73 / 131
異変
7
しおりを挟む
集中すべきはそこでないと分かっていても、シオンの心は大きく乱された。
「では何か、わざわざ異世界から無関係の女を呼び寄せて子守りをさせていると、お主はそう言いたいのか?」
マグヌスは一笑に付したが、真実はまさにその通りだ。
理解できない。馬鹿馬鹿しい。
「理解できんな。何の意味がある? 子守りだけなら誰でもよかろう。わざわざ異界からその女を呼び寄せた理由に説明がつかん」
マグヌスが、シオンの抱くあらゆる疑問に解を与えてくれた。
どうして、はるばる時空まで超えて、ヴァイスはシオンを呼んだのか。
”俺が、シオンに会いたかったから”
”俺と結婚してくれ。シオンが必要なんだ”
初対面で掛けられた台詞がぶわっと、膨れるように思い出される。
初めから、ヴァイスの言動は一貫していた。
恋人が架空の存在だったなら、辻褄が合う。
敵の示す意見を全部まるっと、信じて、受け入れるのは得策でない。
だけど……!
こんな非常時なのに、期待に胸が騒めいた。
(ひょっとしたら、あれらは全部、本心だったかもしれないの……!?)
「理由までは、私には判りかねます。ですが」
カルロは慎重に言葉を選んだ。だが、続けようと口を開いたところで、異変を感じ取る。
「ーー教皇様……!」
同時に、シオンもまた、迫り上がるような悪寒に身を震わせた。
ズズズズッ
引き摺られるような細かい振動の後、ズンッ! と落下を予感させる地鳴りと共に建物全体が揺れた。
「きゃっ」
「うっ!」
カルロはマグヌスに駆け寄ったが、支えきれずに2人とも床に倒れた。
それでもカルロの機転のお陰で、机やキャビネットなど複数の家具を避けられた。
「教皇様! ご無事ですか!?」
「ああ……だが何事だ?」
シオンは振動で強か肩を打ったが、軽傷だ。
地震のような揺れは一瞬で収まり、次の瞬間には何事もなかったかのようにシンとした静寂が訪れた。
鳥肌も治らないくらいの僅かな間で、感じた違和感も霧散していた。
今の揺れは何だったのだろう?
元の世界で軽度の地震は日常茶飯事だったが、こちらの世界での揺れは初体験だ。
しかも、滅法大きな揺れだった。
日本の地震なら、原因は地殻の変動だ。
自然の摂理なのだから、仕方がない。
しかし、こちらではどうだ?
国境付近には魔物が蔓延り、討伐した魔物から貴石を回収するような世界だ。
シオンの思考は目まぐるしく流転し、行き着いた直感に叫んでいた。
「リラはどこなの!? これを外しなさい!」
2人の様子から察するに、どこで何が起きたのか、把握していない。
ネンゲルの子だから粗末に扱っていないと信じたいが、非常事態に紛れてリラに厄災が降りかからないとは限らない。
何かあったらと思うと、居ても立ってもいられない。
あの子は身を守るどころか、まだ、自分の意思で動くこともできないのだから。
「では何か、わざわざ異世界から無関係の女を呼び寄せて子守りをさせていると、お主はそう言いたいのか?」
マグヌスは一笑に付したが、真実はまさにその通りだ。
理解できない。馬鹿馬鹿しい。
「理解できんな。何の意味がある? 子守りだけなら誰でもよかろう。わざわざ異界からその女を呼び寄せた理由に説明がつかん」
マグヌスが、シオンの抱くあらゆる疑問に解を与えてくれた。
どうして、はるばる時空まで超えて、ヴァイスはシオンを呼んだのか。
”俺が、シオンに会いたかったから”
”俺と結婚してくれ。シオンが必要なんだ”
初対面で掛けられた台詞がぶわっと、膨れるように思い出される。
初めから、ヴァイスの言動は一貫していた。
恋人が架空の存在だったなら、辻褄が合う。
敵の示す意見を全部まるっと、信じて、受け入れるのは得策でない。
だけど……!
こんな非常時なのに、期待に胸が騒めいた。
(ひょっとしたら、あれらは全部、本心だったかもしれないの……!?)
「理由までは、私には判りかねます。ですが」
カルロは慎重に言葉を選んだ。だが、続けようと口を開いたところで、異変を感じ取る。
「ーー教皇様……!」
同時に、シオンもまた、迫り上がるような悪寒に身を震わせた。
ズズズズッ
引き摺られるような細かい振動の後、ズンッ! と落下を予感させる地鳴りと共に建物全体が揺れた。
「きゃっ」
「うっ!」
カルロはマグヌスに駆け寄ったが、支えきれずに2人とも床に倒れた。
それでもカルロの機転のお陰で、机やキャビネットなど複数の家具を避けられた。
「教皇様! ご無事ですか!?」
「ああ……だが何事だ?」
シオンは振動で強か肩を打ったが、軽傷だ。
地震のような揺れは一瞬で収まり、次の瞬間には何事もなかったかのようにシンとした静寂が訪れた。
鳥肌も治らないくらいの僅かな間で、感じた違和感も霧散していた。
今の揺れは何だったのだろう?
元の世界で軽度の地震は日常茶飯事だったが、こちらの世界での揺れは初体験だ。
しかも、滅法大きな揺れだった。
日本の地震なら、原因は地殻の変動だ。
自然の摂理なのだから、仕方がない。
しかし、こちらではどうだ?
国境付近には魔物が蔓延り、討伐した魔物から貴石を回収するような世界だ。
シオンの思考は目まぐるしく流転し、行き着いた直感に叫んでいた。
「リラはどこなの!? これを外しなさい!」
2人の様子から察するに、どこで何が起きたのか、把握していない。
ネンゲルの子だから粗末に扱っていないと信じたいが、非常事態に紛れてリラに厄災が降りかからないとは限らない。
何かあったらと思うと、居ても立ってもいられない。
あの子は身を守るどころか、まだ、自分の意思で動くこともできないのだから。
147
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる