。捜査の結果『あの日の約束』が錬金術師ギルドから盗んだ工業用薬品を使って街を攻撃し、その隙に街を乗っ取ろうと画策していたことが判明し、聖騎士達の活躍によって『あの日の約束』の信者は一斉に検挙された。
また自分の弟がその計画に加担していたことを知った領主は異母弟ザルツマンの亡骸を引き取ることを拒否した。

「『あの日の約束』の連中も何考えているのかわかんねえなぁ。」

「……これはシシイ情報なんだけど…この間の王太子の失脚に『あの日の約束』が関わっているみたいなんだ。」

「はあっ!?でもアレは第2王子派の連中がやったんじゃないかって兄さん前に言ってたじゃないか。」

「最初はそう思ったけど、どうやら第2王子派のなかに『あの日の約束』の信者がいてその人物が実行犯と思われているんだけど、その人物が……ロドルフ・ダンヴァース侯爵子息とエミリー・ベルトガー侯爵令嬢なんだ。」

「!?王妃の姪とその婚約者じゃないかよ。」

「……この2人が主導して王太子を失脚させたって噂になっているらしいよ。」

「……もしその噂が本当だとしても、『あの日の約束』は一体、何が目的なんだ?」

「それは僕もわからない。けど……何となく嫌な予感がするんだよね。」


アルフェンはまだ知らない。ギルベルトと『あの日の約束』の信者達が彼ら兄弟を追いつめようと画策していることを
その数十年後、彼らの弟子が、孫弟子達が『あの日の約束』と深く関わることになるのはまた別の話である。 

おわり
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最後まで読んでいただきありがとうございます。
ちなみに作中の最後に出てきた彼らの孫弟子は「完璧な騎士を消す方法」「完璧な騎士の最期」に登場するウィルムート・バートンとエステル・フィルです。

それでは皆様良いお年を
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