72 / 150
クラウディオの提案
1
しおりを挟む
狩猟会が昼に差し掛かる頃、レオノールはセレスと合流して魔獣退治に向かった。
間一髪でクラウディオを救い、魔を退けたところで刺客の襲撃に見舞われた。
アルヴァロを庇いきれなくて、うっかり毒矢に当たってしまい……
次に目を覚ました時には、ベッドに横たわっていた。
丸一昼夜眠り続けていたらしい。
ダメージを受けてから回復するまでの経過は、今までと概ね一緒だ。
(うーん、私もヤキが回ったかなぁ。一般人を庇いながら戦うのって、案外難しいものね。それにしても今回のはかなりの猛毒だった。アルヴァロ王子が食らったらひとたまりもなかったわね……)
幸い、体内を巡っていた毒の気配は、綺麗さっぱり消え去った。
今や体調は万全、で完璧な回復状態にある。
「もうっ……! レオノール様、何をなさってるんですかぁ!」
「ああ、メリッサ。見ての通り、トレーニングよ。色々と鈍ってるからさ」
アルヴァロ暗殺未遂が起きてから、今日で5日が経過していた。
なんでも、驚異的な回復力が周知されてはならないとのことで、レオノールは自室への引きこもりを余儀なくされている。
退屈と体力不足を懸念して、レオノールは絶賛筋トレに励んでいる最中だった。
ただし両足はベッドの枠に引っ掛けて、上半身を持ち上げる運動で筋肉を鍛えている。
ベッドの枠はメリッサの身長ほどはあるから、上半身を持ち上げていない時は枠に足でぶら下がっているように見える。
無作法さに驚いたのだろう。
「なるほど、トレーニング。まるで鯉の滝上りのようで……じゃなくって、お召し物が! 丸見えですよ」
病人を装って引きこもっているので、身につけているのは寝巻きだ。
ぶら下がって頭が下になっているから袷が全面的に開いて、腰紐から下の下半身が露出している。
「あらあら。これは失敬、目の毒だったわね?」
「いいえ、スラリと伸びた長いおみ足に、ぎゅっと引き締まったウエスト……。惚れ惚れしますが、そう言うことではありません。誰かに見られたらどうなさるんです」
メリッサは毒矢事件の後、より一層責任感が増したように見えた。
終始態度は控えめだったのに、はっきりと主張をするようになった。
レオノールが毒を盛られて錯乱した姿を目の当たりにして、何かしら心境の変化があったのだろう。
「誰も見ないよ。そのための自室療養でしょ。メリッサさえ目を瞑ってくれれば大丈夫」
言いながらもレオノールは続きを諦める。
誰にも見られる予定はないが、リュシエンナが目撃したら卒倒ものだろう。
足で枠にぶら下がったまま腕を頭上ーー床の上へと伸ばし、後転の要領で身体を反転させて着地した。
見事なフォームで立ち上がるや否や、ふう、と息を吐く。
「……まあ、お見事な」
「やっぱり身体を動かすとスッキリするわね」
ぽつり、とメリッサがこぼした本音が嬉しくて笑いかける。
メリッサはしまったというように口元を手で押さえた。
困りつつもメリッサが微笑み返してくれる。
と、その背後で護衛として控えていた騎士が控え目にドアを叩いた。
「お見舞いのお客様がお見えです」
間一髪でクラウディオを救い、魔を退けたところで刺客の襲撃に見舞われた。
アルヴァロを庇いきれなくて、うっかり毒矢に当たってしまい……
次に目を覚ました時には、ベッドに横たわっていた。
丸一昼夜眠り続けていたらしい。
ダメージを受けてから回復するまでの経過は、今までと概ね一緒だ。
(うーん、私もヤキが回ったかなぁ。一般人を庇いながら戦うのって、案外難しいものね。それにしても今回のはかなりの猛毒だった。アルヴァロ王子が食らったらひとたまりもなかったわね……)
幸い、体内を巡っていた毒の気配は、綺麗さっぱり消え去った。
今や体調は万全、で完璧な回復状態にある。
「もうっ……! レオノール様、何をなさってるんですかぁ!」
「ああ、メリッサ。見ての通り、トレーニングよ。色々と鈍ってるからさ」
アルヴァロ暗殺未遂が起きてから、今日で5日が経過していた。
なんでも、驚異的な回復力が周知されてはならないとのことで、レオノールは自室への引きこもりを余儀なくされている。
退屈と体力不足を懸念して、レオノールは絶賛筋トレに励んでいる最中だった。
ただし両足はベッドの枠に引っ掛けて、上半身を持ち上げる運動で筋肉を鍛えている。
ベッドの枠はメリッサの身長ほどはあるから、上半身を持ち上げていない時は枠に足でぶら下がっているように見える。
無作法さに驚いたのだろう。
「なるほど、トレーニング。まるで鯉の滝上りのようで……じゃなくって、お召し物が! 丸見えですよ」
病人を装って引きこもっているので、身につけているのは寝巻きだ。
ぶら下がって頭が下になっているから袷が全面的に開いて、腰紐から下の下半身が露出している。
「あらあら。これは失敬、目の毒だったわね?」
「いいえ、スラリと伸びた長いおみ足に、ぎゅっと引き締まったウエスト……。惚れ惚れしますが、そう言うことではありません。誰かに見られたらどうなさるんです」
メリッサは毒矢事件の後、より一層責任感が増したように見えた。
終始態度は控えめだったのに、はっきりと主張をするようになった。
レオノールが毒を盛られて錯乱した姿を目の当たりにして、何かしら心境の変化があったのだろう。
「誰も見ないよ。そのための自室療養でしょ。メリッサさえ目を瞑ってくれれば大丈夫」
言いながらもレオノールは続きを諦める。
誰にも見られる予定はないが、リュシエンナが目撃したら卒倒ものだろう。
足で枠にぶら下がったまま腕を頭上ーー床の上へと伸ばし、後転の要領で身体を反転させて着地した。
見事なフォームで立ち上がるや否や、ふう、と息を吐く。
「……まあ、お見事な」
「やっぱり身体を動かすとスッキリするわね」
ぽつり、とメリッサがこぼした本音が嬉しくて笑いかける。
メリッサはしまったというように口元を手で押さえた。
困りつつもメリッサが微笑み返してくれる。
と、その背後で護衛として控えていた騎士が控え目にドアを叩いた。
「お見舞いのお客様がお見えです」
156
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
乙女ゲームは始まらない
みかん桜
恋愛
異世界転生した公爵令嬢のオリヴィア。
婚約者である王太子殿下の周囲に、乙女ゲームのヒロインを自称する女が現れた。
だが現実的なオリヴィアは慌てない。
現実の貴族社会は、物語のように優しくはないのだから。
これは、乙女ゲームが始まらなかった世界の話。
※恋愛要素は背景程度です。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。
朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」
煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。
普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。
何故なら———、
(罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)
黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。
そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。
3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。
もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。
目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!
甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。
「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」
(疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる