「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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刺客

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「危ない!!」

「レオノールどの……っ!」

 レオノールの手が掴んだものは矢だと、クラウディオたちが気づいた時にはもう遅かった。

 レオノールは襲い来る3本の矢のうち、1本を左手で払う。

 もう1本はアルヴァロの胸元を強引に掴んで引き倒し、避けさせた。

 その弾みで体勢を崩したせいか、避けられぬと悟ったのか。

 3本目の矢は地に伏せたアルヴァロを庇って左肩に受けた。

 全ては騎士たちが剣を抜くための一瞬に起きたことで、誰にも止められなかった。

 突如として、目前に突きつけられた現実が全てだった。

 うずくまるレオノールの肩には鏃が突き刺さり、ブラウスに赤いシミがジワジワと広がっていく。

「レオノールッ! 全員警戒体勢を取れ!!」 

 クラウディオは血相を変えてレオノールに駆け寄った。

 アルヴァロを庇ったのだから標的はアルヴァロの可能性が高い。

 しかし、刺客を探している場合ではなかった。

「レオノール、無事か!?」

 矢は急所を外れているし、矢傷ならセレスがきっと治療してくれる。

 クラウディオは自分に言い聞かせるようにして、レオノールの横に膝を突いた。

 様子が知りたくて、背中に手を置く。

「触らないで!!」

 途端、鋭い叫びを上げて、レオノールはクラウディオの手を振り払うように身体をよじった。

 レオノールから拒絶されるとは、思いもよらない。

 たちまち金縛りにあったように、クラウディオは動けなくなった。

「これは、毒矢です。セレスを、呼んでください」

 クラウディオとアルヴァロ、双方の接近を阻むように片手を上げて動きを制す。

 顔を上げたかと思うと、地に尻をついたまま、はあはあと肩で息をした。

 刺さったままの弓矢が痛々しい。

 毒には耐性があると昨晩話していたが、辛そうだ。

「いるよ、レオ。大丈夫、一人は拘束した」

 いつの間にか、すぐ傍にはセレスが控えていた。

 レオノールの呼びかけに応じて、進み出る。

「流石。……よかった。じゃあ、残りは――」

 言い切る前に、レオノールの喉がひゅっと鳴った。

 肩に刺さった矢の付け根が脈動し、白いブラウスに滲む朱がじわりと広がる。

 セレスは躊躇いなく肩を抱き、ふらつく上体を支えた。

「矢に、放った奴の“残り香”が残ってる。思念を追って」

「分かってる。抜くから、じっとして」

 片膝をつき、グッと八束を握る。

 言葉のやり取りで、レオノールが何をさせようとしているのかは分かる。

 だが、それをどう実行するのか。

 クラウディオには知る術がない。

 アルヴァロでさえ、レオノールとセレスの間に流れる空気に圧倒されて沈黙している。

 アルヴァロはレオノールに庇われた上、痛手を負わせたと分かり、なんとも情けない顔をしていた。

 きっとクラウディオ自身も、似たような状態に違いない。

 アルヴァロの様子を確認し、目を戻したくらいの瞬く間に、事態は進行していた。

「うっ」と短い呻きと同時に、弓矢が空中に浮き上がった。
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