「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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恋に落ちた勇者様

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「顔が熱くなって心臓もバクバクして上手く喋れなくなるし、触られるとビリッとして汗が吹き出すし……だから距離を置きたくて、逃げちゃいました。でも、急にそんなことされたら傷つきますよね。ごめんなさい。私、風邪とか引いたことないんですけど、こんなのおかしいですよね……。病気でしょうか」

 レオノールは早口でまくし立てたあと、両手で頬を覆った。

 レオノールの告白は意外だった。

 予想外すぎて、咄嗟に返事が浮かばない。

 レオノールがこんなにしおらしくなることがあるとは思わなかった。

「そうなのか……」

 気の利いたことなど思いつかず、感嘆の吐息が漏れる。

 その顔を見ていたら、クラウディオの体温が上がりそうだ。

 何故ならそれは、クラウディオ自身も知っている感覚だったからだ。

 そこにあると、とうに気づいていながら、知らぬふりを続けようとした感情。

 しかし今になって、その正体から目を逸らすのは不可能になってしまった。

 目の前の彼女が証明している。

 クラウディオはごくり、と喉を鳴らした。

 いつか観念しなければならないのなら、……今がその時なのかもしれない。

「レオノール、それは病ではない、多分」

「なら良いけど、なんでわかるんです? クラウディオ様のことを考えてドキドキした事もあったけど、こんなふうな異常は初めてです。どんなにグロい怪物でもへっちゃらだったのに、よりによって、震えるなんて」

 異形の怪物と並列に語られて、ク、と口の端が浮き上がった。

 それに、レオノールはクラウディオ本人を前にしてドキドキしていたなどと告白している。

 一つの仮説に行き当たり、クラウディオは少しだけ背中を押された気がした。

 右手で左手を押さえる仕草は、震えを誤魔化したい気持ちの表れか。

「俺も、同じだからだ。だから君の戸惑いが分かるーーと言ったら信じてくれるか」

 怯みそうになる自分を叱咤して、クラウディオはゆっくりとレオノールに近づいた。

 一歩進むと、一歩下がられたけれど、ここは譲れない。

「信じてくれるか?」

「じゃあクラウディオ様も私を見て何かおかしな具合に……て、だめ。やっぱり見ないでください! なんですか、その顔面凶器」

 手を突き出して、接近を制される。変わらず顔は逸らしたままだ。

 悪口とも取れる過剰な拒絶はしたたかクラウディオの胸を抉った。

 グロい怪物に顔面凶器。

 例えだと分かっていても、印象が悪すぎる。

 が、それも今までレオノールを遠ざけてきたツケだ。黙って受け入れるしかない。

 そもそもここで普通の反応を示すような女性だったら、クラウディオが拒絶し続けた時点でとっくに心が折れていただろう。

「程度や表現に差があっても、根本は同じだと思う。俺は君に惹かれているからだと解釈した」

 クラウディオは、噛んで含めるように、ゆっくりと語りかけた。

「惹かれてる……」

 レオノールはポカンと口を開いて、呆けたようにクラウディオを見つめ返した。

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