30 / 131
寝室
5
しおりを挟む
2人の馴れ初めも、極力改竄せず、ヴァイスが望んで召喚したことで口裏を合わせてある。
うん、ここは正直に話して大丈夫だ。
言っても通じる気がしないけど。
「日本という、遠い国の出身です。ご存知ないかとは思いますが」
「ではやはり。ヴァイス様が異国からお召しになったとのお話は、真実でしたのね」
シャルロットの瞳が、揺らめきと共にきらりと輝いた。
「ご郷里ではどのような暮らしをされていたのでしょうか? 夫人はどういったことがお得意でいらっしゃいますの?」
「どのような? 日本では独り暮らしでしたけど。仕事は印刷関連の会社で事務をやっていました」
「お仕事って? 夫人は職業をお持ちでしたの? 魔術などの研究職ではなく、印刷の?」
シャルロットは聞き慣れないのか、目をぱちくりとさせた。
この場合、シオンの言葉はニュアンスまできちんと伝わっているのだろうか。
「ああ、魔術の関連書類などを印刷してらっしゃる部署ですのね。ごめんなさい、驚いてしまいまして」
「いや、魔術はあんまり関係ないんです。あんまりというか、全然。主に顧客に依頼された印刷物をですね……」
どうしてそのような質問をされるのかわからないけれど、シオンは自分自身に興味を持たれるのが嬉しくて、どうにか説明ができないか試みた。
しかし、説明すればする程シャルロットは困惑していく。
「ごめんなさい、私、少し理解が及ばなくて……。では、どうしてヴァイス様は夫人をお選びになったの?」
「え……さ、さあ……? どうしてでしょう」
自分自身のことならまだしも、ヴァイスの気持ちを聞かれたってわからない。
うっかり素で回答して、首を傾げる。
「お分かりにならないのですか? では、プロポーズのお言葉は??」
「それなら……。結婚してくれって。そういえば、私の魔力が好きとかなんとか、言っていた気がします」
シオンは言葉を濁しつつ、笑ってやり過ごそうとする。
シャルロットは露骨に怪訝な表情を浮かべた。
(何だろう、変な子だな)
シャルロットの矢継ぎ早な質問にシオンはたじろぎながら答えたが、ちょっとずつ違和感が湧いてきた。
今日の訪問の目的は、本当に結婚の祝福だろうか?
もし違うなら、真の目的を伺ってお帰り願いたいところだが、要件を尋ねるのは「早くお祝いして」とこちらから催促しているようで言い出し辛い。
「わかりましたわ。つまり、お子が欲しくて夫人を選ばれたのですね。ヴァイス様はお優しくていらっしゃるから」
柔らかな手をポンと打つ愛らしい仕草。
その中に潜んだ棘のある表現に弾かれて、シオンはシャルロットを凝視した。
うん、ここは正直に話して大丈夫だ。
言っても通じる気がしないけど。
「日本という、遠い国の出身です。ご存知ないかとは思いますが」
「ではやはり。ヴァイス様が異国からお召しになったとのお話は、真実でしたのね」
シャルロットの瞳が、揺らめきと共にきらりと輝いた。
「ご郷里ではどのような暮らしをされていたのでしょうか? 夫人はどういったことがお得意でいらっしゃいますの?」
「どのような? 日本では独り暮らしでしたけど。仕事は印刷関連の会社で事務をやっていました」
「お仕事って? 夫人は職業をお持ちでしたの? 魔術などの研究職ではなく、印刷の?」
シャルロットは聞き慣れないのか、目をぱちくりとさせた。
この場合、シオンの言葉はニュアンスまできちんと伝わっているのだろうか。
「ああ、魔術の関連書類などを印刷してらっしゃる部署ですのね。ごめんなさい、驚いてしまいまして」
「いや、魔術はあんまり関係ないんです。あんまりというか、全然。主に顧客に依頼された印刷物をですね……」
どうしてそのような質問をされるのかわからないけれど、シオンは自分自身に興味を持たれるのが嬉しくて、どうにか説明ができないか試みた。
しかし、説明すればする程シャルロットは困惑していく。
「ごめんなさい、私、少し理解が及ばなくて……。では、どうしてヴァイス様は夫人をお選びになったの?」
「え……さ、さあ……? どうしてでしょう」
自分自身のことならまだしも、ヴァイスの気持ちを聞かれたってわからない。
うっかり素で回答して、首を傾げる。
「お分かりにならないのですか? では、プロポーズのお言葉は??」
「それなら……。結婚してくれって。そういえば、私の魔力が好きとかなんとか、言っていた気がします」
シオンは言葉を濁しつつ、笑ってやり過ごそうとする。
シャルロットは露骨に怪訝な表情を浮かべた。
(何だろう、変な子だな)
シャルロットの矢継ぎ早な質問にシオンはたじろぎながら答えたが、ちょっとずつ違和感が湧いてきた。
今日の訪問の目的は、本当に結婚の祝福だろうか?
もし違うなら、真の目的を伺ってお帰り願いたいところだが、要件を尋ねるのは「早くお祝いして」とこちらから催促しているようで言い出し辛い。
「わかりましたわ。つまり、お子が欲しくて夫人を選ばれたのですね。ヴァイス様はお優しくていらっしゃるから」
柔らかな手をポンと打つ愛らしい仕草。
その中に潜んだ棘のある表現に弾かれて、シオンはシャルロットを凝視した。
167
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる