「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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刺客

 淡い青白い光がセレスの指先から矢へ流れ込み、空気がかすかに震える。

「団長、レオノール様を。狙撃手は2人」

「分かった。エルメ、セレスに従って行け」

「はっ!」

「矢は犯人を追跡する、追って生け捕りに。毒の種類を聞き出して」

 セレスはすでに探査魔法を発動させていたのだろう。

 エルメは指示を的確に理解し、セレスに倣って矢の行方を追った。

「フォルオ、アルヴァロ王子に手を貸して、城へ、先導しろ」

 フォルオのキレのよい返事を背に受けて、クラウディオは改めてレオノールの様子を見る。

 息が荒いだけでなく、顔面蒼白になっている。汗もひどい。

 横たえられた背中を丸め、地面に指を立てて身悶えている。

「レオノール、つらいだろうが触れるぞ。城に連れ帰る」

 予想外の事件や事故に、心を乱している場合ではない。

 この場を掌握し、指揮を取るのがクラウディオの仕事だ。

 そう思い直し、クラウディオはレオノールの左手を捕らえた。

 今にも爪が剥がれてしまいそうだ。

 レオノールがセレスを信頼し、セレスがレオノールをクラウディオに託した。

 刺客が3人、1人を拘束済みならば、残りの団員でこの場は充分、処理できる。

 手を取ると、レオノールは何事かを呟くように唇を震わせた。

 しかしそれは声にならず、途切れ途切れに息を溢すだけだ。

「うぅ……ふぅっ」

 クラウディオの手の中にある手首が熱い。

 昨晩は”毒の類は身体が勝手に分解してくれる”と話していた。

(これでも、解毒できるというのか? 今にも死にそうにさえ見える)

 衣類の裂け目から傷口を覗けば、表面は綺麗に塞がっていて、もう出血もない。

 目に見えない毒の奔流と、レオノールの抵抗力とが、体内で激しく拮抗している最中なのだろう。

「団長! 拘束された刺客を発見しました!」

 クラウディオにはどうにもしてやれないが、一刻も早く医師に診せてやりたい。

 何もしないよりは、苦痛を和らげてやれるかもしれない。

 抱き上げようと膝の裏に腕を差し入れたところで、不穏な報せが舞い込んだ。

 セレスが拘束した刺客を発見し、団員の一人が引致してきた。

 本来ならば、解毒の手掛かりとなる貴重な報せのはずなのに、刺客の姿を認識して沈黙が垂れ込める。

 刺客は身動きの取れぬよう、荒縄で拘束されていた。

 口には猿轡をかませ、自死を防ぐように対策が取られていた。

 だが、刺客の命は既になかった。

 顔は土気色で、口の周りには泡のようなものが滲んでいる。

 その刺客には、見覚えがある。

「マルゴ……?」

 アルヴァロの呟きに、疑惑が確信に変わる。

 刺客の正体は、ノーキエ側の侍従官であった。
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