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異変
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「大公令嬢は、連れ去られました! 教皇様、どうか教会直属の魔術師団の出動指示をお出しください」
平伏したままセシルは、シオンを通り越してマグヌスに訴えた。
「リラ様が連れ去られただと!? いったい誰に?」
声はカルロのものだった。
マグヌスはシオンに潰されかけた損傷でまともに動けない。
カルロの手を借りながら、ようやっと立ち上がる。
リラについての情報はないが、このやりとりでセシルとマグヌスたちとの関係をすぐに理解した。
「貴女たち、まさかグルだったの!!?」
「申し訳ございません! 奥様、どうかお許しを。このような事態に陥ると想像もできず……ですが恐れながら、先ずはリラ様の救出をどうか優先させてください」
信用を置いていた人間が、誘拐犯の仲間だった。
いつからだろう?
セシルは高位貴族の出身で、元から城勤めをしていた。
マグヌスはおろか、カルロとも面識があったかもしれない。
力が抜けて足元が揺らぐような衝撃に、眩暈がした。が、唇を噛んで堪える。
だからって、打ちひしがれていられない。
シオンはセシルを避けて部屋を飛び出した。
「奥様! 危険です!!」
もう、誰も信じまい。
地下にいるかも定かでないが、この目で見るまでは何も判断できない。
「リラ!」
シオンは地下を目指して走った。
「お待ちください! 奥様、どうか」
セシルが追い縋るのを気配で感じながら、階段を駆け下りる。
聖具室を出て、長い回廊を駆け抜けると大きな扉があった。
この先に何があるのか、わからない。だが今は、躊躇していられない。
勢いに任せて押し開くとそこは、真っ白な壁面に囲まれた大きな広間だった。
地下とは思えぬほどの圧倒的空間でーー聖殿の地下部分をそっくりくり抜いたくらいの広さがある。
広間の隅には申し分程度の簡易なベッドと、祭壇が据えられていた。
しかし、人の居住を思わせる温かみはない。
その上に今は、床に敷き詰められた大理石と思しき床石の中央が、黒々とした渦を巻いている。
まるで巨大な円形の穴が空いているようだった。直径は優に4メートルはある。
大人が縦に並んで寝そべってもまだ余裕がありそうな大きさだ。
渦の中心は微かに上下していて、湖の水面のように揺らいでいる。
(穴なの? 水……沼のようでもあるし、どうなってるの?)
もうずっと、何が起きているのか、分からない。
ヴェーシュに呼び出されてから。
リラの父親がネンゲルだと推測されてから。
いいや、違う。もっと、ずっと前からだ。
それは、ヴァイスによってエルデガリアに召喚されてから。
分かるのは目の前の事象だけだ。
ここに、リラはいない。
平伏したままセシルは、シオンを通り越してマグヌスに訴えた。
「リラ様が連れ去られただと!? いったい誰に?」
声はカルロのものだった。
マグヌスはシオンに潰されかけた損傷でまともに動けない。
カルロの手を借りながら、ようやっと立ち上がる。
リラについての情報はないが、このやりとりでセシルとマグヌスたちとの関係をすぐに理解した。
「貴女たち、まさかグルだったの!!?」
「申し訳ございません! 奥様、どうかお許しを。このような事態に陥ると想像もできず……ですが恐れながら、先ずはリラ様の救出をどうか優先させてください」
信用を置いていた人間が、誘拐犯の仲間だった。
いつからだろう?
セシルは高位貴族の出身で、元から城勤めをしていた。
マグヌスはおろか、カルロとも面識があったかもしれない。
力が抜けて足元が揺らぐような衝撃に、眩暈がした。が、唇を噛んで堪える。
だからって、打ちひしがれていられない。
シオンはセシルを避けて部屋を飛び出した。
「奥様! 危険です!!」
もう、誰も信じまい。
地下にいるかも定かでないが、この目で見るまでは何も判断できない。
「リラ!」
シオンは地下を目指して走った。
「お待ちください! 奥様、どうか」
セシルが追い縋るのを気配で感じながら、階段を駆け下りる。
聖具室を出て、長い回廊を駆け抜けると大きな扉があった。
この先に何があるのか、わからない。だが今は、躊躇していられない。
勢いに任せて押し開くとそこは、真っ白な壁面に囲まれた大きな広間だった。
地下とは思えぬほどの圧倒的空間でーー聖殿の地下部分をそっくりくり抜いたくらいの広さがある。
広間の隅には申し分程度の簡易なベッドと、祭壇が据えられていた。
しかし、人の居住を思わせる温かみはない。
その上に今は、床に敷き詰められた大理石と思しき床石の中央が、黒々とした渦を巻いている。
まるで巨大な円形の穴が空いているようだった。直径は優に4メートルはある。
大人が縦に並んで寝そべってもまだ余裕がありそうな大きさだ。
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(穴なの? 水……沼のようでもあるし、どうなってるの?)
もうずっと、何が起きているのか、分からない。
ヴェーシュに呼び出されてから。
リラの父親がネンゲルだと推測されてから。
いいや、違う。もっと、ずっと前からだ。
それは、ヴァイスによってエルデガリアに召喚されてから。
分かるのは目の前の事象だけだ。
ここに、リラはいない。
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