22 / 131
新妻になりました
7
しおりを挟む
ネンゲルの子を引き取り、自分の子として育てる。
そう決めた時には何の感懐もなかったのに、リラを初めて抱かされた時、ヴァイスの中に生まれて初めての渇望が生まれた。
「兄上、この子の母になってくれる女と、俺は結婚しようと思う」
ーー妻が欲しい。
それは、妻となる女性を欲する衝動だった。
この子を抱き、微笑んでくれる女性が傍に欲しい。
とても細やかで、はっきりとした衝動が自身を突き動かした。
「無茶を言わないでくれ。それができないのは、ヴァイスが一番よく知っているだろう?」
負い目があるためか、強く出られないネンゲルは困ったように眉尻を下げる。
「問題ない。俺は相応しい女性を探し当てる」
「エルデガリアに、お前と並ぶ魔術師がいるはずがない」
ネンゲルの静止など、耳に入らない。
「エルデガリアにいないならその外から、世界中を探しても呼び寄せる」
一度欲しいと意識したら、できると確信した。
「ええ!? いくらお前でも……。いや、そもそも、ヴァイスに女性が口説けるのか?」
ともすれば失礼とも取れるツッコミを、ものともしない。
こうと決めたら止まらないヴァイスは、うっかりリラを抱いたまま部屋を出ようとした。
慌てたネンゲルがやむなく協力を申し出て、召喚に成功した女性がシオンだ。
シオンは、ヴァイスの理想そのもの、いや、それ以上の、最上の美を兼ね備えていた。
エルデガリアで最も高貴とされる黒曜石の輝きを秘めた髪と瞳。
血潮の通う健康そうな肌は、艶やかで張りがあり、触れてみたい欲求に駆られる。
穏やかながら意志の強そうな眼差しに、調和する均整の取れた肢体が美しい。
その容姿は完璧で、何よりも身体から立ち昇るほどの魔力は傍にいるだけで心地良い。
一目見ただけで、ヴァイスはシオンの虜になった。
しかし、その想いがシオンには通じなかったようだ。
妻にと願っても、中々首を縦に振ってくれない。
ネンゲルの助力により、どうにか結婚契約には漕ぎ着けたが、どうしたらシオンも同じようにヴァイスを愛してくれるだろうか。
ヴァイスは頭を悩ませた。
だが、解決先を練る間もなく、魔物の討伐要請を請けた。
ネンゲルが、女性は貴石が好きだと言っていた。
先ずはいくつか貴石を見繕って、プレゼントしよう。
シオンと共に過ごす時間が増え、ヴァイスの気持ちが伝わればきっと解決できる。そう考えていた。
その、矢先だった。
「……う……」
「坊っちゃま! 申し訳ございません、今ベッドにお運びしますのでご辛抱ください」
「トラリオか、いや、もう問題ない」
うっすらと目を開けると、絨毯敷きの床が目に入った。
トラリオの声に、ヴァイスはその場が安全であると確信した。
ヴァイスを未だに”ぼっちゃま”と呼ぶのは家令のトラリオだけだ。
そう決めた時には何の感懐もなかったのに、リラを初めて抱かされた時、ヴァイスの中に生まれて初めての渇望が生まれた。
「兄上、この子の母になってくれる女と、俺は結婚しようと思う」
ーー妻が欲しい。
それは、妻となる女性を欲する衝動だった。
この子を抱き、微笑んでくれる女性が傍に欲しい。
とても細やかで、はっきりとした衝動が自身を突き動かした。
「無茶を言わないでくれ。それができないのは、ヴァイスが一番よく知っているだろう?」
負い目があるためか、強く出られないネンゲルは困ったように眉尻を下げる。
「問題ない。俺は相応しい女性を探し当てる」
「エルデガリアに、お前と並ぶ魔術師がいるはずがない」
ネンゲルの静止など、耳に入らない。
「エルデガリアにいないならその外から、世界中を探しても呼び寄せる」
一度欲しいと意識したら、できると確信した。
「ええ!? いくらお前でも……。いや、そもそも、ヴァイスに女性が口説けるのか?」
ともすれば失礼とも取れるツッコミを、ものともしない。
こうと決めたら止まらないヴァイスは、うっかりリラを抱いたまま部屋を出ようとした。
慌てたネンゲルがやむなく協力を申し出て、召喚に成功した女性がシオンだ。
シオンは、ヴァイスの理想そのもの、いや、それ以上の、最上の美を兼ね備えていた。
エルデガリアで最も高貴とされる黒曜石の輝きを秘めた髪と瞳。
血潮の通う健康そうな肌は、艶やかで張りがあり、触れてみたい欲求に駆られる。
穏やかながら意志の強そうな眼差しに、調和する均整の取れた肢体が美しい。
その容姿は完璧で、何よりも身体から立ち昇るほどの魔力は傍にいるだけで心地良い。
一目見ただけで、ヴァイスはシオンの虜になった。
しかし、その想いがシオンには通じなかったようだ。
妻にと願っても、中々首を縦に振ってくれない。
ネンゲルの助力により、どうにか結婚契約には漕ぎ着けたが、どうしたらシオンも同じようにヴァイスを愛してくれるだろうか。
ヴァイスは頭を悩ませた。
だが、解決先を練る間もなく、魔物の討伐要請を請けた。
ネンゲルが、女性は貴石が好きだと言っていた。
先ずはいくつか貴石を見繕って、プレゼントしよう。
シオンと共に過ごす時間が増え、ヴァイスの気持ちが伝わればきっと解決できる。そう考えていた。
その、矢先だった。
「……う……」
「坊っちゃま! 申し訳ございません、今ベッドにお運びしますのでご辛抱ください」
「トラリオか、いや、もう問題ない」
うっすらと目を開けると、絨毯敷きの床が目に入った。
トラリオの声に、ヴァイスはその場が安全であると確信した。
ヴァイスを未だに”ぼっちゃま”と呼ぶのは家令のトラリオだけだ。
168
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる