「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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瞬殺

 口の中に短剣を捩じ込んだ時、きばに引っ掛かり、傷になったようだ。

「蹴り一つで、あの魔獣を退治したのか……。お前にも助けられた」

「確かに加速魔法バフをかけたのは僕ですが、あんなに負荷をかけたら普通の人は潰れますから。間に合ったのは妃殿下のお陰です」

 素っ気なく答えてから、セレスは傷を覆うように掌をかざした。

 何をする気かと身構える前に、ホワンと前腕部が温かくなる。

 セレスが掌を離した時にはもう、傷は跡形もなくなっていた。

「治癒魔法まで使えるのか。完璧だ」

 魔法で治療を受けるのは初めてだ。

 過去には魔法が使える宮医もいたが、治癒魔法の使い手自体が年々減ってきている。

「傷は塞がりましたが、応急処置レベルです。あとでちゃんとした医師に診てもらってください」

 セレスの受け答えは、どこまでも無駄がない。

 その潔さを好ましく思っていたが、今日はどうもそれだけではない何かを感じた。

 褒められたことへの照れ隠しとも、違うような……

 なんにせよ、魔法での治癒は完璧に見えた。

 腕をさすっても、少し前と変わらぬ自分の腕があるだけで、傷がどこにあったかも分からない。

 さて、一息ついたところで事後処理だ。

 会場には避難指示を出しているし、狩猟大会どころではない騒ぎになってしまった。

 呼び寄せたうちの3人に魔獣の処理を任せ、残りを狩場の捜索に充てる。

 気は進まないが、レオノールには王太子妃として賓客を王城へ送り届ける役目を。

 セレスも伴えば、これ以上ない護衛だと安心してもらえるだろう。

 しかし参加者の安否を確認するために、使節団側の人間にも一人は残ってもらわねばならない。

 人選はアルヴァロに聞けば間違いなかろう。

 首を巡らせると、アルヴァロはレオノールと共に輪の中にいた。

 まるでパートナーが自分であるかのようなアルヴァロの立ち位置に、いちいちムッとさせられる。

「アルヴァロ王子、我々の不手際のせいで申し訳ありませんが、催しは中止です。安全確保のため、アルヴァロ王子には」

 王城へお帰り頂きたい。

 そう告げて、当のアルヴァロに言い寄られかけているレオノールから注意を引き離そうとした。

 その場でレオノールを囲んでいた騎士たちはクラウディオの声に弾かれて、一斉に道を開ける。

 しかし、レオノールの目はクラウディオではなく別の方向に向けられていた。

(いったい、誰をーー)

 次の瞬間には頭上に手をかざす。

 まるで、眩しい木漏れ日から顔を庇うように。

 だが、気づけばそのかざした掌に、矢束が握られた。

 ギョッとしたのも束の間だ。

「アルヴァロ王子っ!」

 もう一本、弓矢が襲来する。

 息もつかせぬ間に、流星のごとく三方から弓を射られた。
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