「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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夫の寝室

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(なにこれ! 反則なんだけど!)

 湯上がりで艶っぽいその姿を目にした途端に、頭の中が真っ白になりそうになるのを必死に堪える。

 クラウディオはレオノールの叫び声が聞こえているはずなのに、躊躇することなく寝室に入って来ると扉を閉めた。

「鍵を……掛けていないのだな」

「え? か、鍵ですか」

 レオノールは手持ち無沙汰に、ベッドの脇で立ち尽くした。

 予告のない小さな声を聞きこぼしたくない。

 しかしこの美しすぎる、寝巻き姿の夫にこれ以上近づいて良いものか悩む。

「だって、必要ないでしょう? 私にはクラウディオ様を拒む理由なんてない……のですから」

 気が動転するあまり、正しい敬語が抜け落ちる。

 その間にも鼓動は耳の奥でうるさく響き、せっかくこの1ヶ月で学んだ知識がどこかへ行ってしまった。

「ここは公の場ではない。言葉遣いは気にしなくても良い」

 クラウディオは押し出すように、声を出した。

 言葉の内容は親切なのに、とても苦しそうだ。

 扉を背にしたまま、ちっとも動く気配がない。

「どうしたんですか? 何かご用があったのでは」

 クラウディオはじっとこちらを見据えているけれど、その距離が縮まる気配はない。

 そろり、と一歩近づいてみる。

「まさか、具合でも悪いのですか?」

 室内はランプが2つ灯っているのみだ。

 暗がりに紛れてしまって、判別がつかない。

 顔色を確かめるべく近づくと、「そうではない」と首を振った。

「では、なぜ?」

 レオノールはさらに詰め寄る。

 寝起きのような無造作な格好をしているが、クラウディオはやはり端正だ。

 近くで見れば見るほど美しい造形にドギマギしてしまう。

「今日の君の働きを労おうと思って来た」

「えっ……?」

 一瞬聞き間違いかと思った。

 だが彼の表情は真剣そのもので、冗談で言っているわけではないらしい。

「こちらへ来い」

 その命令は有無を言わせぬ口調だが、決して威圧的ではなかった。

 促されるままに足を進めて距離を詰めると、クラウディオはおもむろに閉めたはずの扉を開いた。

「俺の部屋に、用意がある」

「はい? 用意って……」

 状況が捉えられず混乱していると、「こっちだ」と彼は短く促し、部屋を出ていこうとする。

 レオノールは慌ててその後を追いかけた。

(え? え? どういうこと? 用意って。私の部屋でなくて?? そっちはクラウディオ様の寝室だけど……ってことは……もしかして)

 そのとき脳裏に浮かんだのはとある可能性だった。

(まさか、これから初夜のやり直しをしよう。なんてこと)

 あったりするんだろうか??

 ワクワクとドギマギが混じり合う複雑な心境でついていくと、扉の先には未知の楽園――もとい、クラウディオの寝室が広がっていた。
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